1 死んだはずじゃ……?
「聞いてますの? リナーア嬢!!」
知らない怒鳴り声に、意識が霧の中から引っ張られたように上昇した。
「へっ? なにが?」
「言い逃れようとしても無駄ですわよ!!」
誰かが何かを言うけど、全然頭に入ってこない。
「え? わたし、死んだんじゃあ……」
なんでこんなところに?
しかも、いつの間にか着替えたのか、服がドレス……
いや、相手もドレス。
混乱している頭の端に、視界に映る情報を分析する。
「病院って仮装パーティーやるんだ……」
(推しにしか興味がなかったから、知らなかった……)
じゃあ、相手もどこか悪いのかな?
しかし、そんなことよりも、私はこれでもトラックに引かれたから、できれば寝てたいんだけど……。
頭を傾げながら、相手を観察する。
(う、わぁ……美人……)
長い睫毛に通った鼻筋……でも、なんだか既視感が……あるような……ないような……。
う〜〜ん。何だったけな……?
ぶっちゃけ、違和感は何となくわかるんだよなぁ……。
毎日見ていた、推しに似ているから……。
あっ、これ【私を暗闇から救い出して】略して《くらすく》の推しカプを描いている作者さんの絵柄に似ているんだ!! いま気づいた。
頭の中のもやもやがわかってすっきりした。
推しを生み出してくれた“えだまめ”先生は、本当に神!!
推しに意識を向けすぎて、すぐに“えだまめ”先生の絵柄ってことにピンとしなかったんだよな〜
「もうやめてくださいっ!!」
「うぇ?」
(なに今のこえ!! めっちゃ可愛いんだけど!! 待って、《くらすく》のヒロイン役の声やってほしい!! 一緒に会社まで行って、編集者さんと“えだまめ”先生に伝えたい!! 会ったことないけど、本当に一瞬だけお邪魔して、話してほしい!! マジで想像してたのと一緒!!)
その声に惹かれるようにして、声の主を見る。
(!!!???)
『ヒロイン』???!!!!
まってまって、落ち着こう。よく似ているだけの人かもしれない。
そんな考えに至った私は『ヒロイン』を凝視する。
いや、どう見ても『ヒロイン』だ!
私が推しを間違うはずがない。これで間違っていたら、責任持って死ねるほど。
もう一回死んでいるけれど。
「おい、貴様。何をそんなにじろじろ見ているんだ」
(え!! こちらも想像通りなんですけど!!)
『ヒロイン』に気を取られていたけど、『ヒロイン』の隣にいた人に視線を向ける。
今、声を出した人だ。




