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18-同級生が乱入

 麦茶をもう一口飲んだところで、真琴がグラスを揺らしながらこちらを見た。


「完全に雪斗君を中心にしてちょっとした群れになってるよな」


 はるかが笑いながら真琴の肩を軽く叩く。


「真琴さん、その言い方だと完全に研究観察対象じゃない」

「実際そうだろ」


 凛子もくすっと笑った。


「でも確かに、みんな雪斗君のことよく見てるよね」

「そうですか?」


 はるかがグラスを傾けながら言う。


「うん。ひなたちゃんは分かりやすいじゃない?」


 真琴が指を一本立てる。


「で、みつきちゃんは結構距離が近いしグイグイくる。で、かぐや」

「……」


「さっきも言ったけど、あれは完全に意識してる」

「うん、あの子は分かりやすい」

「……」



 俺は麦茶を飲むしかなかった。


 一体今日一日のかぐやの様子でなぜそう言う結論になるのか全然わからない。

 凛子が急にこちらへ身を押し付けてくる。



「ねえ雪斗君、ちなみにさ」



 そう言いながら、凛子は俺の肩に軽く肘を乗せる。

 風呂上がりの体温がそのまま伝わってきて、距離がやけに近い。



「雪斗君は誰が好きなの?」

「いや、いませんよ」


「ほんと?」


 真琴が笑いながら俺の背中をぽんと叩く。


「この状況でそれは無理ない?」

「いや、本当に……」


 凛子がペットボトルを持って、俺のコップに麦茶を少し足した。


「はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」



 そのとき凛子の腕が軽く俺の腕を抱きしめるように胸に引き寄せられた。

 凛子の双丘に腕が挟まれて、一気に体温が上昇する。


 わざとかどうかは分からないが、流石に距離が近すぎる。

 肘がムニムニとしたマシュマロのような柔らかい何かに挟まれている。



 真琴がそれを見て笑う。


「凛子、近い。酔ってるだろ」

「ちょっとだけ。ごめんね雪斗君」


 凛子はまるで悪びれた様子もなく、腕を開放してくれて新しい缶チューハイを開けた。

 そんな様子を見たはるかが肩を揺らして笑う。


「あはは、でも真琴さんも人のこと言えないよ」

「そうか?」


 そう言いながら真琴はまた俺の肩をぽんぽん叩いた。

 まだ俺の方に腕を回したままなので左肩に真琴の胸がムニムニと当たっているのだ。


 完全に距離が近い。三人とも近い。

 ……酒が入るとこうなるのか。それとも大人の女性というのはこう言うものなのか。



「ねえ雪斗君、さっきの質問、もう少し具体的にしてもいい?」

「……なんですか」



 凛子はグラスを揺らしながら、少し真顔にった。


「同級生の女の子と、年上の先輩、それとも、私たちみたいな年上のお姉さん」


 3人の視線が一斉にこちらへ向き、凛子が少し首を傾げる。


「雪斗君って、どこに興味あるのかな?」

「正直に言っていいぞ」


 真琴が真面目に言い、はるかがさらに身を乗り出してきた。


「酔っ払いの戯言だからさ」


 顔が近い。薄く桃色の唇から吐息が聞こえてきそうな距離だ。


「……」


 答えに困って麦茶を飲もうとすると、凛子がくすっと笑った。


「ほら困ってる」

「そりゃ困るよな」


 完全に揶揄われている。


「でもさ、そのうち誰かと何かは起きるだろ。人間としてこの環境で何も起こらなければそれはそれで不健全で問題だ」



 3人が楽しそうに笑う。

 そのとき――廊下の奥で、コップが軽く当たるような音がした。


 3人と俺の視線がそちらへ向くと、廊下の入口にパジャマ姿のみつきが立っていた。

 手には水の入ったコップ。

 そして、さっきの会話を聞いてしまったような顔でこちらを見ていた。


 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 しばらくの沈黙。

 一番先に口を開いたのは、はるかだった。


「みつきちゃんおいで」


 みつきは普通の顔で居間に入ってきて、ペットボトルからお茶を注いだ。


「盛り上がってますね」

「みつきちゃんごめんね、起こしちゃった?」


「いえ、ちょっと喉乾いちゃって」


 みつきはコップを持ったまま、ちらっとこちらをみた。


「雪斗くん、捕まってるね」

「捕まってるわけじゃない」

「そう?」


 凛子がさっと離れて、自分の座っていたところをポンポンと叩いてから、はるかの隣へと移動した。するとみつきはそのまま俺の隣に来て、何の遠慮もなく座った。


 はるかが笑う。


「ほら、みつきちゃんは素直」


 みつきはコップの水を一口飲みながら言う。


「だって家族みたいなものですし」


 真琴が肩をすくめる。


「その理屈は危ないな、みつきちゃん」


 真琴は俺の肩に肘を乗せたまま言う。


「今ちょうどさ、雪斗の恋愛話してたんだけど」

「へぇ?」


 みつきの手が一瞬止まり、凛子が楽しそうに追加した。


「雪斗君ってどのタイプの女の子が好きなのかなって」

「雪斗くん、なんて答えたんですか?」


「まだだ答えを聞いていないなー」

「ちょうど聞こうとしてたところ」


 みつきはコップを持ったまま俺の腕に軽く寄りかかった。


「へぇ」


 そのまま、さりげなく俺の腕を指先でつまんだ。


 ……まただ。

 はるかがそれを見てニヤニヤと笑った。


「いいなぁ……みつきちゃんの押しっぷりが羨ましいー


 凛子もうんうんと頷いているが、みつきは首をかしげていた。


「なにがですか?」

「さっきも言ってたんだけどさ、みつきちゃんって雪斗君と距離近いよね」


 みつきは少しだけ笑った。


「そうですかー?」

「さっきも後ろからそっと腕掴んでただろ」


 尋問のような質問だったが、みつきは照れた様子もなくあっさり答える。


「掴んでましたね」


 三人が一瞬黙り、そして同時に笑った。


「否定しないんだ」


 だがみつきは平然としていた。


「だって本当ですし」

「かわいいな」


「これは手強い。ひなたちゃんとかぐやちゃんは大変だ」


 みつきはコップをテーブルに置いた。


「えっ? お姉ちゃんも?」

「妹としてはどう思う?」

「んー……そうですね……でもまぁ、多分普通に好きだと思いますよ」


 衝撃の一言をこぼしたみつきだが、そんなことよりと言いながら俺の方を見た。


「で、雪斗くん、さっきの質問の答えは?」

「答え?」


「同級生とか、年上とか、お姉さんとか」


 それを聞いて凛子がにやっと笑った。


「みつきちゃん、聞いてたね」

「ちょっとだけですよ」


 みつきは少し肩をすくめ、俺の腕を摘んでいた指を離し腕を絡ませてきた。


「雪斗くん、これはちゃんと答えてあげたほうがいいよ」


 はるかが笑い、凛子がニヤニヤと続ける。


「お、援護射撃ですか?」


 ……なんでこうなった。


 俺はコップを持ったまま、少しだけ考えた。


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