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異世界ざまぁ配信局  作者: 椿乃朱華


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超強い剣士が老人に化けて武闘大会に出ていたら、相手は気づく? 気づかない? ざまぁ編6

 全ての二回戦が終わり、いよいよミダスの三回戦が始まる。

 これが終われば、本日の対戦は終了だ。

 残る試合は明日以降に持ち越される。


 そして今日の最終戦は、ひときわ相性の悪そうな相手だった。


『さぁ、ついにご老人剣士の三回戦目が始まりますよ! 今回の相手は……杖を持っているので、どうやら魔術師のようです。ご老人剣士はどう対処するのか! その手腕に注目です!』


 :おかしいな。老人も杖持ちのはずなんだけど、思いっきり近接戦してるぞ

 :杖の意味が相手とこっちで違うんだが

 :近づければ勝てるかもだけど、足腰弱いムーブできないからそろそろバレそう


『そうですね! 今回の趣旨は、会場の皆さんがご老人剣士の正体に気がつくかどうかなので、そろそろバレてしまうかもしれません! ですが、バレた時の反応を見るのが目的なので、そろそろ本気を出してもらい始める頃ですよ!』


 クレアからミダスに伝達したわけではないが、事前の打ち合わせではそろそろ実力を明かし始める算段だったので、恐らく凄いものが見られるだろう。


 二回戦で見せた仕掛けを大っぴらに使うくらいはするかもしれない。


 いずれにせよ、剣聖であることを匂わせる何かを披露する手筈になっている。


 ここから勝ちを重ねていって、優勝した暁には、その正体を明かす。


 今までの戦いぶりが剣聖であることの証左になるから、偽物だと言われても論破できるだろう。


 そうすれば、王国の悪事が日の元に晒される。


 ひとつ懸念があるとすれば、向こうが卑怯な手を使ってきて、こちらの思惑が崩れないかどうか。


 正体を明かす時の邪魔立ては言わずもがな、国に連なる者たちを優勝させにいくような妨害工作にも言えることだろう。


 今のところは支障が出るほどの妨害ではないが、今後さらに激しくなることが予測される。


 そうした時は、さすがにこちらも対処せねばなるまい。


 ただ、前の戦いでは相手の細工の仕組みに確信を持てなかったので、今回も手助けできるかは微妙なところだ。


 阻止するにしても、戦闘中に干渉を行うとバレる可能性がある。


 なにも手伝えないのは歯がゆいが、少しでも情報を掴んで、決勝までに対策を間に合わせる必要がある。


 そのためには、実況をきちんと見ておかねば。


 そんな意識を持って見ていると、対戦相手がミダスを挑発し始めた。


「まさか相手が老人とはね。これなら大した苦労もせず勝てそうだ」

「ここまで勝ち上がってきた相手を侮る程度の目しか持っておらぬとは、今回は楽に勝てそうじゃな」

「それは聞き捨てならないな。僕は勇者の仲間として見込まれているほどの術師だぞ?」

「相手の力量もわからぬ者に国の命運を任せねばならぬとは、世も末じゃの」


 ミダスの返しに相手は憤慨したのか、とんでもないことを言い出した。


「ならば僕の相手に相応しくなかったことを証明するため、こちらは一歩も動かずに倒して見せようじゃないか」

「儂とて、お主なぞ動かずとも倒せるわい。こちらも一歩も動くことなく勝って見せよう」

「言ったな? では、その場から動いた方が降伏宣言をするとしよう。そちらが言い出したのだから、卑怯とは言わないでくれよ」


 売り言葉に買い言葉。挑発から発展した煽り合いは、一見ミダスに圧倒的不利な敗北条件が課せられることになってしまった。


 これに飛びつかないクレアではなく、実況でも大いに取り上げた。


『おーっと! 相手選手の一歩も動かない宣言に、ご老人も同じ宣言を重ねました! 相手は魔法使いなので理解できますが、ご老人は剣士です! 一体どうするつもりなのでしょう!?』


 :おい、何を言ってるんだ

 :負けるつもりなら先に言っておいてくれ

 :もう賭けちまったよ


 唐突な宣言に、コメントは阿鼻叫喚。


 だが、俺たちは何も心配していない。


 むしろこれくらいやらないと、盛り上がらないと判断したからこそだろう。


 剣聖の実力も見せつけねばならないし、ここが発揮のしどころだと、ミダスが判断したまで。

 ならば、俺たちはそれを信じるしかない。


 クレアもそれがわかっているからか、不安な様子ひとつなく、コメントをなだめにかかっていた。


『大丈夫です! 実力を見せるためのパフォーマンスですから! ご老人は勝ちます、信じてください』


 真剣な顔でクレアにそう言われてしまえば、彼女の視聴者たちは信じるしかないのだろう。

 

 新規の視聴者もいるから完全に収まったわけではないが、荒れた様子はすこしなりを潜めた。


 そんなことをしているうちに、審判の口上が始まる。


「戦闘続行不可能と見做された場合か、自主降参が入るまで、基本的に我々が戦闘を止めることはありません。怪我は試合前の状態に巻き戻りますが、万が一の場合があるので、致死に至りそうな攻撃を受けそうな場合は降参を推奨します。また、降参を表明している相手に意図的に攻撃した場合失格となりますので、ご注意ください」

 

 いつもの内容を言い終えると、合図が下された。


「それでは、準備はよろしいですね? お互い良い真剣勝負を。始めっ!」

 

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