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好きなんだからいいじゃない  作者: 優蘭ミコ
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183.納豆巻きで何を呑む

納豆の性質上、納豆巻きに合わせる日本酒は冷よりぬる燗か熱燗が良いと言われてるんですが私は冷の純米で食べるのが好き。これはひょっとしたら生まれ育った土地柄なのかもしれません。

 今は技術の発展でほぼ区別がなくなってしまいましたが江戸時代くらいまで遡ると関東から南は『丸納豆』、以北は『ひきわり納豆』が主流だったんですって。


 納豆の発酵具合ってのは土地柄、特に気温が大きく関係してて暖かい土地ならば納豆菌は安定して発行してくれるけど納豆菌も生き物だから寒いと活動が鈍くなって発酵が進まないことがあるそうな。そんな時、大豆を砕いて細かくしたものから作ると安定して発酵するから失敗する確率を下げる事が出来たのは寒い地域で生まれた発酵させるための知恵と言ってよいのかも知れません。


 そして、今ではお寿司として完全に定着した『納豆巻き』も岩手県盛岡市にある『三寿司』が発祥でこれまた東北で生まれたものなんだそうですよ。昭和38年(1963年)に先代が考案して勿論、当時は寿司ネタとして納豆はかなり珍しかくて、後にテレビ局が調査したところそれ以前に正式メニューとして納豆巻きを出していた店が確認されず発祥の店と呼ばれる様になりました。『全国納豆協同組合連合会納豆PRセンター』公式記録ですので間違いはないと思います。


 納豆巻きの歴史って60年くらいのものだったんですね、江戸時代あたりに沢庵かなんか刻んで混ぜてご飯と一緒に巻くくらいのアイディアは出てそうな気がしたんですがそこまでポピュラーな食材じゃなかったのかなあ、確かに納豆がポピュラーにったのはお醤油の普及と関係があって、江戸の街でお醤油は元々上方、つまり関西からの輸入に全て頼ってたって言っちゃうと少し大袈裟かもしれませんが、かなりの高級品で一般庶民はとてもじゃないけど手の出せるものではありませんでした。


 時期や品質で変動は有りましたが醤油1升(約1.8L)がだいたい数10文〜100文前、これがどのくらい高いかって言うと当時は蕎麦一杯が16〜20文くらい、日雇い労働者の日当が100〜200文程度、つまり醤油1升 ≒ そば2〜5杯分 ≒ 半日〜1日分の労働賃金に近いこともあるくらいの値段だったものですから長屋住まいの江戸っ子がおいそれとは入手できなかったんです、高くてさ。それが1,600年代には野田の醸造家(後のキッコーマン系)や銚子の醸造家(後のヤマサなど)だいたい同時期にお醤油の醸造を始めてそのあたりから広がって納豆やお蕎麦、お醤油て美味しくいただけるお料理が広まったのですよ。


 実はこの納豆巻きで冷酒呑むのが好きでさぁ、特に夏場によくやるんですよね。ビールじゃなくて冷酒っていうところにポイントがあるんです。だってお寿司って結局炭水化物が半分でしょ、意外とお腹に溜まるのですよ。そこにビールは少し辛いものがあると思いません?若い頃はそれでもイケたんですがここ最近は……一応一杯目はビールで喉を潤しておいて次は冷酒でしっかり味わながら納豆巻きを頂くと言う段取りになってます。


 で、納豆巻きの納豆って、丸納豆派ですかそれともひきわり納豆派ですか?一般的にはひきわり納豆を使う場合が多いみたいなんですが、コンビニで売ってる手巻きの納豆巻きって丸納豆使ってることが多いですよね。コンビニ商品って実はかなり視覚重視だって聞いたことが有るので丸納豆を使った方が迫力有って食べた時の満足感もアップするからっていうところが有るんでしょうね。ひきわり納豆って意外と水っぽいと言うか細かくなってる分、粘り成分を持ってる部分の面積が広いから時間が経つとベチャットしやすくなるって言う理由も有るみたいですね。そうなると味も伝わりにくくなるんだそうで、それをカバーしようとしたら丸納豆使った方が有利って考えるのかも知れません。


 でも、パック入りの細巻きタイプはひきわりが使われてて伝統製法で勝負している場合が多いみたいです。でも、正直、コンビニの納豆巻きって高いんですよね、12個入りで税込み430円くらいしますもの。それに対してスーパーのお惣菜コーナーで売ってるのって涙が出るありがたいお値段ですよ。日によりますけどヘタすると税込みで300円切ったりしてますものね。しかも、目利きさんが材料選んでるのか納豆の癖ががちゃんと感じられてコク深くて美味しかったりするんですよね、しかも刻み葱まで入ってたりすることが有ってそれを買い求めた日、私は確実に日本酒で潰れてますね。自宅だから潰れても帰らなくていいから全然問題ないもんね、これだから家呑みってやめられなんですよ。


 納豆巻きに合わせるならぬる燗から熱燗の間位の方が納豆の癖を洗い流しやすいからそっちの方が美味しく感じるって言う意見をよく聞くんですよね。確かにフルーティーな吟醸酒とはさすがにちぐはぐ過ぎで合わないって私も言い切れるんですが、少し冷たく感じるくらいに冷やした純米酒との相性って悪くないと思うんですよ。なんでそう思うか、東北、特に青森県の日本海側の人って『筋子納豆』大好きなんですよ。これはひきわり納豆に少し小さめに切った筋子を混ぜてかき混ぜて頂くっていう食べ方なんですが、これがまぁ日本酒との相性が抜群でこいつが居れば日本酒一升飲み切れるんじゃないかって思ってしまうんですよ。魚卵のぷちぷちとした食感と塩気と独特で良い意味の生臭さが納豆パワーと融合するからなのかも知れませんがこれ考えた人天才だなって私は常々思ってます。だから、納豆の味に慣れ切ってて多少の癖は全部脳内で良い方に変換しちゃってるのかなって思えない事も無い。その食べ方を美味しく感じるのは生まれ育った土地柄が大きく影響してるのかも知れませんね。青森県のお隣、秋田県では納豆にお砂糖混ぜるって言いますし……。


 でも、そういうのを蔑んだ目で見ては絶対にいけないと思います。それはその土地の知恵であり伝統であり、ある意味誇りでもあるんですから。この話のタイトルでもある様に『すきなんだからいいじゃない』なのかなって思います。さて、冷酒で納豆巻きを本日も美味しく頂きましょうか。

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