水と空気
違う違う。そうじゃなくて、そ~じゃなくて。
お前、夏休み中ずっとオレと一緒におられなさるおつもりか。
いや、昔からそうしてたからそれが普通なのか。
とにかく、明日は休みにしようかと思ってるから勉強は別の日にしたい。
「明日は一日中寝るから邪魔」
「…何が言いたいかわかったけど、ダメならもうすこしマトモな断り方にしてほしかったから絶対きてやる」
ほのかに立ち上る決意のオーラ。世紀末の亡者の如く粘着質ないやらしい笑顔。
「…今日は寝かせないぜ」
今からっすか?!
ボフ
「…げふ」
手裏剣のように回転しながら飛んできたクッションを首に受け海人が仰け反る
「奏さん」
「任せてください」
そう言いながら立ち上がる二人の戦士。
「奏さんの貞操と」
「カナ兄さんの安眠は」
「「私たちが守ります」」
--びしぃっ!! キラキラ
ユニゾンからの海兵ムーンな決めポーズ。
キラキラエフェクト…ではなくテカテカした脂っこいエフェクト発生?!
「美幸、部屋から脂取り紙持ってきてあげて」
「…え」
「そんな」
「…んぐ了解」
愕然とする二人をみるとまだまだ子供だなと思えるね。てか、美幸の奴普通にポテチ食べてたけど少しくらいきにせんと…。
ニキビ出来てからじゃ遅い。
シミそばかすくらいならまだいい。ニキビがあまりに酷くなると、二十歳になる頃には顔ボツボツになっちゃうらしいからな。
カップメンとポテチの脂質は食べ過ぎるとよくないし、オレはあんまり食べさせたくない。
食生活で脂っこいのを避けるだけで相当に吹き出物の出現率が軽減されるわけよ。
化粧水とか使っての “お肌のメンテ”なんて絶対面倒くさい。オレの都合に、皆を巻き込んでいるとも言う。
少なくともオレの作った食事でニキビっ面にさせるのはオレの沽券にかかわる。
そもそも海人とツレニキビってのは割に合わん。
「もって参りました」
「くるしぅない。ちこうよれ」
「「ははぁ~」」
受け取った脂取り紙を手に二人を呼ぶ。
三崎ちゃんが、海人とオレをみた後、恥ずかしさからか「くっ、コロせ…」なんてつぶやいてたのだが、普段から取れたのわざわざ見せに来たりするよな。
まぁ、女の子から女として成長してきた証と言うなら、そこでポテチの大人買いはやめような?
ポテチの“大人買い”は普通の女性はしないだろうよ。
若気の至りでしないぞ。
「ついでだから、海人さんもどうぞ」
「あれ、俺もやるの」
「んじゃ、オレにも頂戴」
「ついでに、パックとってきます」
パック?なんでまた??
そして居間にいる皆で仲良く脂取り。
だが、男子のが脂っこかった事が判明。
「ほっほう?なるほどなるほど…」
「なんで奏が一番多いんだよ」
……恐ろしい位にとれよった。
日常的にメンテしてないからだろうな。
そういや、毎食美味いもん食わせて貰って、昼間は焼きそばフランクフルト。
これで影響無いわけがないと。
「ついでに、かな兄は簡単なタイプのパックもしちゃいましょう」
美幸がてにしたシートをひろげてくるが、反論出来る立場になかった。
ラップみたいな?
そうして、美幸が全員の顔に顔パックを塗りつけたり?張り付けていく。
さらに、女子は互いに落書きをしたものだから、その見た目は一風変わった仮面舞踏会…。 海人は一人歌舞伎のとかに出てきそうな隈取りみたいな線を書かれてる。
なのにオレは肉とだけかかれただけ。書いてくれと頼んだが「恐れ多くてとてもとても」と断られた。
なぜだ。仲間に入れろよ。




