たたかいはおわらない
幸い、俺がしっかりと拒絶を決めたことで会長たちも助けてくれるようになった。
ヒロインを引き留めて再度説教したり、存在しているらしいヒロインのファンをあおって妨害させたり。
でも、ヒロインだ。ホスト教師相手に色気キャラを、双子相手に天然キャラを、会長相手に知的美人キャラをと10通り以上使い分ける女だ。
会長たちにとってはゴッコ遊びレベルに見えても俺には全くわからなかった演技に、周りも騙されたり、丸め込まれたりでなかなか距離をおけないでいる。
あぁあ、どうにかヒロインの気が変わらないかなぁ…
そう祈りながら今日も俺は、ヒロインから逃げ続ける。
「お願い、信じて。翔くんだけが好きなの。もう翔くんしか見ないから、私を好きになって!」
上目使いの涙目で見てこられても、無理なものは無理なんだ。
「もうどうやっても恋愛対象に見れない。頼むから他を選んでくれ」
ぶんぶんと首を振る。こっちだってもはや涙目だ。
こんな会話に初めは罪悪感があったが、泣き落としも作戦だと気付いてからはつけこまれないために必死だ。
心を鬼にして拒否し続ける。台詞指導は会長に教えを請うた。
大粒の涙を見るとまだ逃げるしかなくなるが、ここでうっかり譲歩するとまた気付かないうちに外堀を埋められるぞとアドバイスをもらっている。
「もうゲームなんてしないわ。反省してる。翔くん好みの女になるわ。あんな腹黒たちに言い寄ってたのがどうかしてたのよ。全部知ってて私を騙してたなんて。でも翔くんだけは違ったんでしょう?知らなくて、純粋に私を好きでいてくれたのよね?」
もはやそれは黒歴史!
「それに、最近はテニスだけじゃなくて勉強もトップクラスになってきてるって聞いたわ!文武両道で顔も格好よくて優しくて、なのに女慣れしてないって最高の男よ!諦められるわけないじゃない!」
逃げてるからな!雨でテニスに逃げられない日や保健室で長居させてもらう条件に、ひたすら机に向かって勉強してるからな!そりゃ成績も上がるさ!
女慣れしてないのはヘタレなせいだよ悪かったな!
そう思いはするけど、口には出さない。口で勝てないのは思い知った。ヒロインは全てをポジティブに受けとる能力と、聞きたくないことは会長の言葉さえスルーする能力を兼ね備えているらしい。
「「恋する乙女の特徴だよ!自分に酔って自己中になるのは」」
愚痴を聞いてもらったときに双子から言われた。そして自分の情報を与えないためにも、双子たちのように気分でころころ言うことを変えるか副会長のように完全黙秘をするかがいいと教えられた。
というわけで黙秘だ。反論はしない。決して泣かせるのが怖くて反論できないわけじゃないんだ。
「だから付き合って!」
「いやもう、無理なものは無理だから!」
そして今日も、ヒロインと俺の攻防は続く。
早く、早くヒロインが諦めてくれますように!!
逃げたまんまですが、これにて完結です。
少しは成長したヘタレを見せられたでしょうか。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
この後きっと主人公は逃亡のためにテニス留学をします。ヒロインはしばらくしてからあとを追うでしょう。現地で女の戦いが繰り広げられますが、ヘタレが目の前で起こるそれにどう対処するか…ヒロインが追い付く前に本命を見つけていることを祈るばかりです。
途中で妙に増えた読者数に驚いたり、減っていく読者数にへこんだりとドキドキしながらの連載でした。長期連載している作家さんを尊敬します。
そんな中、感想をくださる方がいることがとても励みになりました。
ポイントを入れてくださった方も、本当にありがとうございました。
言われて気がつくこともあり、エンディングを急いで書き直したのでもしかしたらおかしなところがあるかもしれません。何かあったら教えてください。
あとは思い付いたときに番外編の方を更新するつもりですので、お暇なときにまた覗いてやってください。




