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スライムになった私が拾った体を使って好きに生きる話  作者: あやちん
<二章> ミーアと冒険者ギルド

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〘四十七話〙消えたミーアとギルドマスターの後悔

「ブレンダさ~ん、ミーアちゃん見ませんでした?」


 朝起きたら、いつもなら私が起こすまで寝てるはずのミーアちゃんの姿がなかった。


 ミーアちゃんには収納用の木箱を並べ、その上に厚手のシーツを重ねただけの簡易なベッドで寝てもらってるんだけど、急ごしらえもいいところだから寝心地最悪だろうし、早くちゃんとしたベッドを仕立ててあげないといけないね。

 最初、私のベッドで一緒に寝ようって勧めたんだけど、お年頃なのか一人がいいみたいで、それならば……と木箱を簡易ベッドに仕立ててあげたんだよね。


 まぁ、毎日一緒だとやっぱ落ち着かないかなと、私もあまりしつこくは言わなかった。


 っと、それは今はおいといて。


 ともかく、そんなことからとりあえず下に降りて、忙しそうに朝の支度をしているブレンダさんに尋ねてみたわけ。


 ほんと、朝からどこへ行っちゃったんだろ?


「ああ、ミーアちゃんならちょっとお散歩って言って四半刻くらい前に出かけたわねぇ。お散歩って言う割にはローブ姿で出ていったから、少し遠くまでお出かけなのかしら。ドリスちゃん、聞いてないのかしら?」


「うん、起きた時にはもう居なかったんです。市場が相当気に入ってたみたいだし、思い付きで出かけたのかなぁ? 小さい女の子の一人歩きは良くないんだけど……、でもミーアちゃんだしなぁ、大丈夫か。大好きな朝ごはんまでには戻ってくるかな」


 ブレンダさんの旦那様で、この宿のご主人さんが作る朝ごはん、いつもとても美味しそうに食べるんだよね。



 その時はそれくらいの軽い気持ちでしかなかった。



***



 結局、朝ごはんの時間を過ぎてもミーアちゃんは戻ってこなかった。

 四の刻の鐘もとうに鳴り、ギルドに向かわないといけない時間が刻々と近づいてくる。


「おかしいよ、ミーアちゃん帰ってこない」


 ギルドマスターに来るようにと言われたのが五の刻だから、そろそろ出ないと間に合わなくなっちゃうよ。


「ドリスちゃん、もしかしてあの子一人で向かっているかもしれないでしょう? ミーアちゃんがこちらに帰ってきたら私が責任もってギルドまで連れていくから、あなたは一度ギルドの方に行ってみてはどうかしら?」


「そ、そうかな? う~ん……」


 ああ、こんな時は風魔法の気配察知(ウィンドセンス)が使えればと思う。風属性に才がない自分が恨めしいよ。

 私の地振動(ソイルバイブレート)探知(ディティクト)は個人を特定するほどの確度や精度はないし、ましてや町中。余計無理ってもので止めに探知範囲も狭い……。


 悔しい!


「じゃあその、面倒かけちゃいますけど、お願いしていいですか?」


 ブレンダさんの言葉に私はすこし躊躇(ちゅうちょ)したものの、自分の魔法はあてにならず、他に出来ることもない。


 そのご厚意に甘え、ギルドに向かうことにした。




***



「なんだと、ミーアの行方が知れないというのか?」


「はい、ドリスさんは朝起きた時点で姿を見ておらず、唯一、宿のブレンダさんがミーアさんを見かけ、会話も交わしていますが、散歩に行くと言っていたそうです。結局、食事の時間になっても戻ってこず、それを最後に姿を見たものはおりません」


「うーむ、なんということだ。まさか姿をくらますとは。いや、まだそうと決まったわけではないが……。だがしかし、迎えの馬車はもう来てしまうぞ」


 ぬかった。


 俺としたことが、ミーアへの接し方に気のゆるみがあったことは否めない。

 昨日のあの話の持って行き方は、今にして思えばかなりまずかったか。


 ミーアは色々非常識なことを仕出かしはするものの、基本従順で目上の者の言うことも素直に聞いていたから、接し方に油断が出てしまった。まさかこうも躊躇(ちゅうちょ)なく、自分の得た環境を捨てるような行動に移すとは。


 以前スヴェン様のところから逃げ出したという前例も聞いていたというのに。


 それにしてもミーアのやつめ。一人で生きていたせいなのか、か弱い幼子のように見えこそすれ、自分の置かれている状況に対する判断が早い。


 いや早すぎる。


「変に話を伏せず、しっかりとどこへ何をしに行くと伝えるべきだったか……」


 それはそれで余計こじれたかもしれんから難しいところだが。


「私も同罪です。少し事務的な対応を取り過ぎてしまいました。冒険者登録はあの子にとって、とても大事な目標だったでしょうから年齢のことではかなり気落ちしてしまったようです。――特例処置の話、早く伝えすぎると気を抜いてしまうからと、ミーアさんにはまだ説明していませんでしたが、先送りなどせず早く教えてあげればよかった……と、思わずにはいられません」


 特例処置……か。

 

 十二歳より前倒しで冒険者登録を認めるという処置なわけだが、それを大っぴらにするわけにもいかんからな。表向き十二歳まで見習いのままで居てもらい、その実、ギルド内の処理としては登録完了とし、保証金の半額も返還する手筈で進めていたのだ。


 ううむ、エリーネだけを責めるわけにはいくまい。


 俺もミーアを子供と侮(あなど)ってはいないつもりだったが、結局のところ本人抜きで段取りを進め、都合よくあしらおうとしていた訳だからな。 


 ギルド登録どころか、そんなことが霞(かす)む立場にすらなれたかもしれなかったんだが……。

 ここで二人して過去の行いを悔やんでいても話は進まん。


「まあこうなった以上は仕方がない。エリーネは捜索に出ている者たちの取りまとめと進捗報告を定期的に頼みたい。高くつくが連絡は全て魔伝書簡(マナエピスル)でかまわん。気が重いが俺は来た馬車に乗り、レイナール卿の館へと出向かねばならん」


「はい、おまかせください」



***



「あの女児……、またしてもか。しかし、どうして行方をくらます必要がある?」


 リンストロム卿の待つ部屋に入室し、ミーアを連れてこれなかった件を謝罪した際の第一声がこれである。


 あなたがそれを言うか? と思いもしたが……、しかし、どう説明したものか頭が痛い。


「それについては私(わたくし)からミーアへの話の伝え方に問題があったかもしれません。こちらの意図としては招へいに近いものだったのですが、どこへ行くか、誰から呼び出されたかも告げておりませんでしたので、それがミーアの警戒心をあおる結果となったものかと存じます。貴重なお時間を無駄にしてしまい大変申し訳ございません」


 ひたすら頭(こうべ)を垂れることしか俺には出来ない。


「そんな、ようやく会えると、駆けつけましたのに……。ミーアちゃんはもう居ないのですか?」


 リンストロム卿の後ろに控えていた、淡い金髪に空色の目をした美しい女性が前に進み出て俺に問いかけてきた。紹介はされていないがこの方も貴族で間違いないだろう。しかもミーア絡みとなれば、きっとケーヴィック砦での関係者で間違いないだろう。


「アンヌ、そう結論を急ぐな。まだ居なくなったとはっきり確認されたわけではない。この者たちが今も探させているのだ、あきらめるには早いぞ」


「は、はい。……後ろから突然すみませんでした」


「良い。そなたのミーアを心配する気持ちについては理解している。ウルヴよ、前後したが紹介しよう。こちらの女性はハウゲン子爵令嬢だ。領境警備隊での私の部下でもある。以前話したかどうかわからんが、ミーアを最初に保護したのはこの者だ」


「アンヌ=ハウゲンです。ここレイナールでミーアちゃんが無事過ごしていると伺い、居ても立っても居られず……、スヴェン様を追って来てしまいました」


 色白で華奢な姿ながら、その空色の目からは強い意志が感じられる。お貴族様とはいえ、さすがは領境警備隊の一員といったところか。


「レイナールの冒険者ギルドでギルドマスターを拝命しております、ウルヴと申します。以後お見知りおきください」


「こちらこそ、いきなりの非礼をお詫びいたします。以後よろしくお願いします」



 やれやれ、ミーアにはとことん苦労させられる。

 が、今回ばかりは俺も少しばかり責任を感じるからな。可憐なハウゲン子爵令嬢のためにもなんとかしてやりたりところだが。


 ミーアよ、このまま戻ってこないなどと、早まったことはしないでくれよ。


 頼むぞ!


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[一言] 警戒心の強いスライムだから……
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