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スライムになった私が拾った体を使って好きに生きる話  作者: あやちん
<一章> スライムと出会い

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〘二十話〙やらかしのミーア

 アンヌがタカビー野郎なレナートに連れられ、部屋を出て行ってしばらくすると、外の様子がどんどん物々しいものへと変わっていきました。


 もう私を気にかけるような人は誰も残ってません。


 そんな今はスライム娘(ミーア)にとって大ちゃ~んす!

 出しちゃいますよ、アレを。


 ふふん、スライム体をちっちゃい手からみょ~んと伸ばし、外の様子を直接ばっちり見てみようと思います。そしてあわよくば魔法を使ってるところを盗み見るのだ!(私が使えるかどうかもわからないんだけど)


 今回はよく見るために特別製。

 さきっぽに目玉を模したものを作り出し、人の目で見たのと変わらない視界を確保したのですっ!



 ふふっ。

 これで魔法使ってるとことか、色々じっくり観察させてもらいます。


 百聞は一見にしか~ず!


 

 さてさて、どれどれ。どんな状況なのでしょうか?


 おお、ワイバーンの群れがこれでもかと湧いてでてきてますね。

 えーっと、全部で十三匹。ワイバーンって数え方、匹(ひき)でいいんですかね?

 鳥みたく飛んでるんだから十三羽とか、それとも人が乗れるくらいに大きいんだし十三頭?


 ……。


 ま、どうでもいいですね。


 けれど、飛んでる相手とどうやって戦うんでしょう?

 鉄砲とかあれば便利そうですけど、この世界、鉄砲とか銃火器の類(たぐい)はないんでしょうか?

 まだ見たことはないです。弓とかも使ってる人はこの場にはいないようだし、飛び道具無しで空飛ぶワイバーンと戦うなんて根性ありますね。


 うーん、目が一個だとさすが見れる範囲が限定されすぎです。

 見逃しも多くなりそうなのでもう一個。いや、この際です。指五本分出しちゃいましょう。


 大サービス!


 でも慣れてないからこのくらいにしておきましょう。

 超優秀スライム脳の処理能力でもこれはちょっときつそう。


 ああ、色んな視界でグルグルして酔う、酔っちゃう!


 そ、そうだ、ついでに音も拾いましょう。音、大事です。あれですよ、あれ、エッチな動画も音がないと今一ね……、げふんげふん。


 えっと、音は耳の形してなくても肌で、いや、ぷにょで空気の震えを感じ取ることで再現できます。目よりよほど楽。適当に伸ばして網をというか、膜を張っておきましょう。


 久しぶりにスライム体大活躍の予感です。

 俺(・)のスライム体が火を噴くぜ!



 さて、現場ではすでに戦闘が始まっています。


 いかにも強そうで偉そうな風体の、金髪が眩しい強面イケメンさんがなんかやってくれそうです。

 この人は見た記憶ありませんから、きっとここへやってくるって言ってた隊長さんかもしれません。


 ワクワク!



「風よ、ᛋᛁᛗᛖᛋᛁ(示し)ᛏᛟᚲᛟᚱᛟᚾᛁ(処に)ᚺᚢᚲᛁ(吹き)降りて、全てᚲᛖᛏᛁᚱᚨᛋᛁ(蹴散らし)ᚨᛏᚢᚲᚨᛁ(圧壊)せよ、ナロウレンジ・ダウンバースト!」



 えっ、ゑっ?

 今なんて言ったの?


「わかるか~、あほぼけかすぅ!」



 おっと、ついお聞き苦しい言葉が……。

 お下品ですみません。


 きっと魔法の詠唱を唱えたはずですが……、ぶつぶつと何言ってるのか、まだ言葉習ってる段階の私ではぜーんぜんわからないんですけど!


 後半の言葉は定型文っぽいけど……。


 あかんわぁ、役立たんわぁ。


 初めて見た攻撃系の魔法は風系統だったみたいで、ワイバーンの更に上にみるみるうちに密度の濃い霧状の雲みたいなのが出来て、そこから一気に激しい下降気流が発生し、それに対象を巻き込んで地面に叩きつける……という、えげつないものでした。


 直撃を受けたワイバーン、哀れ地面にプチっと。


 周りにいた数匹も余波を受け、更に一匹落ちて、二、三匹はふらついたもののなんとか立て直してました。

 落ちた二匹はここぞとばかりに、うざいクルトとオタク(エリク)が、なます切ってグロなものに変えてました。活き活きしてるよこの二人。


 でも途中、火(ブレス)を吹かれて慌てて逃げてたの笑っちゃいました、ぷふっ。


 ああ、ワイバーンのお肉……、吸収してみたかった。もったいない。


 他にはヨアンや、タカビー兄ちゃん、知らない魔法士たちの魔法、火や、風、それに土? 色々見たけどやはり言葉の壁は厚かった……。


 方針転換。

 言葉は無理。


 使ってる人の体に着目しよう、そうしよう。

 魔法を使ってる人を手当たり次第にじーっくり、見ていきましょう!


 元サラリーマンおじさん、現状把握や要因分析は得意です。


 視覚情報の収集は最小限にし、代わりに魔法を使っているときの力、端的に言えば魔力の流れや出方、謎器官がどういう働きをしているのかの把握に注力し、得た情報を分析・把握し、自分にそれが反映できるか試してみたいと思います。


 その中でもやはり謎器官が一番の肝なのかな。


 謎器官……。


 ふむぅ、いつまでも謎器官じゃ芸がないです。

 そうですねぇ、魔力の受け入れや取り出しを行い利用する器官、さしずめ魔力受容体(マナレセプタ)といったところかな?


 うん、マナレセプタ。いいと思います。


 こんなことやってる間にも着々と双方に被害が出てます。魔法もいっぱい使ってくれてサンプル豊富でミーアうれしい悲鳴。


 魔法を使っている人にはやはり強い魔力の流れが感じとれます。

 ついでにワイバーンにも相当の魔力溜まりが確認できるので、やはり奴らにもおなじく魔力受容体があるのでしょう。それも強力なやつが。


 たくさん調査という名の練習をしたので、スライム体謹製魔力センサー(今命名しました)の扱いにも慣れてきましたとも。



 それを踏まえ、部屋のベッドでくたっと横になってる自分の体を顧(かえり)みてみましょう。

 傍(はた)から見れば、手から変なぷにょぷにょが伸びてるヤバい幼女でしかない。


 でもそのぷにょはスライムで、しかも良いスライムなので大丈夫です、やばくない。


 むむ。


 むむむぅ。



 む?



 あれれぇ、おかしいぞ~。


 動きがない。

 動きがないです。


 私の魔力受容体(マナレセプタ)、凍り付いたかのように魔力に動きがありません。

 でも魔力自体はいっぱいある感じです。

 これヤバくない? ってくらい満ち満ちています。


 例えるならバッテリー。

 ミーアの体内バッテリーには入力はあるけど出力があ(・)り(・)ま(・)せ(・)ん(・)。だから充電しっぱなしです。


 そう、しっぱなし。


 ということで、私が魔法使えないのは出力側が繋(つな)がっていないせいだと思われます。


 私が思うにこれ(未接続)は生き物のもつ安全装置なのではないかと愚考。

 だって、生まれた時から繋がってたらやばいでしょ、これ。ママ、安心して子供産めないよ!


 と言っても、小さいうちは魔力があったとしてもしょぼいだろうし、命の危険ってわけでもないかも……だけど、何事にも例外あるしね、万が一暴発したら危ない。安全大事。


 だからきっと生まれた後、物心ついてから使えるようにする感じなんだと思う。


 翻(ひるがえ)って私(ミーア)。

 生贄のために生かされてた、この体のもとの持ち主であるミーア。


 親も居なかったようだしそんな子供に対し、わざわざ魔法使えるようになんてしないよね。


「くっそ、村の奴らshi〇e!」


 あ、もう全滅ってたね。


 ざまぁ。





 さて、魔法使うために必要なことはこれで(たぶん)分かったし。


 バッテリーの出力、あ、違った、魔力受容体(マナレセプタ)……、自分で考えてなんだけど口にするとちょっと長い。


 銀虎もそうだけど、私のネーミングセンス……。

 もうレセプタでいいや。レセプタの出力を繋げればいいんだよね、きっと。


 繋げ方を調べるのは、それこそスライム体の十八番(おはこ)。もう超速でミーアの体を走査し確認しましょう!



「魔法使えるようになったら何するかな~? とりあえず爆裂魔法は魔法少女のロマン? あ、電撃バチバチっていうのも……。いや、あれは超能力だっけ? 魔砲を放つって言うのも元男としては捨てがたい」


 走査結果でました。

 やはりレセプタには脳からの神経系の伝達経路がほんの僅(わず)かながら繋がっていないことが確認できました。


 本来なら脳からの神経系とレセプタの体組織を、親なりがなんらかの方法で繋げるんだろうけど。


 やることがわかればあとは簡単。

 万能決戦兵器、スライム体細胞の出番、サクサクっとやっちゃいます。


 接続の対処をしつつ、魔法使えるようになったらまずは何を試してみようかなぁ、なんて考えてしまう私。


「むふふっ、やっぱ桃色髪のほうが威力はあるかなぁ。エクスプロージョン! なんて~」



 よっし、繋がった!




 その瞬間。




 眩(まばゆ)い閃光――。



「なっ!」



 目の前の何もかもが光に溶け込んでいき真っ白な世界となる。

 ミーアの目もスライム体の目も、その閃光で瞬時に潰れてしまいました。


 それとほぼ同時、秒にも満たない時間差で次に起こったのは耳をつんざく、凄まじいばかりの轟音(ごうおん)。


 更に続いて大瀑布が逆流したかのような極太の炎柱が上空に向かい、それはもう怒涛(どとう)の勢いで吹き上がりました。



「な、なに、これ……」



 その様子を秒で修復したスライム製目玉で確認した私は、ただただ唖然として見上げるしかないのでした。




 あっ。


 部屋の屋根、というかこの建物全体の屋根、吹き飛んだ、というか、消し飛んじゃった。



 ごめんなさい。


 

 けど、ワイバーンだって数匹、確実に巻き込んじゃってると思う。

 これはきっとみんなの役に立ったに違いないです!



 だから……、悪いとは思うけど、反省はしていないっ!




 以上。


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― 新着の感想 ―
[一言] 天光満つる処に我は在り・・・ なんてね。
[一言] 一発撃って倒れないだけ某爆裂魔法の使い手より優秀( ˘ω˘ )
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