その名はイチル
いつの世も、ローテーションは大事。
なんかもう三日目でバイト終わったら帰る日の昼だ。
焼きそばやいて、フランクフルト焼いて、店番して…。帰ったら宿題開いて、海の遊びへの誘惑を華麗にかわす。
「帰り際にちょっと遊ぶくらいならいいんじゃない?」」
バイト中に海に入る訳には行かないよ。
家に帰ったら真面目に夏休みの宿題に取り組まないとバイトしてる意味なくなる。
缶詰めにならない程度に息抜きするくらいならいいよね。
日焼け止め塗ってるから焼けてもないしなー。
「みんなに内緒でバイトして勉強してって、青春してるって感じでいいよね」
「…リア充は黙ってろ」
コヤツ、少なくとも四件は番号交換したから立派なリア充だ。
オレもスマホ持たされて来てるけど、全く聞かれもしないんだぞ。
「羨ましい上に嫉ましい」
ついつい奥歯で砕いたはずの本音と建て前が零れても許されると思う。
「海人をダシにしたら番号交換とか出来ないかな?」
「それは人として許されないよ」
「チクショウてやんでい」
はづみさんは「私からしたら二人とも真面目過ぎ」と笑ってたけど、初めたばかりで、遊びほうけてたらバイト代貰えなくなりそうだからなんだけど。
けど、入らないですますための言い訳にするにもだんだん苦しくなってきたー!
「何が悲しゅうて海人と二人で砂利浜でキャッキャウフフしなきゃならないねん」
「なぜ関西弁?」
夏の思い出話なら、かわいい女の子と二人で作りたいわ。
「泳ぐだけなのに何をこだわってんだか…」
「思春期なんだよ。自意識過剰ですいませんねっ!?」
「だいたいお前が乳首気にしてパーカー脱ぐなって言うから余計変な感じにされたんだからな」
昼間から如太に脳内変換されてるのが最大の原因だよな。
「俺も思春期だから仕方ないし」
―ああ思春期(発情期)
「せめて、ナイチチならおっぱい星人の守備範囲外だったろうによ」
「おっぱい星人じゃなくて普通だよ」
嘘付け、ライフセーバーさんみて明らかにガッカリしてたろうが。
平均はB、C以上で奴の態度が変わるのは見ててわかるぞ。
いっそ太ってタゲ外してやろうか。 ビア樽とドラム缶なら、過ちも起こるまいよ。
「おっぱいじゃなくて、奏が基準なだけだし」
なお悪い。
「いつも思うが、なんでオレが基準にされるんだよ」
「料理ができて美人でおっぱいがデカい、何よりウマが合う女の子とか漫画の世界だと思わないか?」
「うん、それはそうだが基準にすんなって」
「普段から一緒に居るから、比較対象になっちゃうんだよ。奏を上回ってくる女の子なんているかな」
そりゃ普通にいるだろうよ。普通にな。
「別に難しい話じゃないと思うぜ?」
「??」
「お前が探して告ればいいだけじゃん」
「!?」
「お前の好きなタイプが都合よく向こうからくるのを待ってるだけだって事だ。それなら本気でタイプの女の子を探せばすむだけだし?」
「お前天才か。そうかそうだよな。俺から告れば問題ないのか」
「そうそう。まずは友達からとか言われてもお前が本気なら相手にも伝わるさ」
「その前提はヒドくね?」
「じゃ告白しながら押し倒せば?」
「意外に考え方が外道っ!」
「オレも恋愛未経験だから助言はアテにするなよ?」
押し倒しながら告白とか、ド外道もいいとこだよね。ヤりたいだけに見えるし、相手の告白は信じられない。
―だが。
「女の子と一晩でもイチャイチャできるなら、オレは最悪その方法を使うと決めている!」
女の子とイチャイチャしたい。
「とんだクズ野郎だよ!?」
「まぁ、お前と違って好いてくれる女子がいないからな」
「胸をはるな」
今の話もお前が告りたい相手がいないから全部無駄だしな。
まだ見ぬ嫁か、童貞の妄想は果てしなく無謀。
「大学の人連絡来てる?」
「うん、ちょこちょこ」
「ちゃんと返事してるんだな」
「今度、合コンしようとか来てるよ」
「そっか、頑張れよ」
そうかそうか、肉食の大学生に食われるのが先だったか。
ほ ら れ る な よ 。
さて、夏休みだけど近所の中学生くらいの男子がチラホラ。
妹がネットで頼んだ上着を着てるせいか“お姉さんどこの人”と聞いてくる者がいた。
―誰がお姉さんだ。
いや、もしかしたらオネェさんの聞き間違いか?チクショウ。
ロン毛の兄ちゃんじゃなくてオネェに見られてちょっとショック。女子はみんな海人に注文し(話しかけ)に行くし…。
人間顔かっ!!
「焼きそば大盛でお願いします」
「いらっしゃいませ」
新たな客は鈴木市留、お前はむしろ海人に頼め。
二日目は来なかったからからもう来ないと思ったけど三日目にきたか。
「はいおまちどお」
「ありがとう」
皿を置いて鉄板の所に戻り、焦げを落とす。
海人いつの間にかおばちゃんに捕まってるが、同じ学校でも面識ないと話しかけることなんかないよなぁ。
奏は男同士のつもりだが…




