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狂った聖少年と虐待させる妹

布団の中で目を覚ました。

布団から起き上った僕が、一番最初に感じたのは疑問だ、何故なら自分がいまいる部屋に心当たりが無いためだ。だが、そんな疑問も次の瞬間には氷解する。

そうだ、僕は転生したんだった。そう思い出した次の瞬間、一斉に色んなことが思い浮かんだ、この国の言語に、隣国の言語、果てはエルフ語やドワーフ語まで、それから効率のよい魔力や体力の上げ方に魔法の使い方など、確かに赤ん坊に頃だと、情報の処理が追いつかずに脳が千切れるだろう量の情報が記憶として思い浮かぶ。

次に浮かんできたのは、現在の自分の情報、名前はシン、平民なので名字は無い、次に容姿、これは今まで鏡がなかったので正確には分からないが、恐らく前世とほとんど同じで、漆黒の髪に漆黒の瞳。

生まれは国の外れにある小さな村だ、家族構成は五人家族で、茶色の髪でそこそこガッシリとした体つきの父親と、僕と同じ黒い髪をした母親に、父親によく似た茶髪で、年の離れた兄が一人、それから薄い紫色の髪と紅い瞳をした同い年の妹がいる、名前はイリア、妹の容姿はものすごい美少女で、まだ整っていない幼さのある顔だちがまた愛くるしい。

そして家族関係は・・・・最低だ、最『悪』ではなく最『低』、まず、兄はもう家を出ているが、三日に一回家に戻ってきて、金を持って次の日には出で行く。金は、生前祖父が貯めたものだ。次に両親だが、兄と同じく働きもせずに祖父が残した貯金を使って、毎日遊んで暮している。では、掃除や食事の支度などの家事は誰がやっているのか?すべて妹にやらせている、さらに、妹は虐待されている。父親や兄には顔を見るたびに最低一発は殴られ、蹴られている。母親や昔の僕は、殴ったりはしていないが、妹のことを無視していて食事や衣服もまともなものを与えていない。妹は二年前までは顔に笑顔を張り付けていたが、今ではそれさえ無くなり完全な無表情だ。まだ性的暴行は与えられていないが、それも時間の問題だろう。そんなことになっているのに、周りにいる村人たちは止めるどころか、一緒になって無視をしている、数人は暴力まで振るう始末だ。

その理由は、妹の髪の色だ、この村で紫は不吉な色とされていて、その髪を持って生まれたのが妹だ。実にくだらない理由だ。

僕は妹を守ろうと思う、目標は妹を連れて村から出ることだ、ただ出ていくだけなら簡単だろう、だが、村から出たあと妹を守って養わなければいけない、そのためには金が要るし、力がいる、金は祖父が残したものを使えばいい、ここで邪魔になるのが両親と兄だ、自分たちの生活資金が持っていかれるんだから当然ほおってはおかないだろう、つまり最低でも大人三人をどうにかする力が必要だ、最悪この村を殺すだけの力が必要になる。幸い僕にはチートがあるから、比較的早く力をつけられるだろう、それまでは妹を守りながら修業をしなけれはならない。守るといっても敵は村全体だから表立っては動けない、だからさりげなく庇いつつ、裏で思い切り甘やかす。

そのためには、なるべく妹と一緒に居なくてはいけないし、修行をする場所も見つけなくてはいけない。


「よっと」


僕は足に力を入れて立ち上がると、固まった体をほぐし、部屋を出た。



***************************************


「お前は生きているだけで迷惑なんだよ!!」


妹の部屋の前に着たとたん罵声が僕の耳を叩く。それと一緒に何かを殴る音が耳に入る。

しばらく待つと殴る音が止み、足音が扉の方に近づいてくる。僕が降りてきた階段の横に隠れると、扉が開き中から父親が出てきた。父親は玄関の方へ歩いて行く、いつも昼ごろ出て行って夕方に帰ってくるのだ、大かた酒でも飲みにいっているのだろう。

父親の姿が見えなくなってから、妹の部屋の前まで行く、中に入ると妹がうずくまっていた。僕は扉をそっと閉め、妹の前まで行く、僕の姿を見た妹の体が一瞬ビクッと震える。


「イリア、大丈夫かい?」


なるべく優しい声で言ったつもりだが、妹は蹲ったままで、顔を上げないし返事もしない。当然だろう、妹にとって僕はまだ敵なのだから。

仕方がない、僕は少ししゃがんで、妹を包み込むように抱擁する。


「何するの?兄さん」


妹は顔を上げると、感情のこもらない平坦な声で僕に聞いてくる。


「大丈夫、何もしない、僕はイリアの味方だよ?」


「嘘、私に味方なんていない」


囁くように言う僕の言葉を、妹は否定する。


「今は、信じてもらえなくてもいい」


最初から信じてもらえるとは思ってない、今は僕の気持と立ち位置を明確に示すことが大切だ。


「でも忘れないでね?僕だけは、君の味方だから」


そう言って妹を離すと、僕は修行する場所を探すため、妹の部屋を出た。



*********************************


イリアside


皆は私を嫌っている。父さんも、母さんも、兄さんたちや村の皆も、紫色の髪は悪いことを引き寄せるから、私は生きてるだけで迷惑だって。

今日、父さんに殴られたあと、シン兄さんが部屋にきた。きっとシン兄さんも私に非道ことをするようになるんだ。

でも、兄さんは何もしないと言う、それに私の味方だって言って私を優しく抱きしめた。

わからない、何でそんなことするんだろう。私には、味方なんていないはずのに・・・・



**************************************


僕が異世界に転生してから三カ月がたった。

僕は確実に力をつけている。具体的には、本気で拳を振ると拳圧で木を抉れたり、無詠唱の魔法で森の一部を灰にできたりする。

それと、僕の能力についても全て把握できた。

僕の能力は、この世界でスキルと言うものに入るらしく、僕が神様から貰った能力は、常時発動型スキルに大別される。

たとえば、武の神タイラルドに貰った武力の才能は、


【絶対武力】 効果:武力における凄まじい成長速度と、生物としての限界を突きぬけてなお、止まらない成長

 取得条件:武の神に愛されること 


となる、今ではワンパンで大木を倒せます、ハイ。

次に魔の神ローデルに貰った魔の才能だが、


【絶対魔力】 効果:無限の魔力と魔の知識 取得条件:魔の神に愛されること


はっきり言って、これが一番チートの気がする。この世界の知識では、魔法には属性があり誰にでも適性のある無属性と、火・水・風・土の四つの基本属性に、派生属性の炎・氷・雷・岩、その上に上位属性の光・闇があり、更にその上に時間・空間と言う二つの最上位属性がある。殆どの人間は、一つの属性しか持っておらず、その属性しか使えない。属性の希少度は、基本、派生、上位、最上位の順に高く、また、ここ七百年ほどは、最上位の属性を持つ者はエルフなどの亜人族を含めて存在しておらず、文献に残っているだけの伝説の存在になっている。また、魔法は、難易度と消費魔力量ごとに、下級・中級・上級と別れていて、上級の上に特級・超級・神級があり、上級の魔法を五発撃てれば一流の魔術師として認められる。特に、特級以上の魔法は文献が少なく、また、魔力の消費が激しいため、使える者はほとんどいない。だが、僕の場合は【絶対魔力】と、もう一つの能力のおかげで『全部』の魔法が使える。しかも高等技術である無詠症で。

次に美の神に貰ったものだが・・・


【絶対美】 効果:完璧な美しさを保ち続ける 取得条件:美の神に愛されること


・・・うん、次に行こう。


【絶対正義】 効果:自らの正義を神は肯定する 取得条件:善と正義の神に愛されること


【絶対悪】 効果:自らの悪を神は肯定する 取得条件:悪と不義の神に愛されること


はっきり言ってこの二つは訳が分からない、神が肯定したからなんだと言うのか、この世の全てが否定しようが、僕は僕の『美学』を曲げるつもりは毛頭ない。

まあそれはともかく、以上が神様からもらったスキルなんだけどこれ以外にも僕が前世で満たした条件によって手に入れたスキルがある、その中でも常時発動型のこれ、


異常識者(トリックスター)】 効果:常識を破壊し、この世の理を無視する 取得条件:理に逆らう


転生が取得条件を満たしたんだろうけど、実はこれ、【絶対魔力】と同じくらいヤバイ。僕が全ての魔法を使えるのは、このスキルの効果で属性を無視してるからだし、何よりも、自分の考えた魔法を作れると言うふざけたことができる。ほかのスキルもあるにはあるのだが、それは、妹を村から連れ出した後にしよう。

その妹だが、最初のころはろくに口もきいてくれなかったのだが、三か月間優しく接し、事あるごとに妹を甘やかし続けた甲斐あって、最近では少しだけだが、僕に我が儘を言うようになった。

もう、そろそろいいだろう。いよいよ今日、妹を村から連れ出す、行きがけの駄賃に村人を皆殺しにでもしようか・・・


「兄さん、家事終わったから行こ」


おっと、妹のことを考えていたら、本人が来た。

今日は、妹と森の中を流れている川に行く約束をしている。心なしか妹の声が少し急かす様に聞こえる。


「それじゃあ、行こうか?」


妹は黙って首を縦に振る。まだ無口なところは変わっていないけど、声に少しだけ感情が含まれるようになっている。

僕達は玄関を出るとすぐ森に向かう。


**************************************


森を流れている川は、腰の下くらいまで水が届くが、すごく澄んでいて、底にある石の数を数える事もできる。

その川の中心に一つだけある大きな岩の上に、僕は妹を抱きかかえるようにして座っている。


「髪を洗ってあげようか?」


妹の髪は長い間洗っていないせいか、少しべたついている。


「いいの?」


「ああ、君は可愛いから、髪も綺麗な方がいい」


妹は、少し頬を赤く染めるとコクリと頷いた。

僕は魔法を使って、川の水の一部を妹の頭の高さまで持ち上げる。僕が妹の前で魔法を使うのは初めてなので、妹の普段殆ど動かない表情が驚きに染まっている。


「大丈夫、これは水を操る下級魔法、君に危害は加えない」


水属性下級魔法【ウォーターマネジメント】水流を操る魔法だ。これで操った水流で、妹の髪をすくうように洗う。

一通り汚れが落ちると、僕は本題を切り出す。


「ねえ、イリア、僕は、君を連れて村を出ようと思うんだ」


「え?」


妹が疑問の声を上げる。僕は妹の髪を洗っていた手を止めて、妹を包み込むように優しく抱擁し、口元を妹の耳に近付けて囁くように言葉を紡ぐ。


「ずっと考えてたんだ、ここにいたら、君はずっと虐められる、だから僕が君を守れるまで強くなったら、君を連れてこの村を出よおって」


妹は何も言わずに、僕の言葉を聞いている。


「大丈夫、村を出たあと、君を守れるだけの力が僕にはある、僕がいつも一緒にいてあげる、だから、君は何も心配しなくていい」


「・・・んで?」


「ん?」


「何で兄さんは、私に優しくしてくれるの?兄さんは私より母さんや父さんの方が大切じゃないの?」


その言葉は不安の表れ、妹にとって優しくしてくれる存在は僕だけ、だから、僕が両親側に付いたら、また自分は一人になってしまう、そんな感情のこもった妹の言葉に対して、僕は甘い言葉を返す。


「言ったでしょ?僕は君の味方だ、君に比べたら、両親や他の村人なんて何の価値もない」


「私の紫の髪は、悪いことを呼び寄せるのに?」


自分を否定するような言葉を発する妹に対して、僕は妹を抱く力を少しだけ強め、口を開く、


「そんなの関係ないさ、君が悪いことを引き寄せるのなら、その全てから君を守ってあげる、君がどんな事をしても、世界で僕だけは君を認めてあげる、愛してあげる。今みたいに優しく抱きしめてあげるし、甘い言葉も沢山かけてあげる」


妹が縋るような視線を向けてくる、そんな姿がよりいっそ愛らしくて、少しだけ意地悪をしたくなる。


「だけどもちろん、君は僕の提案を断ってもいい」


そう言って、僕は体を妹から離す。妹は僕が体を離した瞬間「あっ・・」と、小さく声を零した。


「そうすれば僕は、一人で村を出て行くから、君とはもう会えなくなるね?」


それは、言い換えれば、僕と来ないのならもう君には優しくしない、と言う脅しの言葉、優しくされることを知った妹が、決して受け入れることのできない条件。


「い、嫌、私を一人にしないで・・・私は、兄さんがいれば・・・それでいい、ひぐっ・・・だから、私を見捨てないで、お願い・・・・・」


目に涙をため、えずく様に喋る妹に対して僕は一言、


「大丈夫」


それだけ言うと、再び妹を抱き寄せる、


「君が僕と来てくれるなら、僕は君を一人にしない、我が儘だって言っていい、何も心配はいらない、僕は、世界で、ただ僕だけは君の味方だから」


そう言って頭を撫でてやると、妹は目を細めて気持ち良さそうにしていた。



*************************************


イリスside


シン兄さんは本当に優しくしてくれる。父さんやシルグ兄さんたちに殴られそううになるとき、それとなく私を庇ってくれる。夜になるとこっそり部屋にきて一緒にいてくれるし、家事も手伝ってくれる。

シン兄さんがそばにいると、何だか暖かくなって、もっとそばにいて欲しい、もっと私に触って欲しい、シン兄さんがそばにいてくれるなら、もう他の物は要らない。


今日は、シン兄さんと森に行く日だ、森に着くと兄さんは魔法を使って髪を洗ってくれた、私のこと可愛いって言ってくれて嬉しかった。兄さんが魔法をつかえて驚いたけど、兄さんは優しく説明してくれた。


「ねえ、君、僕は強くなった、だからやっと、君を連れて村を出ることができる」


髪を洗ってもらってると、兄さんが突然そんなことを言い出した。


「え?」


「ずっと考えてたんだ、ここにいたら、君はずっと虐められる、だから僕が君を守れるまで強くなったら、君を連れてこの村を出よおって」


思わず出た疑問の言葉に兄さんが答える。そんな兄さんに前から気になってたけど、答えを聞くのが怖くて、聞けなかったことを聞いた。


「・・・んで?」


「え?」


「何で兄さんは私に優しくしてくれるの?兄さんは私より母さんや父さんの方が大切じゃないの?」


「言ったでしょ?僕は君の味方だって、君に比べたら、両親や他の村人なんて何の価値もないよ」


私が声を絞り出して聞いたことに対して、兄さんはそんなふうに答えてくれた。兄さんも、私のことを大切に思ってくれてる、そう思うとすごく嬉しかったけど、


「私の紫の髪は、悪いことを呼び寄せるのに?」


素直に信じられなくて、こんなことを聞いてしまう。


「そんなの関係ないさ、君が悪いことを引き寄せるのなら、その全てから君を守ってあげる、君がどんな事をしても、世界で僕だけは君を認めてあげる、愛してあげる、今みたいに優しく抱きしめてあげるし、甘い言葉も沢山かけてあげる」


兄さんの答えは、すごく優しくて甘い言葉、それが私に向けられてると思うと、嬉しさを通り超えて声が出なかった。

今まで頭の中にあったもやもやが、一瞬で晴れ渡る感覚がして頭が透き通っていく。


「だけどもちろん、君は僕の提案を断ってもいい」


そう言うと、兄さんは私から離れしまった。そのときに漏れてしまった声は、兄さんに聞こえただろうか。


「そうすれば僕は大人しく引き下がるし、もう二度と君に関わりはしない」


その一言は、私の心を一瞬で、後悔と恐怖で塗りつぶした。もう兄さんと一緒いられない、夜も一人で寝なきゃいけないし、優しく抱きしめたり、優しい言葉も言ってもらえない。もっと早く返事をすればよかったのに。そう思うと悲しみが満ちてきて、目に涙が溜まる、


「い、嫌、私を一人にしないで・・・ぇぐっ、私は、兄さんがいれば・・・それでいい、ひぐっ・・・だから、私を見捨てないで、お願い・・・・・」


やっとの思いで絞りだした答えを聞くと、兄さんは、


「大丈夫」


そう言うと、また私の体を包むように抱きしめて、


「君が僕と来てくれるなら、僕は君を一人にしない、我が儘だって言っていい、何も心配はいらない、僕は、世界で僕だけは君の味方だから」


頭を撫でながら、そう言ってくれる。

もう私は、兄さんから離れられない、兄さんがいないと生きていけない。

だから、兄さんに嫌われないように、兄さんに飽きられないようにして、兄さんが私から離れないようにして、ずっと一緒にいてもらう。

その為だったら、私はどんな事でもする。



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