第2話:鉄の棺桶と亡霊
三機目。
無人機の頭部を叩き割る。装甲がひしゃげ、火花が散る。
一方的だった。
動きはマニュアル通り。予測は容易い。チュートリアル以下だ。
「……退屈だな」
ため息。
直後だった。
警告音。
レーダーに、規格外の速度で接近する熱源。
「増援か」
振り向く。強烈な衝撃。
機体が弾き飛ばされる。姿勢制御スラスターを吹かし、無理やり着地した。
砂煙の向こう。
一機の異形が立っていた。分厚い胸部装甲。両手に巨大なパイルバンカー。
支援機が、そいつにレーザーを放つ。
直撃。
敵の左腕が吹き飛ぶ。
普通なら激痛で気絶する。強制シャットダウンするダメージだ。
だが、そいつは止まらない。
体勢すら崩さない。
右腕を構え、支援機の懐へ潜り込む。パイルバンカーを突き出した。
鋼鉄の杭が、味方機を串刺しにする。
「な……!」
息を呑む。
腕を犠牲にし、必殺の間合いに踏み込む。防御を完全に捨てた戦い方。
――見覚えがある。
「嘘だろ……?」
悪寒。
かつて『リンク・アリーナ』で、何度も俺を苦しめた必殺技。
肉を切らせて骨を断つ踏み込み。
「ヴェイン……なのか?」
敵機がこちらを向く。カメラアイが赤く光る。
俺は通信を開く。
「管制官! スキャンしろ! 中身はどうなってる!?」
「落ち着け。データは出ている。あいつは無人機だ」
冷たい声。
「生体反応はある。だが肉体はない。脈も呼吸もな」
「……どういう意味だ」
「脳髄だけだ。胸部装甲の奥に、脳が直接繋がれてる。行方不明者を拉致して生体パーツにする、テロリストの常套手段だ。ただ殺し続けるだけの、イカれた鉄の棺桶だよ」
血の気が引く。
脳髄。拉致。
姿を消した親友。
もし、あいつが肉体を奪われていたのだとしたら。
痛覚もなく、死も許されず。あの鉄の中で、部品として使い潰されているのだとしたら。
『俺はこの重さが好きなんだよ。命が乗ってるって感じがするだろ?』
笑い声が蘇る。
ふざけるな。
命の重さなんて、どこにもないじゃないか。
手が震える。激しい怒りだ。
「……管制官。俺がやる」
「無理をするな。今のままではお前の処理能力が追いつかないぞ」
「なら、追いつかせる」
歯を食いしばる。安全装置に手を伸ばした。
「ヴェイン。……そこから出してやる」
機体が吠えた。




