ぜんりょくでにげます
「私とつきあってください!」
「ごめん、無理!」
俺は今、全力でヒロインから逃げている。
今までの手練手管全てを使って俺を落とそうとしてくるヒロイン。
着信を拒否したら家の前で待ち伏せをし、毎日学校についてくるようになった。
トレーニングを兼ねて走って登校するようにしたが、後から自転車で走ってついてくる。
「私は本気なの!運動がしっかりできるとこもかっこいいね!」
って、全力で走ってる俺にひたすら話しかけられても困るんだ。
「俺は!手当たり次第男を口説いて回るような女は!好きにならない!!」
かとおもえば休みの日には帰省してきた兄貴を言いくるめて家に入り込み、母親と一緒に料理をしていた。
もちろん兄貴にはがっつりと文句を言い、二度とやらないと誓わせた。裏の顔を信じさせるのにかなりの労力をつかった。
「健気に見舞いに来てた娘だろ?そんなことするのか?」
「だから、裏では男に会わせていろんなキャラを演じて落として回ってたんだって!」
「お前だけが好きだって泣いてたぞ」
「騙されてるだけだ!!」
テニス部でも気がつけばマネージャーになっていた。
すぐにクビにしようとしたが、男部員の胃袋をがっつりつかんで辞めさせられなかった。
せめて自分は関わらないと宣言して、他のヒロイン狙いの部員に引き留めてもらっている。
「焼そばパン、一から手作りしてみたの!」
「いらない!お腹空いてない!」
「じゃあ他に好きなもの教えて!翔くんの好きなものなら何でも作ってあげるわ!」
「何にもいらない!もう手料理なんて食べない!!」
練習後の空腹な時間に上手そうな匂いをさせた差し入れを色々と出されるが、食べたら敗けだと思って拒否し続けている。
クラスへは休憩の度に押し掛けてくる。
俺は隣のクラスの双子弟のところへ避難。さすがに生徒会メンバーには近寄ろうとしないからな。ただ、それでもたまには話しかけられる。
「今は翔くんだけが好きなの!誰に対しても優しいところも、どんなに怒っても人に暴力を振るわないところも、どれだけ困っても人のせいにしないところも!」
「怒らせてんのも困らせてんのもキミだけどね」
「だって好きなんだもの!こうでもしなきゃ関わることもできないじゃない!」
「諦めなよ。ここまで嫌がられたらもう落とすのは無理だって」
「諦められないからこうしてるの!」
「あっはっは。すっごいめいわく~!会長からあんなに人の気持ちを考えろって言われたのに、なんにも成長してないねぇ。そういうところが嫌われるんだよ」
「うるさいわね!私は翔くんと話したいの!」
俺はこそこそと更に隣のクラスへ移動してるけどね…




