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何でサキュバスなの! ~VRMMO 8時間で別の人生を全うした件について~  作者: じゅんき
第四章

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大神官ミカエル

王城の敷地内の北に位置する場所に小さいが頑丈に作られた離れのような建物が立っている。

これは神族の国と繋がっている転移装置のある建物だ。扉は外からは絶対に開けられない。神族独自の魔術処理が施されており、神族の中でも限られた者以外は開くことが出来ないようになっている。その扉の前には必ず兵士が二名配置されていた。建物内に侵入しようとする者を排除するためではなく、中から出てきた神族のことをいち早く国王に伝えるためだ。ただこの扉は数十年開いたことが無い。いつしかここに立たされる兵士は閑職扱いされるようになった。


「今日も暇なんだろうな~。国境付近の警備の方がまだマシだよ。身体がなまるわ。」


腰をトントンと叩いて大欠伸する痩せた兵士。

その隣には兵士とは思えないくらい太った男が背伸びをしていた。


「いいじゃないか、気が楽で。王城勤めって言うだけで周りからの評価は爆上がりだし。それにどうせ今日も何事もなく終わるんだから。屋根があるから雨にも当たらないし、目の前には見事な温室もあるんだぜ。」

「温室なんて興味ねぇよ。入れるわけじゃなし。神族が来た時に開放するんだろ?もう何十年も使ってないみたいじゃないか。なのに掃除じゃ何じゃで金掛けてるんだろ?すぐそこにはお茶が出せるように簡易厨房もあるし。勿体無いと思わないのかね?」


痩せた兵士は肩をすくめ、口をへの字に曲げて温室を睨んでいる。


「その辺はお偉い方々が考えて捻出してるんじゃないの?神族は怒らせたら怖いって言うし。それよりも温室掃除に来るメイドでかわいい子がいるんだよ~。」

「何だよそれ、初耳だぞ!今日は来るのか?見てみたい!話しかけたりできないのか?」

「そんなことしたらあそこの監視台の奴らにチクられるからな。」


そう言って太った兵士は恨めしそうに監視台を仰ぎ見た。


「今日はハリスが監視やってるみたいだぜ。あいつには一件貸しがあるからちょっとくらいいいだろ。」


そう言って痩せた兵士が監視台に向かって両手を上げた時、大きな音を立てていきなり後ろの扉が開いた。


「うるさいぞ、人族ども。無駄口きかないで王を呼んで来い!」


そこには白を基調とした法衣を身につけた美しい顔立ちの男が立っていた。

同じ生地の縦長帽子からはくすんだ金髪がこぼれている。金の刺繍と何連にもなる大小の宝石のような球を連ねた長い首飾りが朝の日の光を受けてキラキラと輝いている。それとは対照的に水底のような深いブルーの瞳の彼の視線は色と同じく冷え切っていた。

二人とも反射的に背筋を伸ばす。嫌な汗が額に浮かび顔は青ざめ、小刻みに震えている。生きた心地がしていないようだった。一人は緊急時に使用する赤い旗を監視塔に向かって腕が千切れるくらい振り続け、もう一人は慌てて宰相のいる部屋へと駆けて行った。





「それで?どうして我が国セルクエシオスに報告が無いのだ。それよりも王はどうした?何故お前のような小物が僕と対等に話しているんだ?」


ここはあの温室の中にあるガゼボだ。

ガゼボと言ってもそこに置かれてある椅子やテーブルはこの国でも最高級品の部類に入るものばかりだ。それに深く腰掛け身体を預けている神族の男は目の前に座るこの国の宰相モンテカルロ侯爵を射抜くように見つめている。


「申し訳ございません、大神官ミカエル様。国王はただいま体調がすぐれませんで、、。」

「ああ、そうだったな。バカみたいに召喚したツケが来てるんだったか?」

「あ、いや、それは、、。」


モンテカルロ侯爵は汗を拭きながら言葉を濁した。


「わ、私は宰相を務めますトビス=モンテカルロと申します。大神官ミカエル様、本日はどのようなご用件でお越しくださいましたか?貴国にご報告というのは?」

「知らないとは言わせないぞ、タヌキ。神徒番号43T4585176 セレマ・アルバートを召喚しただろ。」


それを聞いた人族側は水を打ったように静かになった。

宰相についてきていた他の大臣たちが恐ろしげに顔を見合わせている。王位継承の儀で神族を召喚した場合、国への報告義務がある。そして報告を受け次第、神族唯一の国家であるセルクエシオス帝国に国王が連絡をしなければならなかった。これは国家化間で取り決められた条約である。もし破れば神族は全力を持って相手国を滅亡に追いやるのだ。

そんな取り決めがなかった遥か昔、召喚した神族と無理矢理婚姻関係を結び、神族の血を引く子供を作ろうと画策した国があった。他種族への能力流出をひどく嫌った神族は報復としてその国を滅ぼした。しかし完全に芽を摘むことは出来なかったのだろう。今でも人族に癒しの使い手が現れるのはそのせいだとも言われている。

モンテカルロ侯爵は継承の儀が始まってから今までの出来事を必死になって思い出していた。しかしそんな報告は一切王子たちから上がってきていない。もちろん王子の補佐役からもだ。乾いた唇を舐め、唾を飲み込んでから口を開いた。


「お言葉ですが、継承の儀が開催されたのは一月以上前の話です。それまでわからなかったというのも、、、、何かそちらで事故に巻き込まれた可能性は、、、。」

「我々が一か月以上も放置していたとでも言いたいのか?」


ミカエルの端正な眉がピクリと動いた。


「めめめ、滅相もございません!記録の間にある記録から三人の王子が召喚した者のリストを持って来させますのでしばしお待ちを!」


モンテカルロ侯爵は後ろに立っている文官に大至急記録の間に向かわせた。



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