ほけんしつににげこみます
どのくらい放心していただろうか。
チャイムの音で我に返り、ノロノロとシャワーを浴びて制服に着替える。
教室に行くと、とっくに一限目の授業が始まっていた。
「遅いぞ、何やってた…って大丈夫か!?顔色悪いぞ!保健室行け保健室!」
遅刻を謝ろうと口を開く前に、教師から慌てて命令される。
確かに倒れそうな気分だ…
付き添うという保健委員の言葉を断り、一人で保健室へ入る。
中ではホストな格好の養護教諭がニヤニヤしながらコーヒーを用意して待っていた。
「いらっしゃい。つきあうことになったって?ターゲット確定おめでとう」その全てを知っているぞと言う態度と言葉に、ようやく理解が追い付いた頭が働き出す。
「なんなんですかあれ!俺、逃げようとしてたはずなのに!付き合うことになるとかわけわかんないんですけど!何で俺ですか!」
俺の叫びに、ホスト教師はあっさり返す。
「まぁ常識的に逆ハーレムなんて長続きしないし?バレンタインに向けて本命を絞るのは当然なんじゃない?」
「先生たちのがいい男です!」
「いい男過ぎて操りにくいんだよね、僕らって。緑羽が一番思考を読みやすいし、騙しやすくて浮気もしなさそうだからじゃないかな?」言われ慣れた評価に撃沈する。
まさか一番ヘタレだから選ばれるとか!そんな理由ありか!
どうせ俺はテニスしかやってこなかった単細胞だよ!操りやすいだろうさ!
会長が言ってた、続編のためってのとどっちがましな理由だろうなぁ…
「でも無理ですよ、裏を知ってしまったら怖すぎます。付き合うとかなんの悪夢だろう」
「考え方を変えてみればいいんです。顔はいいしスタイルもいい、軽く優しくするだけで笑顔でいろいろ世話を焼いてくる女性。世の中にはそのために大金を払わす店だってあります。それが全部サービスで付いてくるなんて。おまけにこれからは自分だけを見てくれるなんて宣言までついて。ラッキーじゃないですか」
真剣な口調だけどニヤニヤ笑いが裏切ってる。絶対、他人事だと思って楽しんでるな、これ。
「そう思うなら先生の大人の魅力でなんとか引き取ってください」
「ふふん。試してみましょうか?」
「え?」
やけになって発した言葉の、思わぬ返しに驚く。助けてくれるのか!?
「ちょっとそっちのベッドで横になっててください。授業が終わったら噂のヒロインがきっと駆けつけてきます。寝たふりしてれば話しかけても来ないでしょう。そのまま話を聞いていてください」




