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スライムになった私が拾った体を使って好きに生きる話  作者: あやちん
<二章> ミーアと冒険者ギルド

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〘四十六話〙ミーア、誕生日に混乱する

 実習という名の駆除仕事を終えたものの、衝撃の事実を前に意気消沈してギルドへの帰途についています。


 終始上の空な私がすぐ足を止めてしまうので、ドリスがずっと手を引いて歩いてるくらいです。


 冒険者登録が十二歳からだなんていったい誰が決めたのでしょうか?

 まさかそんな落とし穴が潜んでいようとは。


 ギルドの規約とか、原本見つけたらスライム酸で跡形もなく溶かしてやって、そんな規則なかったことにしてやるのに!


 くぅ~、出来もしないことをうだうだ考えてしまいます。

 もうなんだか、一気にやる気がなくなってきました。



 はっ!


 そういえば……、私は今十歳ということですが、十歳と何ヶ月くらいなんでしょう?

 誕生日がわからないのですから、実はもう十一歳になってました~、チャンチャン。とかなっててもおかしくないと思います。


 だとすれば!

 待つのはあと一年くらいに短縮します。


「どりす! わたし、たんじょうびわからない。じゅうにさい、いつくる?」


 疑問に思ったら即確認。早速ドリスに聞いてみました。


「うーん、どうなんだろ? たぶん見習い登録時にその辺なにか調べてあるかもしれないし、ギルドに戻ったら聞いてみよっか?」


「うん!」


 ドリスの提案には一理あります。

 あのギルドマスターやエリーネさんならその辺、抜かりなく処理しているはずです。


 そうと決まれば急ぎましょう!


「ああ、こら。急に走り出さない~。もう、ほんと、調子いいんだから」



***



「お答えしますと、ミーアさんの生まれたというソルヴェ村は古いしきたりが引き継がれていたようで、ギルドの調査資料によると年齢についても一般的な数え方をしていなかったことがわかっています」


 エリーネさんに依頼達成の報告をしたのに続き、流れで自分の誕生日がどうなってるのか尋ねたところ、なんか面倒な話が始まりました。


「年齢で言えば、一般的には誕生後、一年経過したところで一歳となりますが、ソルヴェ村では生まれた年を一歳と表していました。その年を越すことで加齢していく考えなので何月に生まれたとしても、翌年になった時点で、その年生まれの方々は一斉に二歳となります」


 うげっ、なにそれ!

 要は満年齢じゃなく()()()ってこと?


「ですのでそれに(なら)うならミーアさんは来年()()()になるのですが、当ギルドもヴィースハウン領も年齢は()()()を基準としていますので……」


 うそ、うそ、嘘だと言って……。


「従って、ヴィースハウン式で歳を数えるのなら、ミーアさんは現在、()()()()()()かということになり、生まれた月次第ではまだ九歳すら迎えていないことになります」


 い~や~だ~!


 藪をつついて余計悪い方向に行ってしまったんですけど!

 まさかまさか。マジ信じらんない。


 年齢、下がっちゃったじゃないですか~!


「み、ミーアちゃん……」


 ひどく落ち込んでしまった私を見かねたドリスが、頭を撫でたり背中をさすったりしてくれますが、残念ながら私のテンションだだ下がりです……。


「はいはい、まだ続きがありますよ。話を戻しますが、管理の都合上誕生日がないというのは困りますので、ギルドが独自に入手した情報によりミーアさんが保護された日時を誕生日とすることで結論が出ています。具体的には七月七日です。良かったですね、誕生月は過ぎていますから現在は既に九歳となっていますよ」


 そ、そうですか。

 けどなんかもう、色々どうでもいい感じです……。


「それとミーアさん? この情報は支給した見習い登録プレートを確認してもらえば記載があるはずですよ?」


 ぐはぁ!


 しょ、しょんな……、面倒くさくてまだ一度も確認してないぃ。

 だって、魔装ボードとやらで閲覧しなきゃだし、手数料いるし、まだ見るようなこともしてなかったし……。


 っていうかそれくらい説明しといてくれてもいいと思わない?

 あえて言わないようにしていた疑惑すらある!


 ああ、私の冒険者ギルド正式登録の野望が大きく遠のいていく~!


 見習いをあと三年。三年近くも続けなきゃいけないなんて、マジありえないんですけど!


「へぇ、そうなんだ? 私もちゃんと見たことなかった。ミーアちゃん、あとで一緒に確認してみよう……、み、ミーアちゃん?」


 ドリスが気を使ってくれてるけど、今は相手する元気すら……。


「あの、ミーアさん。年齢のことなら……」


 エリーネさんがまた何か言いかけてた、そんな時です。

 ギルドマスターが現れたのは。


「おおミーア、ちょうど良いところに。明日の朝、五の刻にギルドに来てもらいたい。お前に行ってもらいたいところがある。迎えの馬車が来る手筈となっている。もちろん私も同行するから心配するな」


 むむぅ、そんな急に言われても……。

 それに心配するなと言われましても、どこに、何をしに行くのかもわからないのに判断のしようもないんですが?


 私は(いぶか)しんでギルドマスターを上目で睨みつけます。


「そう睨むな。この場で詳細を言うことは出来ないが、お前にも身に覚えがあるだろうことについての話だ。拒否することは出来ないところからの呼び出しだ。しかし、悪いことにはならないはずだ。素直に来てもらえると助かる」


 ギルドマスターは忙しいのかそれだけ言うとさっさとその場から去っていきました。


 冒険者ギルドではギルドマスターの言うことは絶対です。

 領主様や町長……いえ、ここは町長じゃなく代官様が治めているそうですが、そんな偉い人たちの次の次くらいには偉い人なのです。

 まだ仮登録の身とはいえ、従わざるを得ないのです。全てのギルドにおいて、そういう誓約をもって登録しているのです。


 ちょっと暗い雰囲気になってしまったところで、私とドリスはその場を後にしました。


 ちなみにしらけちゃいましたが依頼達成報酬は銀貨三枚。

 銅貨なら六十枚分の稼ぎです。ネズミのお肉は依頼主さんに譲渡し、小さな魔石だけゲットしてきたので、その辺も鑑みての報酬となっております。




***



 ブレンダの宿で気分直しのおいしいごはんを頂き、部屋に戻って一日の汗を(ぬぐ)うわけですが、ドリスと共同生活を送るうえで綺麗すぎると(いぶか)しがられるため、敢えてその時点ではスライムパックはしていません。

 

 生活魔法で水を出し、濡れた布で拭き拭きします。


 ドリスの背中は私が拭う役目です。前はいいからと言われてますが、「あ、すべった」と私はわざとらしく胸にまで手を回し、成長するよう願いを込めてもみもみしてあげます。


「も~、ミーアちゃんったらいつもいつも、絶対わざとでしょ~」


 そう言ってきますが別に怒ってなくて、それどころか、かすかな記憶にある母親を連想してしまう優し気な目で見てくるのです……、むむぅ。


 仕返しとばかりに全身くまなく(ぬぐ)おうとしてくるので、きゃっきゃと逃げ回る私です。

 でも結局捕まって、言えないところまで全て拭い倒されるわけですが。


 髪の洗いっこもします。


 ドリスの茶髪はくせっ毛なので、私の長く伸びた淡い紫色の髪をとてもうらやましそうに撫でながら洗ってくれます。

 私はこっそりとスライム謹製トリートメントもどきを使い、ドリスの髪を洗ってあげています。効果が表れた時のドリスのことを思えば硬い表情筋にも笑みが浮かぶというものです。


 恥ずかしくも何とも穏やかな日常です。


 でもいい歳したおじさん精神のはずの私は、いったい何をやってるんでしょうね。



 ちなみに、寝入ったころ合いを見て完全版スライムパックをしているのはナイショです。


 ドリスすまない。

 中途半端に汚れたまま寝るなんて、風呂好きの元日本人である、おじさんの心が許さないのです。




 木箱ベッドに横になった私はギルドでの出来事を振り返ります。


 エリーネさんは言いました。


「ギルドが独自に入手した情報によりミーアさんが保護された日時を誕生日とする――」と。


 私が保護された日。


 独自に入手したって……、それがわかるのはアンヌがいたところ以外にありません。

 私を閉じ込めてくれちゃったところ。


 なんちゃら警備隊だっけ?


 その警備隊とギルドとの間に何らかの繋がりがあって、私のこと……バレちゃったのかもしれません。


 あそこの人達には色々良くしてもらったし、何よりアンヌがいます。

 嫌い……という訳ではありません。


 けれど、あそこで隔離されてしまった理由、私が死んだかのような状態になったところを見られています。


 それとギルマスのさっきの用件。

 いったいどこからの呼び出しでしょう?


 どこに行くかはっきり教えてくれなかったことといい……、もう怪しさMAXです!




 短いながらも楽しい日々でしたが……。


 まだまだこれからというところだったのに。



 もう引き時なのかもしれません。




 残念です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 何年もこんな生活は流石に無理だよな
[一言] 事前説明しなかったギルマスが悪いね( ˘ω˘ )
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