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魔王は勇者の心を虜にする。  作者: mayme
3、二人目の勇者
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(おまけ)守護者同士の戯言

 


 胸ポケットから何かを取り出し、

 それを確認した後、またポケットへしまう。


守護者(ガーディアン)の仕事は魔王様(りん)をお守りすることである」


「……それで、大の大人が二人、ドアの前で一日中突っ立ってるわけ?」


「いや、ここは俺一人で十分だ。お前はーー……そうだな……」


 レイヴンがチラッと窓の外を見ると木の枝が風に揺れて木から枯れ葉が落ちていた。嫌な予感がする。


「庭の枯れ葉の掃除に回ってくれ」


「さっきもそうだけど僕は掃除担当なんですか~!?」


「ちがう。外回り担当だ」



 ***

 (ほうき)を持ち、たらたらと不機嫌そうに庭の掃除をするレオパルド。レオパルドはレイヴンには逆らえない。外から凛のいる窓を見上げると、レオパルドに気づいた凛は窓を開け、顔の横で小さく手を振った。


「レオパルドさ~ん」


 レオパルドが自分の口の前に人差し指を立て、唇をつむいで「静 か に」と合図した。さらに箒を脇に挟んで、もう片方の手も同じく人差し指をたてると、頭の横に持っていく。「(つの)」それはレイヴンの事を指していた。


 凛は慌てて口に手をあて、くすくすと笑う。


 風が吹き付け、木の枝からたくさんの枯れ葉が落ちる。凛の黒い髪が乱れ、小刻みに咳払いをした。


 レオパルドが心配そうに「大丈夫?」と首をかしげる。凛は顔の前で指でアルファベットの「C」の形を作って見せた。たぶん「ちょこっと」という意味だろう……。


 彼女はふと何かを思いつき一旦部屋に戻る。

 レオパルドはまた首をかしげ、しばらく待っていたが戻ってこないので掃除を再開した。


 コツンとなにかがレオパルドの頭にあたる。

 ーー……紙飛行機だ。


 窓を見上げると凛がインクと羽を持っていたので、ただの紙飛行機ではないことが分かった。中を広げるとメッセージが書いてあった。


「掃除が終わったら皆でおやつにするから、手を二回叩いて合図してね?」


 凛が大きく「うんうん」とうなずくと、彼女は再度部屋に戻り窓から何かをレオパルドの元に落とした。レオパルドが下で受けとる。

 それは黒いマフラーだった。

 また凛は大きく「うんうん」とうなずく。


 レオパルドは凛から貰ったマフラーを身につける。「また、あとでね、ばいばい」と手を振る、指先はこっそりピースをしていた。



 ***


 窓を閉めて部屋に戻った凛は咳払いをする。レイヴンがドアをノックして様子を伺っていた。


「風邪か?」


 まるで自分の子供かのように近寄っていき、方膝を立てて凛の額に手をあてる。少し体温が高く熱があるようだった。


「ベットに横になりなさい」


 凛は(かたく)なにレイヴンの手から逃げようとする。


「お前が弱ってても、血を奪ったりしないから……」


 凛は首を横に振りレイヴンを避ける。拒まれるので少し怒ったレイヴンは凛を無理矢理抱っこするとベットまで運んだ。


「今日は朝からご機嫌斜めだな……?」


 ベットに寝かせると毛布を首までかけ、乱れた髪の毛を直す。子供のご機嫌をとるように頭をなでなでしたのだが、一向に凛はレイヴンと目を合わせようとしない。


 すると窓の外から二回ほど誰かが手を叩く音がした。その音に気付きレイヴンが立ち上がろうとしたが、尻尾を凛が掴む。何かを我慢しているかのように固く閉ざした唇からやっと言葉が出た。


「レオパルドと仲良くして……」



 ***


 大分、庭の掃除が終わったので手を叩いてみたけれど、凛は部屋から出てこない。レオパルドはちょっと寂しくなって、塔に戻ることにした。


 塔の入り口の重たいドアを開けるとそこには仁王立ちで構えているレイヴンの姿があった。びっくりして声を上げるレオパルド。

 すると、レイヴンは何も言わずにレオパルドに背を向け中に入った。


「早く部屋に戻れ」


「へ……?」


 意味がわからず、言葉を聞き返す。

 苛立ちを隠したままレイヴンはさっさと部屋に入るように手で合図する。むすっと口をへの字にしたまま小さい声で呟いた。


「俺達が不仲なのを凛が心配している……風邪まで(こじ)らせて……守護者(ガーディアン)失格だ……」


 レオパルドは凛に怒られたのだろう、あの堂々としたレイヴンが悄気(しょげ)ているの物珍しそうに見つめる。



 ***


 部屋に戻った二人は凛のそばに近寄って様子を伺う。やはり熱が出てきておやつどころではなくなっていた。


「レイヴンさん僕、ナーガさんを呼んできます」


 小さな彼女の体調不良に慌てふためく大人二人。

 そしてずっと不機嫌だった凛と二人きりにされ、レイヴンも迷っていた。


「レイヴン……」


 凛が熱でうなされながらレイヴンの名前を呼ぶ。


「レイヴンになら私の血を少しだけ、わけてあげてもいいわ……だけど……満月まで……。もう少し……」


 そういい残すと凛は目を閉じた。


「私の守護者(ガーディアン)……」


 レイヴンは凛の頬を撫でる。


「凛……俺は……」


 ガチャリとドアが開いて、ナーガとレオパルドが部屋に戻ってきた。ナーガが凛の顔に冷たいタオルをあてて、汗を拭く。洋服を着替えさせるのに「男の子だから」と部屋から出されてしまった。


 また、先程の状態で二人はドアの前で凛の体調が良くなるのを仲良く待つことになったーー……。


 レイヴンは自分の胸ポケットから懐中時計を取り出し、その針を確認した。二本の針は少しずつ少しずつわずかに針を動かして、次の満月までの時間を刻んでいた。

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