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王女と思い出のフルーツゼリー(実食編)

やっとフルーツゼリーが完成した…。

後はこのゼリーをパンドラの箱に仕舞って…ヴェネタリア城へと持っていくんだけど…遠い所へ行く為に使う足となる乗り物が欲しいな。

バイクはあるにはあるんだけど…飛ばされた時にはガソリンが無かったからなぁ…。

「…長らくお待たせ致しました。此方がアイリスほさ王女様が所望されていた…フルーツゼリーです」


試行錯誤の末、9時間が経過し…現在の時刻は夜の9時。

輝の居る場所はヴェネタリア城の王族専用の食堂で…中にはゼリーを作った輝は勿論、ゼリーを注文したアイリスとアイリスの兄であるアレクサンドラ・フトゥロ・ヴェネタリアにアイリスとアレクサンドラの両親であるエドアー・ディオ・ヴェネタリアとソフィア・ロピエ・ヴェネタリア。

な

そして…ヴェネタリア一族を護衛する為に呼ばれた第1騎士団長のダヴィド・スクルトーラと第2騎士団長のラヴァンダの計7名だけであった。


「………っ!」


輝がアイリスの目の前に置かれたゼリーを覆っていたクロッシュを開けると…ホールケーキサイズのフルーツゼリーが顔を出す。


「「「コ、コレが…アイリスの言っていたゼリー…」」」


アイリスの目の前にあるフルーツゼリーを見てアレクサンドラ達は揃って同じ事を言う。


「「宝石のように透き通っていて、中には私達が採ってきた希少な果物が詰まっている…!」」


護衛として呼ばれたラヴァンダとダヴィドはゼリーの中に入っていた果物に見覚えがあるのか、ゼリーの感想を述べていく。


(このメテオフルーツやドラゴスケイルってラヴァンダさん達が採ってきたの!?王族は騎士団長2人に何をさせてるんだ…)


ゼリーを作った張本人である輝だけはラヴァンダとダヴィドの発言を聞いて、真顔のまま此処にいる王族一同に心の中でツッコミを入れていたのだった。


「さて、この大きさではアイリス様1人では完食出来ないので…人数分に切り分けます」


「は、はい!(本当はこのサイズを食べたかったです…)」


ゼリーに目を輝かせるアイリス達を余所に輝はゼリーを人数分に切り、分ける事をアイリスに言った。

アイリスも輝の言葉に若干戸惑いながらも了承する。

尚、アイリスは目の前にあるホールケーキサイズのままを1人で食べたかったようだが。


(物は試しと思って鑑定でカロリーを調べたら切り分けて食べさせるのは当然なんだよね…。だってこのゼリーのカロリーは10000キロカロリーなんだよ!?1人で食べたら絶対に太るよ…)


このゼリーのカロリーをこの中で唯一知っている輝だけは内心気が気で無かった。

もしもアイリスがこのゼリーを全部食べて太ってしまったら…父親であるエドアーと兄であるアレクサンドラに死刑宣告をされてしまうと考えたからだ。


「さて、全員分切り分けましたし…頂きましょう。冷たい内に食べるのが美味しいですから」


5分かけてゼリーを7等分にし全員の皿に盛り付けてから、全員が卓に座る。

そして輝が実食しようと宣言した。


「はい!」


「あぁ!」


「うむ」


「えぇ♪」


「「はい!!」」


全員の返事を聞いて、輝はゼリーを食べる前に両手を合わせた。

理由は勿論、食前の祈り(いただきます)をする為だが…


「「「「「「「いただきます」」」」」」」


レストラン月光の常連であるラヴァンダとダヴィドは兎も角、まだレストラン月光に来た事も無いはずのアイリスやアレクサンドラ、その両親であるエドアーとソフィアも輝と同じように食前の祈りをしたのである。


(………えっ!?)


まさかの事態に輝は心の中で驚愕する中、アイリス達はスプーンでゼリーを1口分救い…口に運んでいく。


「っ!」


アイリスはゼリーを口の中に入れた瞬間、頭の中にとある記憶が過ぎるのだった…。






「………此処は…いったい…?」


その記憶とは…凡そ15年も前に遡る。

当時5歳であったアイリスは目が覚めると、メテオフルーツやドラゴスケイル等の果物が入った籠を抱えた状態で見知らぬ場所のベンチに座っていた。

その土地というのは…アイリスの父親であるエドアーが治めるヴェネタリアは勿論、同盟国であるドルリンやランパリスでもない場所だった。

ではいったい何処なのかというと…輝が住んでいた世界の日本である。


「…一旦落ち着きましょう。動揺する等、王女である私にはあってはなりません…」


アイリスは深呼吸した後に周りを見渡したが…周りには人の気配は何処にも無い。

人以外にある物といったら象の形をした奇妙なオブジェ(滑り台)や人が簡単に出入り出来るような大きな檻(ジャングルジム)に片方が空中に、片方が地面に着いた橋のようなオブジェ(シーソー)ばかりだった。


「いったい何なのでしょうか?あの不思議なオブジェは…」


そう、アイリスは日本の公園の中にいたのだ。

異世界にはこのような遊具はまだ無い為にアイリスにはこの遊具はただのオブジェとしか見えていないのは滑稽な話だろう。


「オブジェじゃないよ。あれは公園の遊具だよ!」


「へ?…あ、貴方達は…?」


そんなアイリスに…話し掛ける者達がいた。

その者達というのは…


「僕?僕の名前は神月 輝!」


「俺は…黒羽(くろば) 翔(かける)」


「私は神月 煌太郎…。此処にいる輝の父親だよ」


そう、今のレストラン月光の店主である…神月 輝その人だった。

この時は10歳の子供なので簡単な接客や経営中に不足した材料の購入といった手伝い程度の事しかしていないが、皿洗い等の作業をする傍らで煌太郎の料理の腕を盗んでいたりと侮れない一面がある。

因みに輝の後ろで隠れつつも自己紹介をした黒羽 翔は…輝や煌太郎と似て異なるが後に実家である和食処てんぐの板前となる男で、ドワーフ達が常連としているおでんの屋台で輝が出していた日本酒を送った男もこの翔だったりする。

そして2人の後ろにいた男性は…今は亡き2代目レストラン月光の店主である神月 煌太郎である。


「コウヅキ・ヒカル様に…クロバ・カケル様…そしてコウタロウ様…ですか。皆さん共に不思議なお名前ですね…」


アイリスは輝達の名前を反芻するように呟いた後に変わった名前だと返事をした。


「「そりゃ外国人から聞いたら変わった名前だよね…」」


「こらこら2人とも。名付け親の前で言う事かい?」


それを聞いた輝と翔はジト目でアイリスに言い返す。

そんな2人を煌太郎は優しく諌めるのだった。


「アンタは俺の親じゃねぇだろ…」


「そうだね。でも外にいる今は君の保護者なのは間違いじゃないだろう?」


「…そりゃそうですけど…」


翔は煌太郎の発言にツッコミを入れたが、煌太郎は顔色1つ変えずに正論で返す。

優しげな顔に反して意外と口撃力が高い人なのだ。


「そういえば君はいったい?」


煌太郎はアイリスの名前を尋ねた。

名前を尋ねられたアイリスはコホンと咳払いをした後に立ち上がって身分を語った。


「わ、私はアイリス・スピラ・ヴェネタリアです…」


ヴェネタリアの王女という事を伏せたものの、今身につけているドレスの裾を軽く摘んで挨拶する。

その気品溢れる様はまさに王女であると言っているような物だったが。


「アイリス…か。良い名前だね」


「あ、ありがとうございます…」


煌太郎はアイリスの名を聞いて思った事を包み隠さずに語る。

アイリスはそんな煌太郎の言葉を聞いて、顔を赤らめながら返事をする。


「父さん。この子を口説いてる訳じゃないのは分かってるけど…あまりそういう顔で褒めちゃ駄目だよ?」


「?(そういう顔って…どんな顔だろう?)」


「お前が言うか…?」


「?(え?僕も含まれてるの!?)」


原因は不明だが、アイリスが最初に出会った異世界人は個性豊かな人々だったのだ。

アイリスは護衛の者達とも違う反応をする輝達を見てニコリと微笑んでいたが…


「っ!」


「「………」」


突如として聞こえた腹の虫が鳴く音で輝と翔はアイリスの方へと視線を向け、音の発生源となっていたアイリスは先程よりも顔を真っ赤にして俯いていた。


「…お腹が空いたのかい?アイリスちゃん」


「は、はい…」


「良ければだけど…私の店でご飯食べていくかい?勿論お金は頂かないよ」


「え?」


「大丈夫さ。君のご両親が来てもお代は頂かないし…それに此処に留まる方が危ない気もするからね…」


「で、ですが…。っ!」


空腹になったアイリスを煌太郎は見かねたのか、金を取らないのを承知で自分の店で食事をしないかと尋ねたのだ。

突然の事にアイリスは断ろうとしたのだが、腹の虫はそれを拒否するかのようにまた鳴り始めた。


「ふふ。口では否定してるけどお腹の虫は食べたいって言ってるよ?」


「………お願い…します…」


「かしこまりました。では、私の店まで案内しましょう」


煌太郎はアイリスに微笑みながらそう言うと、アイリスは観念したのか更に顔を俯かせたまま食事を頂くと了承したのだ。






「「「ご馳走様でした」」」


「お粗末様。あんなに美味しそうに食べて貰えると料理人冥利に尽きるね」


アイリスをレストラン月光に連れてきて1時間が経った頃。

輝と翔は煌太郎の作った唐揚げランチや天麩羅御膳を、アイリスはトマトを使ったペスカトーレを綺麗に平らげた。


「いつもは護衛の者達が何度も毒味をするのでシチューなども冷めてしまっていたので…こんなに温かくて美味しいお料理は…初めてです…!」


「アイリスお前…いったい何時代の人間だよ…?」


「毒味って…昔のお殿様とかが食事の際にやってた事だっけ?って事はアイリスって結構偉い立場のお嬢様って事なのかな?」


王族ならばもっと美味しい物を食べているのでは思われているが、実はそんな事は無い。

アイリスの居た世界では料理の技術はまだ発展していない上に、王族という身分故に毒を盛られている可能性もある為に毒味の作業が何度も行われる。

それ故に料理も王女達が食べる前には既に冷めてしまい、仮に美味しい物であっても味は大きく損なわれてしまうからだ。

だから王女であるアイリスにとって出来たてで温かく更に美味しい物は初めてである為に、普段はあまり進まない箸…否、この場合はフォークがかなり進んだのだ。

その証拠にペスカトーレを食べたアイリスの目からは相当な量の涙が流れていた。


「それじゃあ最後はコレだ。アイリスちゃんが持っていたフルーツをトッピングに使った…特製フルーツゼリーだよ」


「「「ッ!」」」


副店主であり輝の母でもある女性 神月 灯(あかり)が空になった食器を下げるとと共に煌太郎がクロッシュを被せた皿を持ってやって来た。

理由は勿論、食後のデザートを輝達に出す為だ。


「生のフルーツにはゼラチンの固まりを阻害する酵素があるから果物は切ってゼリーの傍に添えたりした程度だけど…それでも綺麗な見た目になるし、味も変わると思うからね」


煌太郎がそう言いながらクロッシュを開けると…輝達の目の前には桃や蜜柑、林檎等のフルーツが閉じ込められた透明なゼリーにメテオフルーツの輪切りやドラゴスケイルを賽の目切りに切った物が添えられていた。


「「おぉ…!」」


「綺麗…。まるで宝石のようです…!」


この店のゼリーは基本的に四角い形で提供される。

カップにすると入れられるフルーツの数が一定になり、他の店と変わらないと考えたからだ。

大きなバットにゼリーとフルーツを流し入れて固めた後に一定のサイズに四角く切る事でそれぞれ違う中身の綺麗なゼリーが出来上がるのである。


「中に入っているフルーツがゼリーの見た目を引き立てる事もあって、果物の宝石箱って言われる事もあるんだ」


「まぁ、この案の元ネタになったのは俺の店で使ってる煮凝りで…此処にいる輝にネタをパクられたみたいな物だ。…尤も煮凝りはデザートじゃなくて前菜(オードブル)に近いけどな」


(ニコゴリ…?パクル…?)


アイリスの呟いた言葉に輝、翔の順で返事がくる。

どうやら…輝の料理を更に美味しく見せる技術の片鱗はこの歳で顕現していたらしい。

尤も料理とは縁の無いアイリスには翔の煮凝りやパクるという単語に疑問符を浮かべていたが。


「取り敢えず食べようよ!ゼリーは冷たい内が美味しいからね!」


「そうだな」


「はい!では、いただきます!」


「「いただきます」」


輝達は目の前にあるゼリーを食べる事にした。

全員揃ってスプーンでゼリーを1掬いし、口に運んでいく。


「やっぱり母さんの作るゼリーは美味しい!」


「あぁ。俺の店で〆の菓子として出してる果実寒でもここまでの柔らかさは出せねぇぜ…。凝固剤がゼラチンと寒天だから違うってのもそうだが…」


「これが…!フルーツゼリー…(この柔らかいゼリーもそうですが…中に入っている果物にも甘みがあって美味しいです…!)」


食べ慣れている輝と翔は美味しいと笑顔で言うが…生まれて初めてゼリーを食べたアイリスは両目を開いて言葉を失った。

生のフルーツでは味わう事の出来ない別次元の甘さによって。

一応、アイリスのいた世界にも砂糖は勿論だが蜂蜜やフルーツ以外の甘い物は存在するのだが…その中でもアイリスが特に気に入っている国宝級の甘味に勝るとも劣らない甘さなのだろう。


「中に入っているのはピチーにオランジ、それにアープル…そしてクレーブ…ですが皮が黄緑色…?それにこの緑色の果物は見た事がありません…」


アイリスは自分が食べているゼリーの中に入っている果物を見つめながら輝に質問する。


「アイリスちゃんの所ではこれらの果物を随分と変わった言い方するんだね。僕の店のゼリーには桃、蜜柑、林檎、マスカットにキウイが入ってるんだ」


輝は不思議そうな顔をしながら、ゼリーに使われている果物の名前を述べていく。

それを聞いたアイリスは目を丸くした。

何故なら…


「そんなに沢山の果物が…!ですが果物は高級品の筈…。逆に損になってしまうのでは?」


アイリスのいた世界では果物は安いものでも2ゴルド、高い物で5ゴルド近くする代物。

それが5種類も入っているとなれば驚くのも無理はない。


「そうか?今の果物は300円位あれば結構美味い物が買えると思うけど…。そうでしょ?煌太郎さん」


翔はアイリスの質問は妙だと思いつつも、確認の為に煌太郎に話しかけた。


「そうだね。馴染みの青果店で卸してるから安く買えてはいるけど…この中で唯一高かったのはシャインマスカット位だからね」


「「シャ、シャインマスカットって…高い物で3000円近いアレ!?」」


煌太郎は翔の質問に即答する。

尚、最後の話をする際は苦笑いを…煌太郎の最後の話を聞いた輝と翔は驚いていたが。


「………面白い人達ですね♪」






「美味しかった♪」


「あぁ。美味いな」


「………はい」


数分後、皆揃ってゼリーを平らげた。

輝はゼリーが美味しかったと感想を呟き、翔とアイリスも同意するように頷く。

例え世界は違っても美味しい物を食べた時に良い気分になるのは共通しているようだ。


「それに…今日はゼリーもそうだけど、アイリスちゃんが持っていたフルーツも良かったよね♪」


「あぁ。あの星型の果物はスターフルーツだし赤くてトゲトゲしたのはドラゴンフルーツだろ?けど前に食べたのは…」


「「味が薄かったからね…」」


「あはは…。日本に来るのは大体が熟してない物だからね」


輝はゼリーは勿論だったが、トッピングとして添えられたアイリスの持っていたフルーツも美味しかったと評価する。

翔は輝の言葉に同意をしつつ前に食べたスターフルーツとドラゴンフルーツの事を思い出し、2人揃って遠い目をする。

そんな輝と翔を見て、煌太郎は苦笑いしながらフォローをする。

そしてアイリスはというと…


「でも…こんなに美味しい物を私だけ食べるなんて…。何だか狡いような気がします」


「………」


自分だけが良い思いをしていいのかと物悲しげな表情で呟く。

そんなアイリスを見て、輝は何かを決意したらしい。

そして…


「アイリスちゃん!」


輝はアイリスの両手を取り、名前を呼ぶ。


「ふぇっ!?な、何ですか?」


勿論アイリスは驚き、何ですかと尋ねる。


「僕、大きくなったらこの月光を大きくする!」


輝は堂々とレストラン月光を大きくする…要約すると店を継ぐという旨の発言をしたのである。


「「「っ!」」」


「は、はぁ…?」


その発言を聞いた翔と煌太郎と灯は目を見開き、アイリスは目の丸くして困惑したように返事をする。


「その時は…アイリスちゃんの家族にも美味しい料理を食べさせる!!」


「っ!本当…ですか?」


「「おおっ!」」


(コレって言い方変えたら告白って奴じゃねぇの?)


そんなアイリスを尻目に輝はそうなった時にはアイリスは勿論、アイリスの家族にも自分が作った料理を食べさせると言ったのだ。

その言葉を聞いたアイリスは上目遣いで本当なのかと尋ね、傍で見ていた煌太郎と灯はざわめき、翔は心の中で殆ど告白じゃないのかとツッコミを入れていた。


「約束するよ!そしてアイリスちゃんの両親に僕の料理を認めてもらったらさ…僕と結婚しようよ!そしたらずっと美味しい料理を食べられるからさ!!」


確認を取るアイリスに輝は約束すると同時にアイリスの両親に自分の料理を認めてもらった時は結婚しようと言い放ったのだ。

相手は異世界の王族の娘という事を知らずに。


(((ハッキリ言った!?)))


輝の発言を聞いた翔と煌太郎と灯は心の中で驚愕し…


「………は、はい!」


(((こっちも認めたぁ!?彼女のご両親は不在だけど!!)))


輝の婚約に応じたアイリスに再び心の中で驚愕するのだった。

レストラン月光の中が婚約ムードで漂っている時、ある出来事が起こった。


「っ!な、何だ!?虹色の光が…僕の体から…!」


何と…アイリスに婚約をした張本人である輝の体が突然虹色に光ったのだ。

だが実際は…輝が光っている訳ではない。


「いや、お前の体からじゃねぇ!ソレって…お前の曽祖母さんの形見のペンダントだったか?そのペンダントに使われている石が光ってんだ!!」


「えっ!?…ほ、本当だ…!」


そう、翔が指摘したように輝が父から貰った曽祖母の形見であるペンダントにはめ込まれた石が光っただけで輝の体が光ったのではなかったのだ。

そして…


「ア、アイリスちゃん?足元に何か不思議な模様が…」


灯は気付いた。

いつの間にかアイリスの足元に虹色の魔法陣のような物が描かれていた事に。


「こ、これは…転移魔法の魔法陣!?」


「「「「て、転移…魔法?」」」」


異世界人であるアイリスだけはこの魔法陣が何かを理解する。

そしてアイリスの言葉を聞いた輝達は頭に?マークを浮かべるが…


「…どうやら私はまた別の場所に飛ばされるみたいです。美味しい料理を食べさせて頂き…ありがとうございます!」


アイリスはすぐに月光の元を離れると悟ったのか、微笑みながら輝達にそう言って魔法陣と共に姿を消した。


「「「「き、消えた…!」」」」


残された輝達は消えてしまったアイリスの姿を探すが何処にも見当たらず、この日の出来事は輝達の記憶に夢のようだが現実の出来事と刻まれる事になったのである。

ラヴァンダさん達は勿論だけど、王族達に囲まれてる所為で味に集中できない…!

それにしても…アイリス様のゼリーを食べる所作、10年前に出会った少女に似てるような…?

ん?何だろうか…この頭に引っかかるような違和感は…。

親友にして飲食店仲間の翔がいたら分かるかもしれないのに…!

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