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黒王国物語 第1回目  作者: 朝倉あつき
第5章 戦いの始まり
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第5章 戦いの始まり(2)

 ノールオリゾン国城。

 ある一室で、会談が行われていた。

「ルイス様、エイミー様、わざわざ遠方からいらっしゃり、ご苦労様だ」

 国王――フェルナンドは、謁見しに来た二人の貴族にそう告げる。

「フェルナンド様、噂に寄りますと、シュヴァルツ王国が奇襲をかけようとしているみたいだ」

 ルイスは部下達に纏めさせた報告書をフェルナンドに手渡した。

 さらに、ルイス似続いてエイミーが告ぐ。

「ツツジの里を守るために、私達も、兵を出す所存ですわ」

「そうしてくれると有り難い。あのツツジの里の特産品は、とても貴重でね。ツツジの里を手放したくないのだよ」

 ツツジの里から採れる金はとても貴重な物。

 まさに、それを手に入れれば、この国の覇権を握ったも同然なのだ。

 だからこそ、ツツジの里を手に入れるのはとても大事で、ツツジの里の機嫌を取るのは大変なのだ。

 会談が終わり、ルイスとエイミーは、フェルナンドに今ノールオリゾン国城で捕まっているイオン、ノエルの二人に会うことを許された。

「イオン、すごく、痩せているが……、ちゃんと食っているか?」

 牢獄で監禁されていたイオンは、随分と痩せていた。

 ちゃんとイオンは、一日三食食べているのだろうか。

「ルイス様、貴方様に合わせる顔はありません」

「そんなことを言うな。お前が悪い訳じゃない。全てはあの……」

 ダニエル・フォン・マクスウェルが悪いのだから。

 そう、ルイスはイオンに言い聞かせた。

「お前を解放して欲しいと、フェルナンド様に献金を渡すつもりだ。もう少ししたら、お前はここから出られるよ。そしたら、もう一度俺と一緒にグローヴァー家を盛り立てて行こう」

「貴方様は優しいです。その優しさが、僕にとってはとても残酷です」

 ルイスの為でもあったが、自分は、金に目が眩んで、主人であるルイスの父親を殺したのだ。

 イオンは帰る場所はないと思っていた。

「戻って、来てくれるよな?」

「…………、それは例え貴方様の命令でも許されないでしょう」

「嫌でも、戻らせるから。良いな」

 それだけ言うと、ルイスはイオンの元から去った。

 その様を見て、自分はとんでもない人を裏切ってしまった――後悔しか出来なかった。






 別の檻で、エイミーとノエルは会っていた。

 エイミーにとって、ノエルは姉を殺した天敵である。

 何故、エイミーが自分に会おうとするのか、ノエルは不思議でやれなかった。

「エイミー嬢、ローゼを殺した事、今でも申し訳ないと思っている」

 オリジン――ダニエルに命じられたとはいえ、権力欲しさに欲に駆られてしまったのだ。

「ノエル、私は貴方を憎んでいます。殺したいぐらい。でもそれ以上に、マクスウェル家のやり方が許せないのですわ」

 そう、一息吐き、エイミーは告げる。

「私に協力するのであれば、貴方をここから出します」

「どうするつもりですか? ダニエル様を毒殺でも、企てるつもりか?」

 ノエルの言う事は図星だった。

 やはり、ノエルの頭は冴えている――エイミーは、そう察した。

「ええ。そうですわ。だから、貴方を出しますわ。一緒に、ノールオリゾン国の繁栄を喜びますわよ」

「ソレイユ家に勤めていた身――、それが領主である貴方様の言う事なら、それに従うまでです」

「良い返事ですこと。私は偽りは言いませんわ。時期に貴方は釈放されますわ」

 権力が物を言うのだ。

 ノールオリゾン国の公爵になったエイミーにとって、一人罪人を釈放するなど容易い事なのだ。






 こうして、イオン・カルロスそして、ノエル・クレイは釈放された。

 ルイス、そしてエイミーの手によって――これらの運命が、また歯車を逆戻しさせる事になるとは、今はまだ誰も知らない。






 それと同じ頃、ツツジの里で、一種の拷問が行われていた。

「ジュリアさん、そろそろ吐いて欲しいのですけども」

 真理奈はそう言い、ジュリアに水を浴びせる。

 ここ数日、厳しい拷問が真理奈姫の命によって行われている。

「何を吐けと? 私は情報屋、偽りなど吐けないわ」

「そうですか。ならば、もっと酷い方法で吐かせる事しかありませんね」

 真理奈はため息を吐いた。

 エルマの言葉は偽りである――そう告げれば良いのに、ジュリアは意外と本心を曲げない頑固者である。






「カイ様、ツツジの里はどうなってしまわれるのでしょう?」

「……真理奈様、不安ですか。我々は強い者に付く、それだけの事ですよ」

「そうですけど、シュヴァルツ王国には良くしてもらった身です。シュヴァルツ王国への忠義は失われたのでしょうか?」

 真理奈は兄の行動を疑問に思った。

 忠義を裏切る事をするのは、よっぽど、ノールオリゾン国側の方が理に適っているのだろう。

「それより、香月七瀬の処遇はどうしましょう?」

「永久追放で良いんじゃ無いでしょうか? まあ、それは玲様、アニタ様が決める事ですよ」

 カイはそっと空を見上げる。

 この空はとてもとても、闇の中で澄んでいる。

「我々は我々のすべき事をすべきです。それより、真理奈姫。お耳に入れたい事が。シュヴァルツ王国側の動きですが――」

 カイは耳元で告げるや、真理奈の顔が顰められる。

 襲撃――また、ツツジが燃えるのだろうか。幼い頃の思い出が、真理奈の脳裏に焼き付いた。

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