三人目の勇者
馬車に乗り込む三人。荷物のように放り投げ込まれる一匹。すっかりおとなしくなったコックルがボールのように丸くなっていた。
「三人力だ」と、魔獣になった勇者は身軽な足で重い馬と一緒に食料を運ぶ。レイヴンが怖い剣幕で馬の指揮を取っていた。
大量の荷物が塔につくと、魔獣たちが荷物を倉庫へ運ぶ。用がなくなったセーレは四本足から二本足に姿を変えると、大人しくレイヴンの後ろに着く。
「許したわけじゃない」
塔に戻ったレイヴンはどこからかバケツと雑巾を持ってくる。手渡しされるのかとセーレが両手を広げ受けとる合図をすると、レイヴンは二つを床に置いた。少し後ずさりしきょりを取り腕を組み、いい放つ。
「お前には床掃除を任せる!!」
塔の玄関のドア付近の壁にもたれ掛かっていたレオパルドがぼそっと呟いた。
「外の掃き掃除じゃないだけ、マシですよ……」
セーレは片手にバケツと片手に雑巾を持って、このただ広い塔の中を掃除することになった。
「あら、また一人お手伝いさんが増えたのですね」
一生懸命掃除をするセーレを見て、ナーガが微笑みかける。
ずぶ濡れになった凛は大浴場で体を暖めていた。
「魔王様に着るものを持っていかなくては……」
ナーガがクローゼットからそれに真新しい服を二枚抱えている。
「ナーガさん、毎日そんなことしてるんですか?」
部屋の床を水拭きしながらナーガの仕事を横目で見る。
「ええ、だって、魔王様にお仕えする子は沢山いるけれど、同姓は少ないのですもの、私が少しでもお手伝いしなくては……」
ああ……そう……と呆れた顔でセーレは雑巾掛をする。
「そんなにみんな魔王様が大切かねぇ……」
その言葉を聞いて、ナーガは何かを思い付いたようにセーレの近くに寄った。
「そうだ、セーレさん、この洋服を魔王様に持っていってくださいな」
「えっ、何ですか? それはあなたの仕事でしょう?」
ナーガに半ば無理矢理洋服を渡される。
「私はご飯の仕度がありますので……うふふ」
笑いながらナーガはさっさと部屋を出ていってしまった。一人部屋に残されるセーレ。仕方なく凛のいる大浴場に向かった。
「あの、おっかない人に見つからないといいけど……」




