6-10
「朝からすっごく励まされたんだ」
「ああ……、だからあいつら凄くやる気だったのね」
「ファンクラブって凄いな」
薫たちに話していると二人そろって遠い目をしてしまった。
「今日は調子がいいの。昨日は凄く疲れたのに」
「まあ、琴羽がそれでいいならいいとは思うけど」
「こんなに嬉しそうな琴羽、久しぶりに見たわ」
昼食を取りながら話をしていた。
「本当、いい子たちだよねぇ」
「……………いい子か?」
「まあ、いい子なのか?」
と顔を見合わせる二人も今日も可愛いと思う私であった。
「……………ん?」
とぼとぼと中庭に通じる道を歩いていた高堂時雨はどこかで聞いたことのある声が耳に入ってきたので足を止めてそちらを見るとあの問題児の永澤忍が宮野愛と何やら話をしている。いや、揉めているのか?
そっと柱の陰に隠れてじっと話を聞く。
「あのさ、君。しつこいんだけど?」
「貴方は騙されているのよ!遠城さんに!」
「またその話、うっざ」
忍はうんざりした顔しながら宮野と対面していた。
琴羽の部活に入部してからというもの彼女と会うとこうやって話しかけられてくるのだ。しかも内容が琴羽に騙されている、こちらの部活に入るべきという。
「あのね。俺は自分の意志で入ったの」
「いいえ!彼女が貴方を”洗脳”しているの!」
「だーかーらー!”洗脳”されてないって言ってんだよっ」
苛つきながら話す。
毎回毎回この同じことを言われれば苛々して堪らない。
「大体、なんで琴羽ちゃんが"洗脳"なんて禁術を使っているって思うんだよ」
「そ、それは天使が言っていたから」
「へぇ、証拠はないままで言ってんのかよ。お前」
頭、おかしいんじゃね?と言うと宮野は自分が馬鹿にされていることが分かり、顔を真っ赤になっている。
「話は終わり?さっさとどっか行ってくんね?」
「~~~~~~~~~~っ!!!!きっと後悔するわよっ!」
そう捨て台詞を吐いて去っていた。
「…………盗み聞きなんて良い趣味してんじゃねーかよ。優等生」
「盗み聞きするつもりはなかったよ」
ひょこと柱の裏から出てきた時雨にちっと舌打ちをした。
あまり見せたくなかった現場だったのだろう。
「君も目をつけられていたんだね」
「ああ、入部してから会う度にな。なんなの、あの女」
頭がおかしいと悪態をついて疲れたようにため息をつく彼に近付いて時雨は腕を組んだ。
「にしては、何で君だけなんだろうね。僕や他の子たちにはそんな話されたなんて聞いたことがないよ」
「本当だよ。なんでお前には話しかけていかないわけ?意味わかんない」
まさに彼女の行動に関しては謎が多すぎる。
他人から流れてくる話を聞いていても本当に意味が分からないのだ。
部員に関しても確かA級クラスの使い魔を従えている生徒や優秀な成績を持っている生徒が多い。しかも、彼女は部員に相応しい生徒を選定しているという。だから、周囲の生徒から嫌われているのもそういう問題もあるのだ。
で、部員になった生徒もなんだか性格が変わったというのもある。
前までは優しかったのに今は宮野が中心に頭が回っているみたいで何かと彼女の素晴らしさを話すようになったのだという。
他の生徒も同じような話をするようになった。
まるでそちらの方が洗脳されているようだ。
ただ、これに関しては生徒からも苦情が出ているから先生たちが対応しているようだが、次々と問題行動を起こすせいで手が回らない。
「でも、洗脳なんて”黒魔法”の一種を彼女は気づいたんだ?」
「大方、あの天使様だろ?」
「ならなんで、その天使とともにいないんだ?天使と共にいたほうが信憑性も上がるというのに」
「……………そういえば、妙だな」
確かにおかしな部分がある。
天使と一緒にいるところを見かけるのは授業の時ぐらいだろうか?
でも、宮野自身が自由に動いている時を見たことを思い出してみると天使が傍にいたことが少ないと気づく。
使い魔を自由にさせるのはその主人の勝手ではあるが、宮野が困っている時にいないのは少し変だ。使い魔は主人の危険が迫っている時ほど離れることがないのが常だ。




