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第232夜 逃げんな!

 白き炎で焼き尽くされた黒蜘蛛タランチュラを前にして、政宗、紫鳳(しほう)は眼を丸くしていた。

 ………………。

言葉を発する事もなく目の前で死滅するその光景をただ……、見つめていたのだ。

 ギュッ……と、、、紫鳳は右手を握り締める。

 (想定外どころではない。これは………確実に俺達も………。)

銀色の眼はさっきから動揺なのか揺らぎが絶えず、、、目の前の光景から目を反らす事も出来ず、、、己の末路を悟りつつも鼓舞する。

 (いや。奴はまだ覚醒途中。ならば、力を使えばそれだけ酷使する。つまり……弱る。ならば底まで力を使わせ弱体化させた所で殺す。)

 ちら。

と、紫鳳は少し離れた所で、チッ。と、悔しそうに舌打ちする政宗を見据えた。

 (政宗はバカだが強い。ならば、コイツを使って弱体化させそこを俺が突く。)

 紫鳳はそう思いつつ鎮音(しずね)を見た。

 (鎮音の立回りは厄介だ、さっきからずっと退魔師のサポートをしている。力は発動してないが、彼奴に力を伝授している。それも伴い“玖硫葉霧(くりゅうはぎり)”の力は膨大している。正に師。)

 銀色の眼は鎮音を捕えた。

 (殺すしかないか。)

と、、、紫鳳が思った時だった。

 たんっ、、、。

目の前に蒼い鬼火纏った楓が着地したのだった。

 !?

紫鳳が驚き目を見開くと、夜叉丸を右手に携えた楓は言う。

 「てめぇが“悪”なのは解ってんだよ、なんで……ブっ殺す!」

楓は紫鳳を睨みつけ両手で夜叉丸を握り構えた。

 「…………!」

くっ。と、、、紫鳳はその威圧感に表情を歪ませる。更に、彼女の身体は蒼い鬼火が豪炎の如く纏う。離れていても熱く焼かれる様な熱を感じる程だった。

 (只の鬼娘だと思ってたが………やはり“元”は修羅姫。“妖魂(ようこん)”の圧が強い……っ。)

 “妖魂”とはあやかしの力のパラメーターであり、彼等はそれで己と他との力量を見極める。

 この時、紫鳳は明らかに自身より楓の妖魂の力が強いと知った。それは彼女が戦闘の中で開花するからである。解り易く能ある鷹は……なのである。

 「で?てめぇは何がしてぇの?葉霧を殺してーの?それとも、現世を支配してーの?」

 蒼い鬼火を全身に纏いながら……楓は、紫鳳に言う。

 「……………。」

紫鳳はそんな楓を見据えた。が、、、その顳かみにはシワが寄る。

 (くそっ………。これはヤバい。玖硫葉霧も、鬼娘も想定外!ココは退くしかないっ!)

 思いつつも、、、彼は涼し気な顔で言った。

 「いや?対した念はない、只……見てみたかっただけだよ。」

紫鳳は言うと、ポゥ。と、、、右手に紫色の光を放つ。

 !

楓は警戒し、ギュッと両手で夜叉丸を握り締めた。

 紫鳳は怒鳴る。

 「政宗!」

とーー。

 「!?」

政宗はそれを聞き、少し離れた場所にいたが、即座にたんっ!と、地を蹴り紫鳳の元に跳び上がり向かった。

 「!」

楓は警戒中であり目の前に2人並ぶと、ゴォォォッと蒼い鬼火を更に燃やしながら睨みつけた。

 「なんだ?2人揃ってブっ殺されてーの?」

ふふっ。と、政宗を隣に従えながら紫の光を右手に放つ紫鳳は笑う。

 「いえ?ここまで。ってことで。」

 「は??」

楓が答えると、紫鳳は言う。

 「“紫煙”!」

ブワァァ!

 と、、、彼の右手から紫色の煙が放たれ紫鳳、政宗の身体を覆う。それは正に煙を纏うの如くであり姿そのものを煙が包み込んだのだ。

 「逃げんなっ!!」

楓は咄嗟でありーー、鬼火纏う夜叉丸を振り降ろした。

 「蒼炎刃!!」

蒼い鬼火と剣刃が煙纏う2人の影に向かい飛ぶが、、、それは空を斬ってしまった。

 「!」

楓が斬撃を放った時にはもう2人は正に煙に巻かれて消えてしまっていたのだ。

 楓の斬撃は彼等が消えた残像の如く少しだけ残った煙を断ち切っただけ。だったのだ。

 「……………クソがっ!!」

楓は、、、悔しさの余りに地面に夜叉丸の刃を振り降ろしていた。地面にドカっ!と、刃は突き刺さる。

 目の前に居た紫鳳、政宗は消えて………淀みの地では、噴炎が上がる。まるでそれは楓の怒りを表すかの様であった。 

 そして………楓の蒼い眼は炎の様に光を放つのであった。         

  

         

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