魔王、勝負に挑む
遅くなりましてすいません。オフで色々ありまして……
どういうわけか、わらしべ何とかという勝負を天宮ちとせとする羽目になった。
いや、どんな勝負にせよ負けるつもりはないのだが。
こういうのは初めてだ、気を引き締めてかかろう。
さしあたっての問題は、
「なんでこっち来るのよ!?」
「別に方向やルートの指定はなかっただろう?」
「そういう問題じゃないのよ!!」
勝負開始と同時に走り出したはいいが、どうやら天宮ちとせも同じ方向に決めたらしい。
文句を言いながらついてくるから、正直うるさい。
というか、走りながら叫ぶのは体力を更に消費すると思うのだが。
それはさておき、たすきをかけた者を探すのだったな。
見回すと、早速一人赤いたすきをかけた男が歩いていた。
と、天宮ちとせがスピードを上げて、その男めがけて走っていった。
うむ、ここは様子を見るのもありか。別に、「一度誰かと交換した人間から交換してもらってはいけない」とは言われていないしな。
適当なところで足を止めると、私はしばし二人の様子を伺った。
やがて、
「何よこれ、タワシぃっ!?」
天宮ちとせの絶叫が飛んできた。どうやらハズレだったらしい。
そうとなれば長居は無用、他をあたろう。
天宮ちとせ、お前の犠牲は無駄にはしないぞ。
「あっこら待ちなさいよ、あんたもタワシを受け取れぇ――――っ!!」
再びの絶叫を背に、私は新たなターゲットを探して走り出した。
それからしばらくは、特に問題はなかった。
赤いたすきの人間しか見つからなかったが、今は洋菓子店のクッキーを手に入れている。ここまでは順調だ。
残り時間は……20分弱か。この先いい物が手に入ればいいが。
そう思いながら移動していると、願いが通じたのか。
「……黄色いたすき!!」
をかけた男が歩いているのを見つけた。確か、こいつはいい物を必ず持っているのだったな。
ならば、逃すわけにはいかない。
「「交換を!!」」
私とかぶる誰かの声。
振り向くと、やはり天宮ちとせだった。
「って、なんであんたまでいるのよ! 私が先よ!」
「先や後に関するルールはなかったはずだが?」
「ああもうああ言えばこう言う!!」
それはお前の方だと思うのだが。……とは言わない。
話が通じる相手ではないのは先日の件で学習した。
「交換はいいけどお二人さん。俺は特別ルールがあるのは覚えてるよね?」
黄色いたすきの男が困った顔で話しかけてきた。
そういえば、特定の物と交換か課題をクリアする、だったな。
私と天宮ちとせはそろってうなずいた。
「んじゃ、お二人さん」
男は一拍ほど間を置き、
「タワシ持ってる?」
「「…………え?」」
再び、私と天宮ちとせの声がかぶった。
タワシといえば、最初に天宮ちとせがもらっていたはずだが……
「うそーっ、さっさと交換しちゃったわよ!?」
……案の定、とうに手放してしまったらしい。
無理もない。私も何も知らなければそうするだろう。
しかし、ハズレと見せかけた重要アイテムだったとは……やるな、放送研究会とやら。
その知略、もし魔王軍にあれば心強かったかもな。
「なら、課題の方にする? まずこの暗号を」
「タワシもらってきます!!」
天宮ちとせは遮るように叫ぶと、一目散に来た道を戻っていった。
暗号と聞いた途端顔色が変わったな……もしや、苦手なのか?
「あ、安心していいよ、そんなに難しくない暗号だから。それで、どうする?」
男がまだ残っていた私に聞いてきた。
タワシを取りに行ってもいいが、あれから時間が経っているからさっきの男が同じ場所にいるとは思えない。となると、探す分時間のロスになる。
「課題にする。その暗号とやらを見せろ」
「おっ、挑戦するんだ。はい、これに書いてあることを実行してね」
そう言って渡された紙には、
"G0 70 7H3 L1BR4RY, 4ND G37 53V3N GR33N C4RD5"
と書かれていた。
おそらく最初は英語の"Go"なのだろうが、その先が全くわからない。
暗号ならヒントがあるはずだが、それらしきものはない。
となれば、これだけで解ける暗号ということだ。
しばらく見つめていると、ふと一部が英単語に見えてきた。
となると、これは……そういうことか!
「わかった、行ってくる!!」
移動を開始すると、いってらっしゃーいと男の声が後ろから聞こえてきた。
走りたいところだが、ここは廊下だからな。早歩きにしておこう。
幸い目的地……図書室には何の問題もなく到着した。
中に入ると、入り口近くの机に色々置いてあった。
まず、「関係者以外触らないこと」と書かれた紙。
それから少し離れた位置に赤、青、緑、ピンクのカードの束。
色鉛筆やシャープペンなどの筆記用具。
どこかの会報誌らしい、小冊子が数冊。
「これだな」
私は迷うことなく、緑色のカードを手に取った。
束から7枚抜き取る。念のため、もう一度枚数を数えた。
よし、後は戻ってこれをさっきの男に見せるだけだ。
急ぎ足で先程の場所に戻ると、男は待っていてくれた。
まあ、課題を出しておいて移動するのもおかしいか。
それはさておき。
「これでいいか?」
持って来たカード7枚を出す。受け取った男はひいふうみい、と数え。
「はい正解。んじゃ交換するのは……っと」
ごそごそとポケットを探って、取り出してきたのは黄色い紙だった。
これがいいものなのか?
「ナンテンドースティッチの交換券だよ」
私の疑問を察したか、男が説明してくれた。
ナンテンドースティッチとは、確かゲームをするための機械だったな。恭司が高くて買えないとか言っていたのを覚えている。
これは恭司が欲しがっていた物に違いない。
だが――
「あれ? どうしたの?」
「……………………」
しばしの逡巡の後、私はその紙を――
暗号の答え。
0=O 1=I 3=E 4=A 5=S 7=T
GO TO THE LIBRARY, AND GET SEVEN GREEN CARDS
→ 図書室に行って、緑のカード7枚を入手しろ
ちなみにじっと見てれば、英文っぽく見えてきます。




