8 反乱軍
誰かが声をあげた。
「あれは! 反乱軍だっ!」
「セキホー! コープル・セキホーが来た!」
「カピタン・サガラ! カピタンだ!」
「カピタン?」
疑問を漏らした僕に、アマリアさんがつぶやくように教えてくれた。
「カピタン・サガラよ、……反乱軍はここまで押し込まれたのね……」
「崩すぞ! 前進!」
統率された軍隊を率いる司令官は、軍馬で突っ込んでいく。驚くほど統制の取れた動きだ。
まるでひとつの生き物のように動く反乱軍は、ほどなくして敵を四散させた。
司令官の男の人はこちらに近寄り、先ほどとは打って変わって優しく語りかけてきた。
「わたしは相楽。ここいらで義勇軍をやっている。怪我はないか?」
よかった、味方みたいだ。すかさず僕はお礼を言う。
「はい、ありがとうございます。助かりました。」
馬に乗っているその人は、まさに長と呼ぶにふさわしい雰囲気で、他の人に慕われているのも納得の風貌だった。
平たくいうと爽やかで顔が整っている。
アマリアさんなんて恥ずかしいのかフードを深く被って顔を隠しちゃって、まぁ。
女の子ってこうだよな……。
二人で話していると、師匠がこちらに来て言った。
「相楽……。赤報隊の相楽総三か?」
師匠が知っている人のようだ。
「……比古さん! 比古さんじゃないですか!」
おっと。なんと二人は知り合いだったのか。
二人は話し込んでいるが、内容はさっぱりだ。
「そうですか、あなたも気づいたらここに」
「名古屋で会って以来だな」
「いやあ、あの時は部下が失礼しました。もしあの時、比古さんがいなかったら、わたしはもっと早く明治政府に捕まっていたでしょうね」
「助けたわけじゃない。成り行きだ。……ところで、ここでも赤報隊を組んでいるのか?」
「はは、最初は王国の旗本だったんですがね、なんの因果か……。しかし、今度の赤報隊の相手は“本物”の悪党です。」
「志々雄真実か……」
「志々雄は恐怖で民を支配しています。評判を気にする必要がない分、明治政府よりもタチが悪いですよ」
「そうか」
「……比古さん。今度こそ力を貸してください。志々雄の悪行は我々が止めなくては」
「……」
話ぶりから考えると、師匠はどこか別の国から来ているのだろうか。
「この国には他にも我々と同じように流れ着いてきた者がいます」
「志々雄もその一人というわけか」
「比古さん。この世界が、戦乱で廃れるかどうかの瀬戸際なんです。力を貸してください」
師匠はサガラさんをまっすぐ見たまま、それ以上何も言わなかった。それを見届けると、サガラさんは軽くお辞儀をすると立ち上がる。
「我々はこの後、拠点に戻ります。西の城砦です。気が変わったら連絡を」
サガラさんは鞍に足をかけようとして振り返る。
「先ほど刀を探していると言っていましたね。この先の鉱山で飛天御剣流の名前を聞きました。」
「そうか。では行ってみるとしよう」
サガラさんを見送ると、後ろから声がした。
「あの、よろしいですか。アマリアさん、ロシュさん、シショーさん」
アデラさんがおずおずと進み出る。
「この度はありがとうございました」
「アデラさん、いろいろ言ったけど、あなたはこれからもこの町を率いていくのよ。しっかりなさい」
「……はい!」
「よかった、ですよね、師匠?」
「師匠はよせ」
師匠の顔を見ると、厳しい顔をしている。
「ロシュ、俺は首を突っ込むなと言ったはずだ。」
「はい、……すみません」
「はぁ、お前は向こうみずなところがあるな。あの数の敵をどうするつもり」
「でも! ほっとけないですよ……」
師匠は少し困った顔で答える。
「まったく、こいつは……。ならば身を守る術を覚える必要があるか」
思案顔で答える師匠は、心なしかニヤついていた。




