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黒王国物語 第1回目  作者: 朝倉あつき
第5章 戦いの始まり
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第5章 戦いの始まり(1)

 四季折々の村――リーフィ村。

 その地は、天使教の総本山である。かつて、セレナ姫もその妹であるエレン姫も愛した天使教。

「ここに来てしまったかァ……」

 長旅の末、アレック達一行はリーフィ村へ着いたのだ。

 この地に、自分達のボスであるウィルがいるのだ

「ここ、素敵」

 セレナは精一杯、空気を吸ってみせる。この地の雰囲気が、セレナは好きだった

「この地、エレン姫、いる?」

「ああ、いるよ。きっと会えるよ」

 セレナがアレックにエレン姫の事を問うと、アレックはさりげなく応じた。






 ウィル、そしてエレン姫がいる場所は、天使教の教会からずっと離れた住宅街だった。

 とても活気が良く、村の人達は皆笑顔である。

 それが、何も知らない笑顔なのか、偽りの笑顔なのか、アレック達は判断する事も無かった。

「ここだね。ウィル様がいる場所は……」

 アレックはそう言い、扉を叩いた。すると、むすっとした少年が出てきたのだ。

「あんたは誰だ? ん……、セレナ、姫……?」

「あなた、誰?」

「俺はフェイ・ローレンスだ。何故、セレナ姫がいるんだ? セレナ姫は亡くなったのでは……」

「あー、これには深い事情があるんだよ。ね、ニコラ君?」

「俺に聞くな。ウィル様に会いに来た」

 ニコラがウィルに会いに来た事を告げると、フェイはアレック達を通した。






「長旅、ご苦労でした。しかしまさか、エルマさんもいらっしゃるとは思いはしませんでしたね」

「ウィル殿、これはどういう意味なんだな? 仮初めの姫をニコラ殿に作らせて。こんな事しても――」

 無駄なだけなのに、とエルマは言えなかった。

「セレナ姫の存在は国外には公にされてませんでした。それは王様が外で作った子だからです」

「そ、そんな重要機密を言われてもなァ……、なァ、アレック?」

「俺は知ってたよ」

「なんで教えてくれねェんだよ、アレック、薄情過ぎるだろォ……」

「そう易々と、重要機密を話すほど、俺は口は軽くないからね」

 アレックがそう言うや、ニコラは機嫌の悪そうな顔で口を噤んだ。

「仮初めの姫の存在のおかげで、エレン姫の無事が確保出来ました。アレックさん、ニコラさん、本当に感謝しています」

「ウィル様、それで、今の情勢はどんな感じなの?」

 そう、アレックが告げると、ウィルは気難しい顔を更に深め、告げる。

 情勢は悪化しているという。

 ノールオリゾン国は、ツツジの里も、グローヴァー家の領地、ソレイユ家の領地を飲み込み、支配している。

 亡国のシュヴァルツ王国と比べ、ノールオリゾン国は資源が豊富にある。それに肖ろうと、思っているのだろう。

 更に、このリーフィ村まで、手を伸ばそうとしているのだ。

「で、どうすんだァ? このリーフィ村に暮らしてれば、エレン姫だって危ねェだろうに」

「このリーフィ村の近くにあるツツジの里を襲撃する予定です。今、セシル騎士団長に、兵を集めてもらっています」

 襲撃し、ツツジの里をシュヴァルツ王国が支配する。そうして、情勢を盛り返すしかない。

「貴方達には、その戦力になってもらいたいのです。よろしいでしょうか?」

 セレナ姫、という仮初めの存在を利用するしかない。

 これはエレン姫の無事を確保するためには、重要なのだ。

「しっかしなァ、このセレナ姫はよォ、結構自信作なんだァ……、変なことに利用されねェか?」

「ニコラ君、思ったことを言い過ぎ。ウィル様、俺達の事利用しても良いですよ。てか、使っちゃって」

「俺はァ、反対なんだがなァ……、まあ、ウィル様には仕事もらった身だしな……」

 うやむやにニコラは返事をしているが、仮初めの人形――セレナ姫を象徴とする事に二人は同意したようだ。

「私、会いたい、人、いる……」

「あ、セレナちゃん。どうしたの?」

「エレン姫、会いたい」

「エレン姫は自室にいらっしゃいますよ」

「会いたい、会いたい!」

 そう言い、セレナはエレンを探し始めた。


 エレンはフェイと共に、国を治める為の勉強をしていた。

「エレン姫!」

「……セレナ、お姉様……!」

 エレンはセレナの顔を見るや、勉強を止め、セレナに抱きついた。

「セレナお姉様、会いたかったです。会いたかったです!」

 エレンは亡くなったと聞かされていたセレナの存在を確かめるや、涙を零した。

「おい、アレック・リトナー、ニコラ・オルセン……、これはどういう意味だ。なんで亡くなったセレナ姫がいるんだ?」

「全ては、ウィル様のご命令だよ。フェイ様?」

「兄上、が?」

 一体、兄は何を考えているのだろうか。

 自分には言えない事をしているのではないだろうか。

 一つだけ、確かな物がある。

 それは、兄は全てはエレン、シュヴァルツ王国――そして、自分のために行っていると言うことだ。

「これで、良い、なんだな……。こう選択してしまったのなら」

 エレンとセレナ。

 真実の姫と、仮初めの姫が出会った――物語は加速する。

 その予言が、エルマの脳裏に刻まれたのだった。

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