表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/19

魔王、デートの相談をする

遅くなり申し訳ございません。プライベートでいろいろありました……


※後半、BL表現があります。不快に思う方は読み飛ばしてください。

 鼻歌を歌いたい気分とは、きっとこういうのを言うのだろう。

 「ふふ……」

 意識しようとしても、笑みが浮かぶのを止められない。


 結果的にとはいえ、恭司との遊園地デート。

 少女マンガで見て以来憧れだったあれが、ついに実現するのだ。

 これが喜ばずにいられようか!


 時間があるときにでもプランを立てねばな。

 我が朱雀院財閥が誇る遊園地だ、最高の楽しみ方を恭司に提供したい。

 そうだな……クライマックスは観覧車、これは外せない定番だな。

 気分を盛り上げることができれば、ここで告白するのもいいかもしれない。


 ……うん、悪くない。

 決めたぞ、このデートで恭司に告白しよう!

 そのためにも、最高のデートプランを考えるぞ!!


 「達哉、フェニックスランドの資料と評判、あとお勧めの楽しみ方等の情報もあれば集めておいてくれ」

 「かしこまりました」


 よし、これで情報については問題ない。

 それを如何にして『一日で楽しめるプラン』にするか、そこが腕の見せ所だ。

 魔王城で鍛え上げた私の作戦能力よ、今こそ本領を発揮するのだ!


 「ふはははははは!!」

 「お嬢様ー、家庭教師の先生がいらしてますよー。ドン引きしてますよー」


 あ、しまった。ついテンションが上がって魔王時代の高笑いをしてしまった。

 それと先生、驚かせてすまない。






 恭司のことを考えながらのプラン考案はなかなか楽しい時間だった。

 うむ、記念日のことを考えるカップルの気持ちがよくわかった。


 とはいえ。

 「むむ……」

 意気揚々とした数日前とは逆に、今私はうなり声を上げていた。


 いい感じにプランはできてきたと思うのだが、どうも何か物足りない気がしてならない。

 誰かに相談しようにも、まず達哉は色々頼みすぎたせいで捕まらないほど忙しくなっているし、


 『ん? 玲奈ちゃんが考えるなら恭司君だってなんでも喜んでくれるに違いないさ』(Byお父様)

 『なら、俺らがヒーローショーでもやって人質役を玲奈様、助っ人役に恭司さんを『却下だ馬鹿、大体お前ら園内警備担当だろサボるんじゃねぇ』……はぁーい……』(By直人&護衛の吉田)


 と、周りはこのように当てにならない。

 橘のおじさんおばさんは論外だ。万一恭司にバレたら台無しになる。

 とはいえ、あと相談できそうなのといえば……


 「おや、お悩みですかね?」

 不意に横から声をかけられた。

 上半身を斜めに傾げて覗き込んでいるのは、知った顔。


 「碧依あおいか。どうした?」

 「どうしたはこっちの台詞なんだけど。もしかして、今度のデートのこと?」


 穂村碧依。高校で知り合った同級生だ。

 ちなみに恭司が言うところの『攻略対象』、久慈原翔の幼馴染でもある。


 「おい碧依、あんま朱雀院を困らせるなよ」

 お、ちょうどこの男もいたか。

 「しっつれーな。朱雀院さんが悩んでるみたいだから声かけただけじゃん」

 「ほんとか?」

 「何その疑いの目」


 この男こそが久慈原翔。

 この学園には短距離走の速さを買われて入った、いわゆるスポーツ特待生だ。

 碧依とは付き合いが長いせいか、よく一緒にいるところを見かける。


 「……まあ、とにかく! 何か悩んでるなら聞くよ? 恭司君関係なら翔に話してもいいし」

 「ってこら、強引に俺を巻き込むな」

 私から見ても仲が良さそうだ。……羨ましい。

 ……それはさておき、ここまで言ってくれるんだから相談してみてもいいのかもな。


 「実は、今度のデートでどういうコースでいこうか悩んでいてな」

 「コース? でもフェニックスランドって朱雀院さんとこのだよね?」

 「いや、さすがに社長の娘だからって傘下の遊園地を事細かく知ってるわけじゃないだろ」

 「そうなの?」

 碧依の問いに、頷きを一つ。

 残念ながらそうだ。そもそも、中に入ったことすらない。

 なので、ガイドブックやインターネットで調べた情報から考えていたのだが。


 「どうも物足りない気がしてな……恭司にも、渋々ではなく心から楽しんで欲しいのだが」

 「まあ、あんな形で『デート』させられちゃなあ……いてっ」

 確かに、と言わんばかりの翔を碧依が肘で小突く。

 その通りではあるのだが、やはり言葉にされると堪えるな。


 「とにかく! 話を戻すけど、フェニックスランドは朱雀院さんとこの遊園地だよね?」

 「そうだが」

 「だったら、そこで働いてる人達に聞いてみてもいいんじゃない?」


 ……なるほど。

 従業員に聞く、というのは盲点だった。

 帰ったら、お父様に相談してみよう。


 「関係者だけにわかること、っていうのもあるかもしれないし」

 「そうだな。ありがとう、やってみる」

 碧依に礼を言うと、足取り軽くその場を離れた。






 「……なんであの三人が一緒に」

 その一部始終を、天宮ちとせは見ていた。


 悪役令嬢、朱雀院玲奈。

 攻略対象の一人、久慈川翔。

 翔ルートのライバルキャラ、穂村碧依。


 本来なら、こうして仲良さそうに話をする関係ではない。

 これもやはりバグなのか、と思っていると。


 「ふふ……うふふふふふふふふふふふ」

 突如不気味な笑い声が聞こえ、思考の海から強制的に引き戻された。

 そちらを見れば、翔が呆れた顔で碧依を見ており、その碧依は……


 「萌ええぇぇぇえぇっ!! やっぱサイコーだわ朱雀院さん、マジで女の子なのが惜しい!!」

 恍惚とした表情で叫びだした。


 「珍しくまともに相談に乗ってたと思えば……結局妄想の肥やしかよ」

 「いいじゃない! 朱雀院さん、男体化すると私の理想のキャラなんだから!! ああ、早く溢れるこのネタを形にしたい!!」

 「お前、まだあのマンガ描いてるのかよ。青龍なんとかのカレー生活」

 「『青龍院玲央様の華麗なる生活』よ!! 言っとくけど、結構好評なんだからね!!」

 「知るか。ホモマンガって時点で興味ねえ」

 「ホモじゃなくてBLって言いなさい!!」


 通りすがりの数人がまたか、と呟きながら立ち去る中、ちとせだけが硬直していた。

 穂村碧依。

 幼馴染ラブの普通の少女だったはずの彼女は、何をどう間違えたか腐女子に成長してしまったらしい。


 「完璧なお金持ちの御曹司が、恋をした庶民の男の子にだけは上手くやれない。そんな不器用さが萌えるのよ!」

 「ああわかった、お前の好みは充分わかったから。これ以上大声で叫ぶな、みんなが見てる」

 「あら失礼、つい熱が」

 「ったく……話は後で聞いてやるから、とりあえず落ち着け」

 「はーい。なんだかんだでネタ語り付き合ってくれるよね、翔は」

 「お前をほっとく方が怖いわ」


 ちとせは知らず、拳を握り締めていた。

 (……何よ、あれ……)

 あんな会話なのに。

 楽しそうな碧依と、口調の割に優しい目をした翔は、まるで一枚のスチルのようで。


 「……帰ろ」

 見ていられなかった。




 帰宅後、ちとせが「青龍院玲央様の華麗なる生活」を検索してみたら、かなりの数のWebマンガがヒットした。

 最新話まで読み漁った結果、主人公によろめきそうになったのはここだけの話。

ちなみに、玲奈も恭司も自分達が碧依の妄想のネタにされているとは知りません。

次回、やっとデート当日に入ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ