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スライムになった私が拾った体を使って好きに生きる話  作者: あやちん
<二章> ミーアと冒険者ギルド

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〘三十九話〙ミーア、冒険者ギルドの修練場へ行く

ちょっと長め

 午前中は色々あった気がしないでもないですが、そんなことは置いておいて午後の部を頑張ろうと気合を込めてるスライム娘、ミーア十歳です。


 昼からは誰が面倒見てくれるのかと思えばオルガでした。

 ちっ、普通すぎてつまらないです。


「おい、ミーア。今、オレが来てガッカリしただろ? ったく失礼な奴だぜ。オレだって忙しい中、せっかく時間()いて来てやってるってのによぉ……」


 ぐぬぬ、オルガったら、脳筋の癖に嫌味ったらしいです。

 そりゃあ、確かにちょっとというか、かなりガッカリしましたけれど……。


「あ~あ、せっかくお前の実力を確認するってことで修練場で思いっきり暴れてもらおうと思ってたんだがなぁ……。残念だがよ、やめとくかぁ?」


 な、なんですと!


 いきなりストレス発散のチャンスですか?


 私はオルガの腰にぴとっと張り付き、お腹あたりからオルガの顔を見上げるようにして、我ながらあざといしぐさでもってお願いします。


「おるが……、ごめん、なさい。わたしがんばる、いっしょうけんめい、やる! おねがい」


 じーっとオルガを見つめる。


 根性で見つめる。


「じぃ~」


 あ、つい言葉にでてしまった。


「くはっ、ほんとお前って奴は……、得な性格してんな。そんな(つら)しなくてもやるさ。冗談に決まってんだろが。ウルヴも見に来るんだし、やらねぇ訳ねぇだろが。変なとこで素直だよな、お前。くくくっ」


 く、くやし~!


 からかわれました。

 おバカな脳筋に。


 まぁいいですけど。


「むぅ、おるが、いじわる。……それでどこで、やるの?」


 抱き着いたまま聞いてみた。


「おお、そうだな、場所も知らねぇよな。ここ本館建屋の奥から外に出られるようになってるんだわ。町中にあるくせしてすげえんだぞ。よっしゃ、じゃあ行くとすっか。おらよっ」


「はわっ!」


 一気に持ち上げられて、上で器用にくりっと回されて肩車された。

 相変わらず私の扱いが雑すぎやしませんかねぇ……。


 おおっ、でも目線高くて気分いい~。



***



 ギルドの受付前と酒場を通り抜け、その奥の会議室や物置っぽい部屋が連なる静かなエリアを通り抜けると、建物の裏側に抜けられました。

 ちなみに通り抜けの際、「室内で肩車は危ないからやめてください」って、知らない受付嬢さんに怒られたので、すぐ下ろされることに。


 やっぱオルガは馬鹿でした。


 ギルドの裏手は、まじ街中とは思えないほど広々とした土地が広がっていて、ちょっと運動場っぽい雰囲気があります。でも視界の左右に目をやれば、表通りからも見えた平屋の倉庫みたいな建物が、ギルド本館建屋よりさらに伸びていて、上から見れば凹形状になってる感じだと思います。


 広い敷地内でギルドの職員さんっぽい人が働いてる姿もちらほら見受けられ、両建屋からも人が頻繁に出入りしている姿が確認できます。


 きっと魔獣解体とかやってるに違いないです。


 すごいすごい。

 

「ほれ、この先に川が見えんだろ? その川にでけぇ中州があるんだがよ、そこを利用しただだっぴろいギルドの修練場があるんだ。普通はすぐそこの修練場で済ますんだけどな。今回は特別に中州の修練場を使ってやるんだとよ」


「すきにしていいのっ?」


 私は今まで見せてきた表情の中でも、最高と思われる、可愛らしくも不敵に見える笑顔を浮かべつつ、そう問いかけました。


「お、おおっ、そりゃまぁ……、いいぜ。お前の能力を見たいってんだ。無理しない範囲で、精々がんばってみせてやれや!」


 珍しくちょっと引き気味なオルガに手を引かれ、川沿いに設けてある運動場、いえ、修練場に沿って進んでいけば、やがて木造の立派な橋が架かっているところまで来ました。この橋を渡ればそこはもう中州エリアです。


 まぁ橋はかかっているものの普段は水量も少ないようで、中州までは葦原が一面に広がっていて、直接川の水が見えるところもあまりありません。


 葦原の至る所に野鳥の姿が見られ、なんだかとてものどかな風景が広がってます。


 あれ(野鳥)もごはんになるかな?


 のどかな風景に心を癒されつつ、野鳥たちからしてみればひどいことを考えてる私なのでした。



***



「ほぁ~」


 人が余裕ですれ違えるくらい幅のある橋を渡り、中州に乗り込んでみればそこは想像以上に広かったです。


 中州舐めてました、ごめんなさい。


 右手側、遠くに見える川の向こう側、更に遠くに高い塔が見えます。

 あれは町に入る前、丘の上から見えたやつです。


 あれってたぶん監視塔だよね?

 アンヌたちがいた警備隊の砦にもあったやつと造りがそっくりです。


 そのうちここにもワイバーン飛んできたりしてね?


 ワイバーンは、以前せっかくやっつけたのに吸収することが出来なかったから、機会あればぜひお願いしたいところです。


 ワイバーンさん的にはいやでしょうけれども。


 そして正面、こちらも川を隔てた対岸のかな~り遠くにすっごくデカくて立派な建物が見えます。相当離れてるのにそれでもデカく見えるのだからほんとにデカいです。


 今まで見た建物の中で一番デカいです。

 デカいのオンパレードです。


「ねぇ、おるが。あれ、なに?」


 わからなければ聞く。子供の特権です。


「お、あれかぁ、あれはな、この町の統治をソールバルグ侯爵家から委任されているレイナール子爵の館だ。この町で一番偉いお貴族様だぜ。めんどくせぇから絶対関わりたくねぇ相手だ。おめぇも精々気をつけるこった」


 そう言いながらいつもみたく頭にボスンと手を乗せられた。

 私の頭は手休め台じゃないって言うのに、もう。


「ほれほれ、そんなことよりやっと着いたぜ。ここでならどれだけ魔法ぶっ放そうがお(とが)めなしだ。おめぇの魔法を見るのはオレも初めてだしよ、派手にたのむぜ!」


 オルガがここを管理してる人に話を通したので、もういつでもぶっ放していいみたい。


 修練場は例えて言うなら打ちっぱなしゴルフ場とか、射撃場みたいなものをイメージすればいい感じです。四メートル間隔くらいで五人並んで魔法を放てるスペースが確保されていて、前方は軽く(なら)された平地がかなり遠くまで続いています。

 魔法を放つ方向に二十メートル間隔くらいで丸太を組んで作った的が設置されていて、それが十基以上は確認できるので、一番遠いところだと二百メートル以上先にあることになりますね。


 でも正直これではしょぼい。的当て程度ではストレス発散は難しい。

 私はドカーンとやりたいのです。


 そういうのはまた違う場所で、ということなのでしょうかね?


 でもまぁ久しぶりですし、物は試しですし、やっちゃうし。



「お頭の風、風の尖刃、しゃーぷエッジ! しゃーぷエッジ!」


 まずは一番手前、お頭にいっぱい撃たれたので覚えたやつ。

 サービスで二連発!


 細く絞られた風が鋭い(きり)もみ状態で一番手前の丸太を捉え、まるで精密ドリルでも使ったかの如く綺麗で繊細な貫通穴が二つ並んで穿(うが)たれました。


 お頭が放ったやつより真ん丸で、滑らかな仕上がり。

 それに穴径を小さく穿つのは、見た目に反して魔力が多く必要でとても大変なのです。


 ふふっ、風の制御は完璧です。


「続いてー、なんだっけ、しゃーぷエッジ束にしたやつ、ういんどブラストっ!」


 次もお頭シリーズ。効果は言葉通り。狙いはさっきの丸太の二十メートル奥の丸太。四十メートル先。

 私を中心に、放射状に広がるように放たれた、粒粒まん丸穴をいっぱい穿つ風~!


 散弾みたいな(つぶて)の風が水平に拡散しながら組まれた丸太に襲いかかります。お頭の放った奴の数倍はでかい威力です。


 あわれ丸太組みは小さな穴がほぼ水平に無数に穿たれ、おかげでぐずぐずになって形が維持出来ず、ぼろぼろと地面に崩れ落ちちゃいました。


 ついでに両隣の丸太さんまで同じように崩れ落ちてます。


 ちょっと範囲を広げすぎました、失敗失敗。

 まぁ今は私しかいないし、大丈夫だよね?


 よし、風が続いたし、次は久しぶりに火の魔法、いっちゃいましょう。


「おいっ、ちょっと、ちょっと待てやミーア!」


 調子出てきたところでオルガに後ろから羽交い絞めされ、そのまま持ち上げられました。


 ぐぬぬ、小さな体がうらめしい。


「なに? おるが」


「何ってお前、そんなにぶっ続けでデカい魔力使って大丈夫なのかよ?」


 デカいって……、何言ってるんでしょう、この人は。魔力なんてまだ全然使ってないし、むしろこれからが本番でしょうに?


 っていうか使ってる魔力量、わかるの?

 

 首をまわし、オルガの後ろを(のぞ)き見れば、いつの間にかエリーネさんが魔導ボードとやらを持ち、驚きの表情を浮かべて立ってました。


 当然横にはギルドマスター……と、ついでにこの施設を管理してる人。


 魔導ボードって人の魔力の状態とか見るやつだっけ?


 うんうん、思い出しました。アンヌも持ってたやつですね。


 けれど離れた人の状態までわかるなんて、それってエリーネさんがすごいのかしらん?


 ま、いいけど。


 とりあえず、これで終わりになんかにしないもんね。


「まだじゅんび運動! 今からがほんばん。 は~い、お約束、火のたま、ふぁいあーぼーる!」


 オルガに抱えられたまま、構わず放ったそれは、一メートルに満たないくらいの火球となり、目標にと見据えた一番遠くの丸太を目指し、周囲に熱くなった空気を残しながらもすっ飛んでいきました。


 これ、初めて撃ってみたのだけど……、案外うまく出来ました。


 だってファイアーボールって、日本での火魔法認知度ナンバーワン(独断)ですからね。それはもうイメージがとってもしやすいのです。


 可哀想に丸太組みさんは当たったそばから、一瞬で燃え上がったかと思うと間を置かず爆散し、はらはらと大量の火の粉が舞い降りてくる有様となったのでした。


 は~、気持ち良いですっ!



「こんのお調子もんが! 一旦休憩だ、休憩。今度撃ちやがったら、ケツひん()いて真っ赤になるまで引っ(ぱた)いてやるからな、覚悟しとけや!」


「ふぎゃっ」


 ゴスンと後頭部を頭突きされました。

 後頭部への打撃は危険です。(ただしスライム娘はその限りでない)


 幼女虐待です。



 好きにしていいって言ってたよね……。


 オルガのうそつき。



 ぐっすん。


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