さいごのぷらいど
表彰式の撮影が終わり、フラッシュがやんだ。
これで帰れば、イベントは起こらないはずだ。ヒロインの位置は常に警戒し、把握している。生徒会と反対側に座っていたはずだ。
フラッシュで見失ったけれど、探し直す必要はもうないだろう。
そう油断したのが悪かったのか。
目の前に降ってきたものを、条件反射で受け止めてしまった。
降ってきたのは、ヒロインだった。通り道に走り込んで、応援席から飛び降りてきたらしい。
嘘だろ、そんな力業!
「私のために優勝してくれてありがとう!直前までラケットなんか抱き締めてるから心配しちゃったけど、やっぱりちゃんと受け止めてくれたね!」
笑顔で首に抱きつき、頬にキスまでしてくるヒロイン。受け止めたまま横抱きにして抱える俺。
イベントスチルがここに達成された。
その後、振り払えないほどしっかりと首にしがみついてくるヒロインを、抱えたまま選手控え室に戻った。
ヒロインをどさっと床に投げ出す。
「いったぁい。もっと優しくしてよぉ」
すねた顔で上目使いに見上げてくるヒロイン。
もう限界だった。
「なぁ、何で俺にしたわけ?」
わめき散らさないように必死で自分を抑えながら、声を絞り出す。
「逆ハーレムでも続けてりゃよかっただろ。それか選ぶなら会長とかにしとけよ。何でよりによって俺なんだよ」
どす黒く溜まったものが腹の中で渦を巻いている。
俺が必死で毎日練習してもぎとった優勝を、こいつは「自分のため」と言い放った。
単にイベントを起こすための過程に過ぎないという扱いをしたのだ。
さらにはテニスラケットよりも自分を選ぶのが当たり前だと。
「続編のためにイベントをこなしたかった?なら目的は達成されただろ。もう解放してくれ。付き合うとか本当に無理だから」
「何言って…」
ヒロインの言葉をさえぎり、部屋から追い出す。
「頼むから、もう俺の前から姿を消してくれ。電話も拒否する。お前みたいな女に関わりたくないんだ」
そういって部屋の鍵をかけ、俺は部屋に閉じ籠った。
いつのまにか俺にとって、テニスは唯一のプライドになっていたらしい。
それを軽く扱われ、なおかつ恋愛ゲームの踏み台にされた。
それが、どうしてもゆるせなかった。




