あらすじ 第一章 至高の剣と鳥かごの公女
第一話 「召還」
グラナトゥム公国第二公女レオーネ・エネルゲイア・グラナトゥムは、魔術の才能を持たない。
心こそ優しいものの、魔術師、騎士こそが貴族とされていた世界にあっては、彼女の居場所は無かった。
自らを取り巻く人々の不利益を恐れた彼女は、自らの存在意義を賭け、使い魔召還の儀を執り行う。
現れたのはただの平民、黒髪黒目の青年だった。
嘲笑の中、それでも彼女は喜び、愛情を持って彼を受け入れる。
しかし、彼こそは彼女のために使わされた、全てを切裂く刃、信仰対象でもある剣神だった。
第二話 「姫様の元には決まって心配性な女騎士」
レオーネに連れられて彼女の屋敷に向かう。
未だ現世になれない剣神カイは、その率直な物言いでレオーネを戸惑わせる。
屋敷ではレオーネの近衛騎士のサラ・マンスフィールドが待っていた。
レオーネを妹のように思うサラは、使い魔が人間であったことに驚き、カイを警戒する。
カイはサラから、現状について説明を受ける。
1.通常、使い魔は幻想種や、それに類するものであり、カイのような例は長い歴史の中でも数えるほどしかない。
2.使い魔は魔術師、騎士の生涯の友であり半身である。
3.主に害を及ぼすとみなされた場合、殺害されるか洗脳が施される。
4.レオーネにその気は無いが、自分は別である。
5.レオーネは魔力が弱いため、王位継承権が低く、ここでも不当な扱いを受けている。
6.今いる場所は魔術研究機関であり、教育機関でもある。
7.レオーネは厄介払いされてここに来た。
その後、サラはカイの尋問を試みるも、カイは尻尾を現さない。
そして、夜は更けてゆく。
第三話 「塔の主」
カイが召還されたその夜、その場所、魔術研究機関マルブの領主ガイゼリックは立会人コールから召還の報告を受けた。
召還されたのが人間であることを除けば、なんの問題も無かったかに見えた召還であったが、その裏で、召還をスパイしていた魔術師、騎士がカイによって何らかの攻撃を受けていた。
手段は不明であり、その実力はガイゼリックが信頼する立会人コールをして、自分以上と言わしめた。
事態を重く見たガイゼリックは、レオーネの家の監視、付近の家の警護を強めることにした。
第四話 「力があるから誓うのだ」
カリブルヌス騎士団国、現君主の末子、オーギュント・エンロケセール・デ・デュルイは、レオーネの騎士サラに思いを寄せていた。
優しかった彼は、レオーネのことも気にかけており、召還の成功を心から祈っていた。
しかし、召還されたのが男であった報告を受けると、オーギュントの心は乱れる。
さらに、その男が規格外の実力を持っていることを知り、サラだけではなく、レオーネのためにも自らその実力を確かめることに決める。
第五話 「神ではなく人として」
カイは神の世界に思いをめぐらす。
誰が自分をここに送り込んだのか?
上位神であった姉神と現世を司る神に違いなかった。
千年前、姉はカイにレオーネの魂を見せて言った。
―あれを、あなたにあげる。大事になさい―
現世では生きられないほどに美しい魂。
それに心奪われたカイは、その誕生を願い、千年見守り続けた。
その中で、カイは初めて人に対して、恐怖と歓喜、様々な感情を覚えた。
世界を混沌から守る剣として在ったカイは、今、レオーネの元に人として顕現した。
何をなすべきか、どう在るべきかを教えられないままに。
迷うカイは、祈りを捧げるレオーネを見て、彼女とともに、神としてではなく人として生きることに決める。
それは自らの意思ではなく、ただ状況から判断しただけのことであった。
そして、世界は動き出す。




