視線がイタい
夏。
ギラギラの太陽に胸を踊らせ砂を蹴る足に力が籠もる。
残念ながらここは砂利浜だ。ヲトメが裸足であるけばケガするぜ?
「あんまり人いないね」
「平日の午前中は少ないらしいけど」
閑散としたと言うのも憚られる海水浴場。
地元民か家族連れくらいしかこないとは聞いていたが想像以上。
すぐ近くの河口は小さい船が沢山繋がれていた。漁船はないが民宿が釣り船をだしていて、沖にいくと沢山魚が釣れるらしい。
基本的にバイトは平日。
家族連れも少なければ人もいない。
テトラポットから釣りをしようと泳いで渡る猛者が監視員から注意されるくらいか。
大学生なのかボランティアのライフセーバーがサーフボード持って歩いてる後ろを幼児が不思議そうに眺めている。
ウエットスーツってダボついて見えるのに、パッツンパッツンなんだね。いや、鮫肌スーツなん?
遠目じゃ良くわからない。
昼時、家でもつけないエプロンをパーカーの上に着け、近所から歩いてくるオジサンオバサンのためにひたすら焼きそばを焼く。
海人は、トウモロコシとかき氷。
海人が近所の小学生女子から注目を浴びて困っている。
そして、女の子による大岡越前を「バイト中だから」と断る海人。
そして、離れてから突然の修羅場。
懐かしい。昔よく見た光景だが「お兄さ…彼女さん?」同じ子達が、帰り際にオレに尋ねてきたのが不思議でたまらない。
海人に何を吹き込まれた。
てか、海の家でアルバイトと言うより、出店でアルバイトのが正しいのか?
昼時は、それらしく忙しいけど、水着ギャルとかみたいな“海の家”らしさがない。
サンダル履いてエプロン付けたオバサンらがテーブル占領してるくらいだしな!?
しかも、海人とバイト代折半みたいな内容になったし。
「奏ちゃんオツかれさん」
店のロゴの入った長袖に短パンの従兄になる兄さんが、出前から帰ってきた。
確かに海の家ってラーメンあるけど出前もあるの初めて見た。食堂だかららしいけど、もうこれ海の家じゃなくて飲食店アルバイトだよね?
素人に焼きそば作らせて、出前に行くとか店の信用落ちないか心配ですが大丈夫なんだろうか。
「時間的にもう一区切りだから頑張って」
ポンポンと頭を叩いて歩き去る。
「海人くん、トウモロコシ火止めていいよ」
「え?」
「いや、売れにくいけど雰囲気出ないから焼いてるだけだから」
「「ええっ!?」」
幸村さん曰わく、近所の客は砂だらけの焼きトウモロコシなんざかわないとよ。
遠方からくる家族連れ(幼児)の思い出作りには必須アイテムだから炭をトロ火にして温める程度に焼いてるそうだ。
「今日は風つよい時あるしから砂が結構ね。食べたかったら食べてもいいよ」
勿体ないと思い口にしたがひどいもんだった。
噛めば噛むほど砂利が出る。
迷惑な客に売る事はあるが、あくまでデモンストレーション用で、客に出すのは冷蔵庫から出して焼きたてを渡すんだってさ。
どおりで、オレらだけの時には子供含めて誰も買おうとしない訳だ。暗黙の了解なんすね。焼きモロコシどうとか女の子に聞いたら、とてつもなく嫌そうな顔して断られた理由がわかったわ。
「先に教えて欲しかった」
海人は「そうか、それであの子達ケンカになったのか…」と呟いている。自腹切って焼きモロコシ渡した女の子達が、時間差で修羅場に入るわけだ。
知らぬ事とは言え、エグい自腹を切ってしまったな海人よ。
人の少ない海水浴。海の家の、作り置きトウモロコシやばいな。
小さな女の子露骨に顔に出すから心にくる。
もうやらない。
そういや、トウモロコシ進めた女の子達、海人に話かけた女の子ばっか。
誤解はオレがさせたのか?
トウモロコシ怖い。
かみ砕いたトウモロコシを口からだして捨てる。
「砂だらけで飲み込みたくない」
「もう遅いよ」
海人スゲェ半分くらい食べてある。
「無理すると腹壊すからやめとけ」
揚げ句に、幸村さんがゴミ箱を近くに持ってきてくれる始末。
迷わず捨てる。海人も諦めたらしい。
―この後スタッフが美味しくいただきました。
…は、流石に無理があるか、オレらスタッフだった。
浜の遠足お弁当悲惨みたいな?
寿司を出す海の家も、ネタの下に上質なジャリ使ってるって噂だぜ?




