24 土方歳三
こうして数日が経つと、ついに橋が直ったという知らせが昨日届いた。
サイタローさんは大きな馬車に乗って出発してしまった。
僕たちも明日には出発かと思うと名残惜しいな。
「ねー、ねー」
そういって僕の手に何かを持たせる。……今日は石か。
「ありがとう」
いひひと笑いながら部屋の隅っこに隠れる。
——やめてください!
外からグレルさんの声だ。僕は刀を持って外に出ようとすると、入り口で師匠と鉢合わせた。
目くばせだけして一緒に外に出る。
外ではグレルさんが大きな男と向かい合っていた。近くには奥さんもいる。
あれは……コンドー! 新選組がなぜここに。
「悪いが、トシを返してもらうぜ」
「なんですかあなたは!」
「少しの辛抱だ、トシ!」
懐から何かの器具を取り出すとグレルさんに投げつける。
「ぐあぁああ!」
「グレルさん!」
グレルさんは体が動かせないようだ。
「あなた!」
「ナミ! 家に入るんだっ! ぐっ!」
「拘束の呪い! グレルさん! 」
後から来たアマリアさんが杖を構えるが、躊躇している。この距離だとグレルさんに当たるかもしれない。
コンドーが刀を振りかぶる。
「動くなよ!」
——キィン!
ペンダントを切った?
2つに割られたペンダントが地面に落ちると。淡く光を放つ。
「これは変化魔法!」
「魔法!?」
「皮膚を変質させる魔法だわ……。いえ、あれは呪いに近い……」
みるみるうちにグレルさんの顔が変わっていく。
「ぐっ……。うううううぅ……」
黒髪に、あの顔立ち……。ヒノモトの人だ……。
「土方! 土方歳三! お前の名前だ!」
「ひじ……かた?」
「トシ! 俺がわかるか!?」
「こ、こん……どう……さん?」
「そうだ! トシ! 俺だ!」
グレルさんは立ち上がるともう一度確かめるように周りを見回す。
その姿は、文字通り別人で、血の匂いを放っているような、殺気に満ちた顔だった。
「俺は……。いったい……? ああ、わりぃ。どうかしてたぜ」
「トシ、話はあとだ。まずはここを離れる。これを……」
コンドーは師匠から目を離さずに刀を乱暴に押し付ける。
「これは、俺の刀……!」
慣れた手つきで刀を抜くと鞘を腰に差す。
「まずはあいつを倒しておかないとな」
師匠に切っ先を向けるコンドーの目は本気だ。
「お前らやめておけ。ここでも死ぬことになるぜ」
「さすが飛天御剣流の継承者。すげぇ剣気だ」
「新選組 副長 土方歳三 参る!」
「名前なんかいい。さっさと来い」
ヒノモトの剣士が出す殺気だ……。もう、あの人はグレルさんじゃない……。
2人がゆっくりと離れながら師匠を囲む。
「ロシュ、アマリア、下がっていろ」
言われた通り下がって事態を見守る。
師匠は黙って二人を見ていた。まるで相手の準備が整うのを待っているみたいだ。
「さすが新選組。取り囲むのはお手の物だな。だが……」
左右からの挟撃するつもりか、距離を取る2人。
「しゃぁ!」
先にコンドーが切り込む!
「はっ!」
師匠が鞘で振り上げた腕を制す。
「てぇや!!」
そのまま後ろから襲ってきたヒジカタ
師匠が鞘で押さえながら抜刀して斬撃!
「くそっ! 隙がねぇ!」
何とか避けたヒジカタは横に飛びのく。
師匠はコンドーを押さえている鞘に刀をあてがう。
あれは!?
——飛天御剣流 龍鳴閃
納刀の衝撃で立ちくらませる技!
「ぐあぁ!」
その場でよろめくコンドーを見て再びヒジカタが動く
「させるか!」
横からの突き! ……当たらない!
師匠は突きを躱しながら体制を低くとる!
そのままヒジカタに抜刀……いや
鞘だ! 鞘での攻撃!
——ヒュン
何とか避けるヒジカタ
これは空振りじゃない!
——飛天御剣流 双龍閃・雷
狙いはコンドーだ!
「近藤さん!!」
とっさに覆いかぶさるヒジカタ。
直撃する!
——ガキィイイン!
あれは…… 魔法の壁?
ヒジカタを包み込むように発生している。
「障壁魔法だわ!? 無詠唱で出すなんて」
—— 近 藤 さ ん !
遠くから馬に乗った誰かが来る。
あれはオキタさん!
「総司か……? 総司! こっちだ! 」
「土方さん! よかった! 早くこちらへ!」
「引くぞ!」
ヒジカタはコンドーを引きずりながら走り出す。
「あなた!」「お父さん!」
うしろから奥さんとコトちゃんが呼び止めようとする。
「……」
何か言おうとしたのか、少し立ち止まったが、そのまま走って行った。
「あのヒジカタとかいうやつ、無意識に魔法が発動していたわ。あれは魔法適性者よ」
「魔法が使えるってことですか? 」
「そうよ。しかもヒコの剣を防ぐ分厚い防壁を無詠唱でね」
「そんな……」
「う……う、うわあぁぁぁぁぁん」
泣き出すコトちゃんを抱きしめながら、ナミさんは道の先を見つめている。
「師匠……」
「ロシュ、奴らとはいずれ戦うことになる。その前に大技を伝授しておこう」




