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資金も顧客も安定したため、ついに自分のサロンを立ち上げた。オーレノア・ボーデリーと名付けた私たちの城。私は17、オーランドは13歳なっていた。オーランドは頭が切れる上に、私と別に自分を売り込み、ドレスサロンの事務作業を手伝い経験を積んでいた。だが、さすがにまだ幼く、表立っては動けない。私も表に出るには限界があるため、もう1人誰かいないかと考えていたところであった。


そんな時、執事経由で父から伝言があり、デビュタントの準備をするようにとのことであった。デビュタント…忘れていた。どうりで、ドレスサロンからの依頼が多かったわけだ。


さすがに私に興味のない父でも、デビュタントは無視できなかったわけで、通常は1年以上前からドレスの予約をするようなイベントなので、急ぎドレスを手配するも、流行遅れのドレスしか用意できなかった。ドレスに関わる仕事をしている者としてプライドが許さず、サロンの仕事と並行して、自分のドレスを直すことにした。


部屋にドレスを持ち込み、形はすぐに直し終え、刺繍を新たに施しているときだった。1人の侍女がデビュタント準備のため、手伝いを命じられたと顔を出した。執事が父に言ったのだろうか?元々私に専属侍女はいないため、髪や肌の手入れを怠っていた。当日は1人で準備できないため、正直助かった。


見ると、侍女の視線はドレスの刺繍に釘付けとなっている。聞けば、オーレノアの刺繍に憧れており、それによく似た刺繍だと思ったとのこと。侍女のセシルは私と同じ年で、幼い頃から伯爵家の侍女として働いているため、礼儀作法は申し分ない。セシルが刺繍したものを一度見たが、悪くなかった。私は思い切ってセシルに打ち明けた。


セシルは私がオーレノアだと知り、驚き、恥ずかしくなるほど賞賛した。早速、私専属の侍女となってもらい、デビュタントのドレスの刺繍を一緒に施す。感激しきっきりのセシルを落ち着かせながら、刺繍を施すのは骨が折れる作業であったが、刺繍が好きなだけあり、セシルの刺繍の腕前は良く、予想より早く仕上げ終わった。自分で言うのもなんだが、なかなかの出来だ。


今後、セシルには私に付きながら、オーレノアの仕事も行ってもらう。もちろん給金も支払う。私の代わりに表に出てもらい、顧客とやり取りしてもらう。私はデザイナー兼職人に徹することにした。


デビュタントでは久しぶりに父と対面した。特に親子らしい会話もなく、必要最小限の接触で終わった。刺繍の宣伝ができたため、親子の事情など大したことではない。オーレノアの評判も上々だ。そんなとき、領地で土砂崩れが起き、大規模な損害が出てしまった。父は上に下にと金策に駆け回っている。そろそろ貴族の娘としての責務が回ってくるときかもしれない。私のことを放置してしながらも、捨てなかったのは、こういう時のためだと理解していた。



そうして、私は父の執務室に呼ばれた。執事経由で済む話ではないと言うことか。父の執務室など、いつ以来だろう?いや初めてか?呼ばれた理由は、サミュエル・スペンサー子爵様が資金援助をする代わりに、私との面会を求めているとのこと。何故?父自らが差し出すならわかるが、相手からの希望?私が表に出たのはデビュタントの時だけだ。義妹と間違っているのではないかと思ったが、どうもそうではないらしい。資金援助が絡むため、断る選択肢はなさそうだ。


サミュエル・スペンサー子爵様といえば、金髪に青い瞳で見目麗しいが、言いよる令嬢たちを冷たく薙ぎ払うことから、社交界では"氷の貴公子"と呼ばれている。令嬢たちには冷たいのに、街では舞台女優に入れ上げていると聞いている。社交もしていないのに、何故知っているかって?サロンのお客様を相手にするには、情報が全てである。失言は命取りだ。貴族と平民からの情報を整理し、状況を判断することは大事な処世術である。


面会日当日、私は1人でスペンサー子爵家を訪ねた。父は同席しようともしない。失礼ではないかと思ったが、婚約を申し込まれたわけではないし、資金援助を受ける前段階だからいいのかしら?私としては1人の方が気が楽なので、良しとした。姿を現したスペンサー子爵様は噂に違わず、見目麗しく、その姿に目を奪われた。今日の面会の主旨を理解したときには、正気に戻ったが。


先に情報収集しておいて良かった。スペンサー子爵様の話に驚きはしたが、ショックは受けなかった。私と面会を希望した主旨はわかった。父がいなくて良かったと思う。端的に言うと、金は出すから愛人と別れないよーってことか。でもトラブルにならないよう、様々な条件を提示しているし、断ったところで、私はいずれ資金援助と交換で嫁に出される身だ。それなら、初めから悪くない条件を提示しているスペンサー子爵様でいいのではないかと思う。


こちらからも何点か希望を出すと、意外にも飲み込んでくれた。爵位はこちらの方が上だが、今はどんな条件でも、子爵様には縋り付きたい状況なのに、余程、愛人に目を瞑るって言う条件が大事なのであろう。私だって、恋愛を知らないとは言え、初めから愛人がいるのは正直面白くない。そこを弱みに思っているなら、せいぜい利用させてもらおう。


恋人を作る気はないが、結婚してもオーレノアのことを言うつもりはないし、外出がしにくくなることを思うと、オーランドを恋人として、近くに住ませれば仕事がしやすい。安易な考えだが、子爵様も私に目を向けないだろうし、問題ないだろう。


お互いの条件を擦り合わせ、婚約を結ぶ。自分を守るために、公証人の元、結婚契約書も作成したし、これで安心だ。


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