表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ざまぁ配信局  作者: 椿乃朱華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/34

超強い剣士が老人に化けて武闘大会に出ていたら、相手は気づく? 気づかない? ざまぁ編5


 殺気で窒息しそうなくらい重い空気が、審判の一声で破裂した。

 まずは挨拶とばかりに、騎士団長によるハルバードの激しい一撃が、ミダスに向かって叩きつけられる。


『さぁ、始まりました! 先に動いたのは騎士団長! 強烈な一撃が地面をえぐる! 当たればひとたまりもないですね!』


 全てを粉砕せんばかりの一撃を、ミダスは軽々避けた。

 叩きつけられたハルバードが、すぐさまかちあげられるようにミダスへ向かっていく。


 刃は下を向いたままだが、重量を活かした先端部分があたれば、大打撃に違いない。


 下から掬い上げるような一撃の横っ面を、ミダスは蹴りで補助した杖の一閃でもって逸らす。


 技を外した騎士団長の体制が崩れるかとおもいきや、彼は逸らされた勢いそのままに、ハンマーを振り回すかの如く、コマのようにハルバードをぶん回した。


 それを何なくしゃがんで避けたミダスは、杖の先端で騎士団長の脛をどつく。


 騎士団長は金属製の甲冑に包まれているはずなのに、たたらを踏んだ。

 追撃されてはたまらないと、騎士団長の方から距離を取る。

 間ができた内に、実況のクレアが捲し立てる。


『一瞬の攻防ー! 息をつく間もないほどの応報に、実況も追いつきません! 初撃を外した騎士団長が、返す刃でご老人を狙ったものの、まるで分かっていたかのように、攻撃の横っ面を叩かれました! そして普通ならバランスが崩れそうなところを、騎士団長はそのまま攻撃の起点としましたが、それも避けられ、隙を晒すことに! ご老人側は大きい動きをしていないのに、見応えのある勝負です! 最小限の動きで、最大限の効果! お互い距離を取りましたが、ここからどうなるか目が離せません!」


 :騎士団長もめっちゃ強いはずなのに、子供をいなすみたいにあしらわれてるな

 :これ、次も期待できそう

 :最初から賭けておけばよかったなー


 ミダス優勢の流れに、コメントが活気付く。

 勢いがミダスの側にあると見たか、騎士団長は息をいれた。


「ふむ。油断なぞこれっぽちもしていなかったが、普通にやれば勝てると思っていた。しかし、どうやらあなたの実力を見誤っていたようだ」

「ほっほっ。して、どうするのじゃ?」

「こちらも負けるわけにはいかないのでな。限界以上を出させて貰うとしよう」


 そう述べた騎士団長の雰囲気が変わった。

 実際、まとう空気が、いや、魔力が変質している。

 これは……甲冑になにか細工がされていたのか?

 

 明らかに仕込まれていただろう強化魔法が起動しているが、審判は止める様子がない。

 

 気がついていないのか、見逃しているのか、それともルールの範囲内なのか。


 いずれにせよ、ミダスが一気に不利になった。


 それを感じ取っているのかいないのか、杖を腰に佩くように構えた。

 その様子は、日本の剣術で言うところの居合の構えのようだ。


 ここで手助けしてもいいのだけど、今の状況に水を差すと、かえってミダスの邪魔になりかねなかった。

 ここは、ミダスを信じて見に回るのが得策だろう。


 ゆるりと力を抜いたようなミダスに向かって、爆発的な推進力で騎士団長が迫る。


 瞬きする間もなく、ミダスの眼前へ。

 遅れて、騎士団長の元いた場所が、爆発したように抉れた。


 その瓦礫が飛び散る頃には、ハルバードがミダスを薙ぐように振り切られていた。


 右にあったはずのハルバードの柄は、既に左にある。

 ミダスの身体が横に裂かれる軌道だった。


――ハルバードに、先端がついていたならば。


 一拍遅れて、カン、と甲高い音を立てながら、ハルバードの先端が地面に突き刺さる。


 騎士団長は振り切られた柄をもったまま、呆けた顔をしていた。


 一方ミダスは、先ほどより少し深い姿勢で、居合の構えをとり続けている。


 俺は一連の出来事の仕組みを知っていたが、それでも驚いてしまった。

 外野はそれ以上の衝撃だろう。


 その気持ちを煽るように、クレアが実況を重ねる。


『これは一体、なにが起きたのでしょう! 騎士団長が目に見えぬほどのとてつもない勢いで突っ込み、ご老人の身体を薙ぎ払ったはずでした! それは、振り切られた姿勢からも分かります! しかし結果は、ハルバードの先端の消失! 直前にご老人がなんらかの構えを取っていましたが、一体何をしたのでしょう!? 皆目検討がつきません!』

 

 :え、すご

 :負けたと思ったら勝っていた

 :あの杖ほんとにただの杖?


 クレアも原理を知っているはずだが、盛り上げるためにあえて言わないのだろう。

 それに、敵に見られているかもしれない配信でわざわざ種明かしするのは、自爆行為だ。


 まぁ、視聴者の中に勘のいい奴がいるみたいだけど。


 そう。

 あれは俺が用意した支援のひとつ。仕込み杖だ。

 

 あの杖の中には、伝説級魔物の素材で作られた剣が収められている。


 杖に仕込んだ関係上、細身の剣になってしまったが、切れ味と硬度は抜群。

 あんな芸当ができるのも納得なのだが……それはそれとして、本来はレイピアのような用途を想定していた。


 それが、比較的脆いハルバードの芯の部分とはいえ、相手の得物を叩き切ることに使うなんて。


 素材を考えればできなくはないだろうが、本来の使い方とはかけ離れている。


 剣聖であるミダスだからできたことだろう。


 俺も多少は剣を扱えるが、あんなのはできっこない。

 それだけミダスが凄いということだ。


 数百にも及ぶ最上級魔物の群れを捌き切ったのは伊達じゃない。


 その実力差を感じ取ったのか、騎士団長は両手をあげた。


「降参だ。得物を失った以上、これ以上は戦えない」


 その言葉を聞いて、ミダスは構えをといた。


 そのまま対戦相手に背を向けたところで、慌てて審判が宣言した。


「勝者! ジン・ゴロー!」


 一瞬しずまりかえった会場が、鳥の群れが飛び立つかのような歓声をおこした。


 あっけに取られているのは視聴者も同じで、呆然としている彼らに、クレアは言葉を浴びせた。


『武器を失ったままでは勝てないと判断したのか、騎士団長が降参しました! 潔さも強者の証! 本物の戦闘なら食い下がっていたのでしょうが、これはあくまで闘技大会です! 泥試合を見せるくらいなら、おとなしく引き下がることを選んだのでしょう! 勇気ある判断と、白熱した試合に拍手を!』


 :勝ったけど、本気を出させられた感じする

 :相手が強かったんだろうな

 :さすが、国の要なだけある


 その後も口々に賞賛の声が上がり、コメントが収まるまで時間を要していたようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ