ひなんじょにて
校内で俺がヒロインから離れてゆっくりできるのは、もはや保健室だけだ。
高校3年になり、受験のため生徒会は新メンバーに引き継いだ。指導のため顔は出すが、部屋を溜まり場にするわけにはいかないので生徒会室は使えなくなってしまったのだ。
というわけで昼休みの俺は保健室の常連である。
「いらっしゃい。またあの娘から逃げてきたの?」
「お願いします、先生。なんとかヒロインを引き取ってください!!」
俺は保健室のホスト教師にすがり付く。
「んー、でも僕が付き合うと、仕事クビになるし。人生かけるほど魅力ある娘じゃないでしょ?」
「じゃあせめて違う男を紹介してやってください!」
「それもねぇ…もうやったけど無理だったらしいですよ?緑羽君がいいのって騒いで終わったようです」
なんて迷惑な…!
なんでよりによって俺なんだ。ヒロインを子供のようにあしらえる人材が揃っているなかで、なぜ俺を選ぶんだヒロインは!
「幼いんですよ、あの娘。実際はもうオバサンと呼ばれるだけ人生生きてても。その人生において全く成長していない。あの娘がしてるのは、恋なんでしょうね。愛はないから、自分の想いをひたすら伝えるだけになる。せいぜい13歳だと思えば可愛いものです」
確かに、前世でゲームをしていた妹が言っていた。
『キャラを使い分けて落とすまでが楽しいの。本気なんて面倒だよ。だから「恋」祭りってゲームなんじゃない。恋愛ゲームじゃないの。遊ぶのに愛なんていらないんだよ』
妙に納得した台詞だ。
そう考えるとヒロインの影にプレイヤーとしての妹が見えてくる気もする…
「なおさら無理だ!ありえない!女としてすら見れなくなってきた!」
やばい、鳥肌たった。ない。恋愛対象になりようがない。
「でももう、テニス大会で優勝したときの行動で、世間には認められてるんじゃないですか?」
そう、とても悲しいことに。
あの時撮られた写真は会長たちがうまく説明してくれたようで新聞やテレビなどで報道されることはなかった。
ただし噂までは止められず『お似合いの彼女がいる』というレッテルが貼られてしまった。おかげで相変わらず、ヒロイン以外から言い寄られることなんてない。
学校ではその後の俺のヒロインからの逃げっぷりと会長たちのフォローで、別れたのにヒロインが付きまとっているという方向に理解された。
だけどヒロインはどこまでいってもヒロインだった。
俺に振られ、会長に説教され、副会長にバカにされ、双子に嘲笑されて泣くほどダメージを受けたはずなのに、一週間ほどで立ち直ったのだ。そして学年が上がり皆がバタバタしている間に、ヒロインが俺を追いかけ回すのが当たり前の構図が出来ていた。
「女はしぶといな」
とは会長の弁だ。




