6-12
午後のテストも問題なく終わり、下校となった。
「お疲れ様です、先生」
試験会場から出ると廊下で鞄を持った冬夜が待っててくれた。
「冬夜こそ、鞄ありがとう」
「いいえ、当然のことです。先生の大切な鞄をお守するのも下僕の使命です!」
例え、腕がちぎれようがお守りしますと物騒なことを言う冬夜に遠い目をしてしまった。
通常運転だな、この猫は。
「さ、早く帰りましょう。」
「あ、うん」
今日も帰ったら明日のテストの勉強をしよう。
「……………」
そんなことを考えている琴羽の隣にいた冬夜がちらりと後ろを見る。
後ろにはこちらを憎悪に満ちた目で見つめる宮野の姿があった。
「(あの羽虫に何か吹き込まれたか?)」
嫌な予感がする。
明日からより一層警戒をしておくべきか。
近頃、視線が疎ましくて仕方がない。彼女は気づいていないようだ。
いや、いっその事脅しておくのもアリか。息の根を止めると琴羽に迷惑がかかる為、今はそれをしないように我慢をしているのだ。
「冬夜、どうしたの?」
彼女の視線など知ることのない琴羽が様子がおかしいことに気づいて声を掛けてくる。
「なんでもありません。つい、先生の夜食をどういたしましょうかと考えていたところです」
「え、本当?冬夜の作る料理、全部美味しいから嬉しい」
嬉しそうに微笑む彼女を見ているとどす黒い心が洗われていくのが感じる。
そんなことを考えているなど微塵も気づいていない彼女にそんなところも変わっていないなと思うのであった。
学寮に戻り、早めの夕食を食べてすぐ部屋に戻り明日のテストに向けての勉強を始めた。
「えっと、明日は現代社会、退魔学、英語、魔獣学、科学と実技で変身魔法かぁ」
一般知識と魔法科目のミックスってなかなかのハードスケジュールだな。
とりあえず、曖昧な部分を教科書で確認して、引っ掛かりそうな問題をやって早めに寝よう。
コンディションも大事だしね。
そして、教科書を開いて勉強を始めた。
その間は無音の空間となる。
そんな主人の姿を見ながら冬夜は一人、どこから出してきたか分からないビデオカメラで彼女の様子を録画し始める。
一度、集中してしまうと彼女は声を掛けられるか、肩を軽く叩かれるなどしないとずっとその作業をし続けるのだ。
なのでこうして録画していても気づかない。
え、何故録画をするかって?それは趣味の一環だと言っておこう。
色々な箇所から撮って満足していると時計をチラッと見る。
かなり時間が経っていることに気づく。
そろそろ就寝の準備をしないと明日に響く。
しかし、彼女は時間が経っているのにも関わらず、ずっと机と向き合っていった。
ビデオカメラを仕舞い、そっと彼女に近付いて、耳元で囁く。
「先生、そろそろお休みにならないと明日に響きますよ?」
「ひょわひほう!!!?」
なんとも言えない叫びをあげる。
ばっとこちらを見た彼女は真っ赤な顔をしながえら、口をパクパクさせている。
可愛らしい反応に思わずくすくすと笑ってしまう。
「今日はそのぐらいにしませんと明日に響きます。ああ、それとも早くお休みが出来ますよう私が子守唄でも」
「イエ、ネマス!ケッコウデス!ダイジョウブデス!!!アンシンシテクダサイ!オヤスミナサイマセ!」
片言になりながらさっと席を立って就寝の為に準備をし始める。
ああ、残念。でも、初々しいところもやはり愛らしい。




