魔王は勇者の心を虜にする
凛はゆっくりとベットから目を覚ますと横にはナーガが眠っていた。メイド服を着ていない、パジャマ姿の彼女は始めてみる。羊の角は生えているが、その他は人間と変わらない。すやすやと気持ち良さそうに眠っていたので起こさないようにそっとベットから離れる。
廊下に繋がるドアを少しだけ開けると、腕を組んだレイヴンが仁王立ちで立っていた。
「……寝てないの?」
「俺は立ちながら休める」
「……嘘」
レイヴンは凛の頬の絆創膏が気になっていた。
「痛くないか?」
「……剥がしてしてみてもいいよ」
恐る恐る、湯で卵の皮を向くように小さな絆創膏を野獣の大きな手で剥がす。傷はすっかり消えていた。
「回復が早いな」
レイヴンは安心して肩の力が抜けた様だった。昨日の騒ぎの後、そのまま立って、凛が起きるのを待っていたのだからだいぶ疲れただろう。
「私、二人の水を取って来るくるからここにいていいわよ」
「それなら俺が……」
「私に行かせて」
凛はぷんすかと怒って、レイヴンを置いて一人で一階のキッチンの方へ歩いて行った。一階では手の器用な魔獣たちがみんなで燃えてしまった場所を修復したり、綺麗に掃除をしていた。
その中に一人。黒髪のやたら態度がデカイ、不貞腐れた魔獣がいる。頭から二つの耳がひょこんと顔を出しそれは表情とともに小刻みに動く。背中には鷲のような大きな翼をつけており、お尻からは細く長い尻尾が右左に動く。筋肉質で体格の良いレイヴンとは正反対で、背の高くスマートな魔獣だった。
よく見ると髪を一つに縛っていたので分からなかったが、昨日見た勇者に似ている。
「えっ」
思わず凛は驚いて立ち止まる。
魔獣は凛の姿を見て気づいてはいたが、昨日のことで迂闊に手を出すと数倍にされて自分に帰ってくることが身に染みて分かったので、また不貞腐れて掃除に戻った。
「もう悪さはしないよ。というか、しようと思ってもこんな弱っちい力じゃ……何も出来ないしね?」
魔獣は人差し指を立てると、ライターの火でも付けたかのような火力の弱くなった力を凛に見せる。
「ごめんなさい……」
レイヴン同様凛はまた勇者を巻き込んでしまったことに酷く落ち込む。
「ねえ、魔王のお嬢ちゃん。僕ここに仕えることになったんだけど、貴女の名前は何て言うの?」
勇者が落ち込んでいる凛に近寄ってきて目線を合わせて言った。
「大瀬凛。凛よ」
「ふーん……」
勇者はまだちょっと納得がいかないと言ったツンとした顔をしていたが凛が泣きそうだったので、許した。
「僕の名前は、レオパルド。これからよろしく……ね?」
レイヴンが近くにいないことを確認して、レオパルドは自分が傷つけた凛の頬にごめんねとキスをしたー……。




