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6 魂の酒

アデラさんが入って行った建物に入るなり、大声で宣言した。


「僕も手伝います!」


 中では机を囲んで、この町の人たちが激論(げきろん)を交わしていたようだったが、全員がこちらを見やる。


「あなたは、先ほどの」


 応えるアデラさんを遮(さえぎ)って男が出てくる。


「あんた、申し訳ねえがこの町から出てってくれ。あんなふうに賊(ぞく)を刺激されてはかなわん」


「そんな! アデラさんは殺されかけたんですよ!?」


「そりゃそうだが、話し合いができれば……」


 たまらずアマリアさんが叱りつけるように言う。


「なに甘いこと言ってんの!? 相手はシシオ軍団よ! 話が通じる訳……」


「お二人とも!」


 アデラさんは芯のある声で口論を制した。


「加勢の申し出、大変ありがたく存じますが、今日の夜、私はシシオ軍団に交渉に行きます」


「アンタ正気!? 行っても殺されるだけよ」


「……私たちは抵抗する力がありません。抗(あらが)って殺されるよりも、生き延びることができる可能性を探ります」


「どうする気? 何か作戦があるの?」


「それは……」


 言いよどむアデラさんにアマリアさんは続けた。


「奴らは交渉なんてしないわ。戦うか殺されるかよ。直談判に行って殺されちゃったら後はどうなるの!? アンタこの町の長(おさ)でしょ!」


「でも……私ができることは彼らを説得するしかないんです。それも無駄ならば、どうすれば……」


 突然、乱暴に扉が開いたかと思えば人が入ってきた。


「た、大変だ!」


「何事ですか?」


「あいつら! オレたちの酒を!」


 何かを察して走り出したアデラさんを追う。


——町の出口付近、普段は行商と荷馬車(にばしゃ)で賑わう大通りだ。


 門のところに大量の空の樽(たる)と、そこら中に、それもまんべんなく丹念(たんねん)に酒が散乱している。


 箱には王室御用達の立派な札が貼られていた。“アブンデンゼレン(豊穣の国)”。田舎者の僕でも知っているくらい有名な高級酒(こうきゅうしゅ)だ。


「そんな……私たちのお酒が……」


「これはいったい」


 近くの農夫が吐き捨てるように言う。


「奴ら、酒造所を襲って、俺たちの酒を捨てちまったのさ!」


「こんな……。こんなこと……」


 へたり込むアデラさんを見てから、アマリアさんは全員に言い聞かせた。


「これがあいつらのやり方よ。とことん追い詰めて、抵抗する気力を削ぐの」


「……」


「このワインはこの町の魂(たましい)だったでしょ。アタシもよく知っているわ」


「そうだ。俺たちは毎日、この酒を造るために……」


「くそっ! こんなこと!」


「アンタたち! こんなことされて悔しくないの!? あいつらに従えば、こんなことされ続ける人生よ!」


「……」


「それなら、死んだ方がまし……」


 アデラさんは小さくつぶやいた後、立ち上がった。


「私は行きます。……戦います!」


 周りの男たちも答える。「俺もだ」という声と拳が次々に挙がる。


 満足そうにそれを見ていたアマリアさんが全員に問いかけた。


「ここに兵役(へいえき)の経験者はいる?」

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