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魔法将軍テオドール


「確かか?」

「ええ、テオドール様。間違いなく魔法が使われておりますな。それも極めて強力な魔法です。これほど完成された魔法はついぞ見たことがありません」

「ふむ。となると、やはり人間の死霊術師などではなく、死神……か」

「ええ、そもそも死霊術では達人であっても死霊を数匹操るのがせいぜいですよ。兵士達の証言の通りであれば百を優に超えるでしょう。だとすればまさに神の所業です。もっとも死霊術師が何十人といたのなら話は別ですがね」


 死霊術とは術者の魂だけを一時的に冥界へ送り、彷徨える死者の魂を見つけて一時的に現世に引き寄せる術だ。死者の魂を見つけること自体は時間をかければなんとかなるが、冥界では死の巨人モーズグズが雪原を闊歩し、死者の魂を集める死神が空を飛び回っている。もし彼らに見つかれば生きたまま魂だけを地獄へと持っていかれる危険性があるのだ。

 これにより帝国の魔法隊では死霊術を禁術に指定している。仮に死霊術を行使する者がいるとするならば北西のリザードマンの領域に居る呪い師だろうが、ここまで出てくる理由もない。


 数ヶ月前から続く小人の惨殺事件。

 突如として天から降り立ち戦乙女様を倒した死神。

 そして今回の捕虜虐殺。

 どうやらほぼ間違いなく死神が関与しているようだ。


「しかし、これは一体どういうことなのでしょうか? 帝国に敵意があるということであれば帝国兵を殺すはず。なのに帝国ではなく捕虜や三等市民を狙っています」

「分からぬ。だが何かしら目的を持っていることは確かだろう。参謀将軍ベルモンドに使いを出せ。ホシは死神であったとな」

「了解しました」

 

 一体何が起きているというのだ? 神々は一体何を目論んでいる?

 剣の戦乙女スカルモルド様の敗北については緘口令が敷かれている。兵士達に余計な動揺を与えないという点では妥当な策だろう。

 しかし今回のような死神による襲撃が続けば、やがて噂が広がり指揮にも影響を与えるに違いない。

 何かしら対策を打たねばならないな。




「これよりエルフの森攻略会議を始めます」


 癒やしの戦乙女エイル様の音頭で会議が始まった。

 現在帝国はエルフ達による散発的な奇襲攻撃によって多数の被害を出していた。どこからともなく矢を撃たれ、接近しようとすると逃げられる。兵士達は盾や鎧で身を固めてはいるが、エルフの矢は近距離であれば盾や鎧をも貫通する威力だ。追おうにも木から木へと身軽に移動するエルフに追いつくことは至難の業である。森はエルフの庭であり、自由自在に馬で駆けれるような人の領域ではないのだ。


「先発の傭兵部隊には負傷者が続出し、傭兵隊からの脱退を願うものも少なくありません。危険手当として給金を増やしてはいますが、このままでは不満が爆発するでしょう」

「ふん。だから言ったではないかベルモンド卿。素性もわからぬ傭兵など使っては規律が乱れるばかりだ」


 鉄鎖将軍クィントゥスが腕を組みながら不平を発した。

 確かに今回のような危険な任務は傭兵達には荷が重いだろう。何かしらテコ入れをせねばなるまい。


「我が魔法隊を使って森を焼き落とすのは如何かな。木がなくなればエルフ達も奇襲できまい」

「テオドール卿。それは苛烈に過ぎませんか? 森を焼くと言ってもエルフの森は広大ですぞ」

「なに、全てを焼く必要はないのだ。エルフとは森と共に生きる種族。森を焼かれるようなことがあれば、阻止しようと自ら打って出てくるだろう。そこを叩けば良い」

「そうは言われてもな……」


 騎士将軍メリオットが不満そうに言い淀んでいる。

 無論私も豊かな自然を壊すことに抵抗がない訳ではないが、そんなことは言っていられまい。もはや帝国の前にあるのは血の道よ。引くも地獄、進むも地獄。どんな手を尽くしてでも勝たなければならぬ。さもないと、やがては連携のとれた周辺王国に滅ぼされるだろう。ここで尻込みするようであれば始めから戦争などしなければ良かったのだ。


「分かりました。魔法将軍テオドール、貴方の案を採用しましょう」

「しかし、エイル様。人質を取るが如く森を焼き討ちするなど、いささか卑怯ではありませぬか?」

「騎士将軍メリオット。オーディン様は確実なる勝利を望んでおられるのです。ここで帝国兵を無用に消費しては後々の戦で支障が出ましょう。私も兵が傷つく姿はあまり見たくありません」

「……分かりました」


 それから詳細な戦略を検討した後、会議は終わった。

 エルフ族が打って出てくれば良し、出てこなければ本拠地まで森を焼いてみせよう。

 大陸制覇までの道のりは長い。こんなところで躓いている暇はないのだ。


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