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007 逃げるが勝ち

ご愛読ありがとうございます。


拙い文章ですが、面白いと思って頂けましたら“ブックマーク”や“いいね”、“感想”等にて応援頂けると幸いです。


これらの応援は執筆に際しての大変励みなりますので宜しくお願いします。

「うーん、そろそろ起きないと」


それにしてもかなり長く寝てきた気がする。

それなのに辺りは暗いというより真っ暗闇と言って差し支えなく、目を開いても何も見えず、少し息苦しい感じもする。

そこで思い出したのが昨晩の惨事(環境破壊)である。

決して羞恥おもらしでは無い...、証拠なんて何も残ってないもの。

そっか昨日は地魔術で小屋を作ってその中で寝たから真っ暗闇なのは当然ね。

次からは採光と換気を兼ねて窓ではないが小さめの穴でも開けておく必要があるわね。

下手したら酸欠で孤独死するとこだったから気を付けないと。

さて、朝イチからボッチ反省会が開催され慎ましく終了したので、先ずは魔術で光を作り出す。

次いで小屋の壁の少し高い位置と地面に近い位置に地魔術で拳大の穴を多数開ける。


「オイ、気を付けろ!!殻に穴があいたぞ。中から何か出てきて襲ってくるかもしれん!!一先ず距離をとるんだ!!」


穴を開けた途端に外から聞こえてくる緊張混じりの男の声。

加えて複数人が遠ざかる足音や鎧などが奏でる金属質なガチャガチャとした音。

...、お、落ち着いて冷静に考えましょう。

まだ慌てるような時間じゃないはず。

落ち着くには一旦深呼吸。

スゥゥハァァ、スゥゥハァァ

ふぅ、これってまず間違いなく小屋をモンスターか何かの卵か何かと勘違いしているわよね。

...、あぁ、よくよく考えると突如として現れたそれなりに広大な更地の中心に怪しげな半球状の未確認物体が鎮座していることになるのかぁ。

それに傍から見ると半球状のソレは、実際には球体が半分埋もれているとも考えられる。

となれば普通は中に人が居ると考えるよりはモンスターか何かの卵か何かと考える方が自然よね。

って、ヤバくない!?

落ち着いて考えた筈なのに逆に軽いパニックに陥りアワアワと小屋の中で狼狽えていると外から再び人が近近づいてくる音と共に話し声が聞こえてきた。


「チッ、ビビらせやがって、何も起きねぇじゃねぇか!!どっちにしろ何かのバケモノに違いないんだからよぉ、ご丁寧に相手がクソ硬ぇ殻に穴開けて下さったんだから、お誘いに乗って殻の中に魔術ぶち込むなりして、さっさと仕留めちまおうぜ」


先程とは異なる粗暴な男の苛立ちを顕にしている声が聞こえてくる。


ちょっ、この小屋(殻)の中に魔術をぶち込むとか物騒な事を言い出しているのだけど。

このまま小屋の中で静かに篭っているのは危険と考え私は外の男たちに声をかけてから小屋から出ていくことを決める。


「待って!!これは卵じゃないの!!地魔術で作った野営用の小屋なの。今から壁の1部に穴を開けて外に出ていくから攻撃しないで!!」


少し慌て気味になったが、外の男たちに向けて叫ぶ。

私は急いで探知を行使して周囲の状況を探る。

小屋の周囲にいる相手は五人、他の赤い点は見受けられない。

小屋近くには三人、残り二人が2m程離れた後方で左右に別れいてる。

この配置なら相手と反対方向から抜け出せば、小屋が盾代わりになり不意な攻撃を受ける恐れも避けられそうである。

そして前方の視界に映る赤い円。

昨晩に比べると比較にならない程に大きいことから距離によって大きさが変化することで間違いなさそうである。

それぞれを見比べると大きさには大差がないが上下位置には多少の差がある。

私の頭と同じ位の高さにあり、声からして相手は男性、そのことから推察して胸の辺りに赤い円は位置していると考えられる。

周囲の状況を把握したことで余裕が生まれ探知について考えていると外から声が返ってくる。


「これ小屋なのか?地魔術でこの大きさとこの硬さってのも信じられないのだが、魔術系スキルか何か...。取り敢えずは分かった。こちらから魔術を放つことはしない。なので、そちらも魔術は使わないでくれ。それから、ゆっくりと中から出てきてくれるのであれば手荒な真似はしないと誓う。」


最初に聞こえた声の男からの返答であった。

彼がリーダーなのかしら?

先程の粗暴な男がリーダーでなかったことは幸いだけど、それでも安心は出来ないかな。

探知で男たちの位置取りを確認していると小屋近くに居た三人は、小屋から少し距離を取り体勢を整えている様である。

前衛は二人、その1m程後ろに一人、更に後方1mに二人と完全な戦闘態勢に見受けられる。

残念だけど誰かも分からない相手の言うことを簡単に信じる程、私はお人好しじゃないのよね。

それに粗暴な男も居るみたいだし。

加えて体制整えて手ぐすね引いて待ち構えられてる可能性も高そうだしね。


「了解よ!!今から出ていくわ!!」


そう叫んで私は彼らと真逆の方向から急ぎ外へと飛び出たのであった。

外に出た後は、相手側の小屋の壁はそのままに、半分から私側部分の壁を地魔術で細かな砂塵に分解する。

並行して風魔術を行使して高さ2m、直径5m程の旋回する風の壁を相手全員を取囲むように発生させ、小屋から作った砂塵を流し込む。

カァン、ドカッ、ドカッ、ドカッ、ドカッ

次の瞬間、残っていた小屋の一部から甲高い音と共に砂埃が舞い上がる。

立て続けに小屋の周囲にも多数の砂埃が舞い上がった。

男たちからの地魔術と思われる石礫が連続して放たれている。

だが、どうも様子がおかしい。

どうやら砂塵混じりの風壁により石礫の勢いが削がれている。

加えて風壁に流されて小屋方向に飛来する数は少なく大半が地面を穿っている。

加えて石礫自体が脆いのかは判らないが小屋に命中した石礫は粉々に砕け散っている。

と暫く観察していると飛来する石礫が皆無となり、周囲には風壁の音だけが響いている。

私は石礫が流されていた方向とは逆の位置へと移動しながら風壁の厚みを増加させる。

並行して残りの小屋も砂塵に分解して厚みを増した風壁に流し込む。

砂塵混じりの厚い風壁に阻まれて中の様子は直接伺えない。

しかし、探知の感じから察すると無理に身動きをせずに魔術が消えるのを待っている様である。

普通ならばこれほどの魔術を長時間維持することは困難であることから正しい選択とも言えるのだが、人外のステータスを誇る私には通用しない。

しかし、私も相手の正体が分からないことから無闇に手にかける訳にもいかない。

ふぅ、何とかなったかな。

盗賊や野党とかの悪党なら人権も無いから容赦なくシバいてアジトまで案内させるところなんだけどね。

流石に声だけでは判断出来ないからね。

取り敢えず五人組には今しばらくの間は風壁の中に閉じ込めて置くことにする。

そうと決まれば取るべき手段は一つのみ。

そう、私はこの場から全力で逃げ去ることにしたのだった。

全力で駆け出した瞬間、周りの景色が物凄い勢いで流れた。

僅か数秒で整地された広大な破壊痕から抜け出てしまう。

村にいた頃も走ることが無かった訳では無いのだが、良くも悪くも長閑な田舎の村であった為、全力疾走を要する場面に出会う事が無かったのである。

私は慌てて速度を落とす。これはマズイ、どう見積っても陸上生物の走行速度を超えている。

それに速すぎて目で見てからの認識だと判断が追いつかない。

こんな速度で街道に飛び出して人や荷馬車にでも衝突したら(主に相手側が)大惨事につながる。

それに衝突を避けられたとしても誰かに目撃されれば新手のモンスターか何かと間違いなく勘違いされることになりかねない。

私は速度を緩めたといっても、それでもかなりの速度で駆けながら、探知により周囲を確かめつつ街道近くまで急ぎ移動したのであった。

現時点のフロレアールの全力疾走は100mを1秒程として思い描いております。

時速換算だと360km程ですで、全力疾走時にフロレアールが見た流れる景色は新幹線から外を見た時(イメージして頂くと分かりやすいかもしれません。。

なお、ヒューマン平均は100mを14秒程としています。


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