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何でサキュバスなの! ~VRMMO 8時間で別の人生を全うした件について~  作者: じゅんき
第四章

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舌打ち

純白の見事な羽根を広げ城を飛び出したミカエルは、その優雅な羽ばたきとは裏腹に心の内側では怒りが静かに煮立っていた。

苛立ちを押さえられず何度も舌打ちをする。


「ホント人族はバカばっかりだな。よくあれで国政を司る立場にあるものだ。だいたいまだ召喚術を使っていること自体がナンセンスなんだよ。」


眉間に皺を寄せ、ぶつぶつと毒を吐き続けている。

既に王都上空は抜けており、遥か地上にはなだらかな草原や穀倉地帯が広がっていた。左手の岩山の中から多くの馬車や人々が出て来ていて蟻のように連なっているのが見える。ミカエルにはこの土地周辺が赤く靄がかかったように映っていた。


「この辺りが炎の聖霊の土地だな。ということはこの次の街か。さすがにこのまま降り立つ訳にはいかないから適当な人族にでも化けるか。」


人目が無いのを確認し、エルダーの手前の街道でミカエルは冒険者に姿を変えた。

昔、人族領に逃亡した同胞を粛清する際にこの姿には何度かなったことがある。冒険者がある程度自由に動ける職種ということはその時に学んだことだった。


朝のこの時間はエルダーに入る商人や馬車は少ない。

商人ならばもっと早い時間に入るだろうし、この街が目的で来るものは夕方から夜にかけて訪れるからだ。

当然のことながらエルダーの東門は閑散としていた。


「オッと待った!身分証と通行料を出すんだ。」


そのまま通過しようとした時に門番に槍で遮られる。

ミカエルは舌打ちをすると門番らに向かってそっと手を翳した。すると門番たちは何事もなかったかのように前を向きなおしたのだった。


(下賤の者が僕に話しかけるなんて百年早いんだよ。)


口には出さずに心の中で毒を吐く。

しかしながら前から歩いて来ていた人足が避けて通ったほどに、ものの見事に表情には現れていた。周りの空気を凍り付かせるには十分な迫力である。

少し歩いてギルドの前まで辿り着いた。

モンテカルロ侯爵にエルダーの街の地図を見せてもらい、冒険者ギルドの位置は頭に入っていたので迷うことはなかった。

中に入ると冒険者以外にも普通の町民などの姿も見える。ミカエルは何故冒険者以外がいるのか腑に落ちない顔をしながら掲示板へと向かった。掲示板前にはちょうど掲示物を張り替えている女性職員がいる。


「おい、そこの君。話すことを許可しよう。ここに第三王子の召喚者がいると聞いたんだが。」


ミカエルは城で召喚者は冒険者ギルドとコトネン伯爵邸を行き来していると聞いたのだ。

伯爵邸に直接降り立ってもよかったのだがまどろっこしい接待を受けるより冒険者ギルドで見付ける方が早いと思ったのだろう。あながち間違いではなかったのだがありす以外はもうこの街を発っている。

声を掛けられた女性職員は首を傾げながらミカエルの方を振り返った。


「あら、面白い話し方のお兄さんね。殿下ご一行なら十日ほど前に次の街に行かれたわよ。一人だけ従者の方が残ってるけどね。あ、もしかして彼女がお目当てなのかしら?」


女性職員はどこからそんな噂が流れるのかしらだとか、美人は得よねだとか一人で盛り上がっている。


「何だと?ここにはもういないのか?まったく人族の諜報員は何をしているんだ。」


ミカエルはここでも盛大に舌打ちをした。

諜報員といっても各王子に交代で付いているので情報は少し前のものになる。温室でミカエルに話をした影は自分が見た時の情報を言ったのだろう。記録の間に行かせなかったミカエルの落ち度とも言える。

仕方なく次の街へ行こうかとその場を離れようとした時、異常なまでの不快感がミカエルを襲った。まるでぞわぞわと背中を虫が這いずり回っているような感覚だ。


(何だ!)


慌てて振り返り、辺りを見回す。

先程とさして様子は変わっていない。ただ黒いフードを被った人物が入ってきたところだった。しかしミカエルは目が離せないでいた。何故なら明らかな違和感がその人物から溢れ出ているからである。


(なんだ、この感じ。魔族の独特な気配の中に人族のような、何か、何かが埋もれているような、、、異種交配ではあり得ない混じり方だ。)


得体の知れない存在に対してミカエルはこめかみに薄っすらと汗をにじませた。

そんな微動だにしないミカエルを見た女性職員は思い切り肩を叩いてベラベラと話し始めた。


「噂をすればですね!彼女ですよ、王子殿下の召喚された方は。あーん、やっぱりあなたもアリスさん目当てなんですね。そりゃ女性から見ても綺麗だなって思いますもん。憧れちゃいますよね~。」


やたらと大きな声に反応したのか、アリスと言われた黒いフードの人物がキョロキョロと辺りを見回している。

ミカエルは一瞬目が合ったように感じたが向こうは直ぐに他の方に目をやっていた。


(あれは魔族か?神族以上に美しいではないか。これはもう神徒番号43T4585176はヤッてるだろ。彼女に神族痕があるかどうかを確認しないとな。)


色々と考え込んでいる間に受付の方で問題が起こったらしい。

ギルドマスターと思われる女性が冒険者に対して呆れた声を上げている。どうやら黒いフードの人物も渦中にあるようで何やら揉めているようだ。

ミカエルは唾を飲み込むと息を吐きながらそちらに向かって歩き出した。



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