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偽国戦記  作者: ブレヒトさん
魔晶戦争
77/131

閑話 その二の二、剣聖ウラニア

閑話後半です。

次話から、戦争にもどります。で、魔晶戦争クライマックスに入ります。


*第一話設定、更新しました。

 リールの葬儀のから三日ほどたった日、男爵の三男が殺された。

 スラムに通じるとある路地裏で、隠れて麻薬を買っていたのだろう、厚いマントを被った姿で発見された。背後から切りつけられ、それでも抵抗したのか、抜き放たれた剣を握り締めたまま怒りに歪んだ顔で事切れていた。

 武門の家系として古くから帝国に仕える家の当主であった男爵は、何処の誰とも知れない者に子息が殺されたとあっては、しかも恐らくは麻薬がらみのこと、体面が保てないと判断して内密に処理を申し付けた。その裏で、信頼の置ける部下に犯人探しを指示し殺害を命じた。太刀筋から判断して腕は立ちそうだったが、ためらった後があり、靴跡も残っていた。犯行は稚拙であったから、犯人はすぐに知れると思われた。

 男爵が悲しみに沈む間もなく、三男が死んだ翌日、今度は男爵の弟が殺された。帝国でも剣の腕は確かと名高く、戦場では一騎打ちを買って出るほどの男だった。しかし、よく酒に酔って前後不覚になることがあり、その日も朝から酒を飲んでいたから、おおかた酒の上で喧嘩し、油断したのだと噂された。

 男爵は二日続けの凶事に気落ちするあまり、二つの事件を結びつけるまで頭が回らなかった。

 けれども、さらに次の日、自宅の寝室で娘が惨殺されているのが見つかったことで、彼はようやく己に深く恨みを持つ者の犯行であると思い至った。彼はもちろん潔癖な男ではなかったから、思い当たる節はいくつもあった。しかし、どうして今か、どうして己ではないのか、そして警備の厳重な家の中での凶行に彼は大いに混乱した。しかも、一件目とは異なり、二件目、三件目の剣筋は鋭く、ためらった様子がまったく見られなかったことも男爵、その家人たちを惑わせた。

 その日から、彼は敵をおびき出すために家に閉じこもることにした。軍議には病欠の届出をし、信頼の置ける腕の立つ騎士、魔術士を呼び寄せて家を警護させた。

 けれど、今度は何代にもわたって男爵家に仕えていた家礼が殺された。家に招いた騎士達の世話について話し合っていた彼は、はばかりに立ち、そのまま戻ってこなかった。トイレの個室で発見されるまで、便器の上でゆらゆらとぶら下がっていた。

 その後も続けて、几帳面に一日一人、彼の大切なものが剥ぎ取られていった。

 彼はようやく激怒した。

 失うショックになれてしまい、そのおかげで抱くべき正しい感情取り戻した。彼は残った家族に護衛の大半をつけて首都から離れさせ、召使たちに暇を出した。


 敵は我が家を狙っていると皆は言うが、それは違う。

 私をこそ狙っているのだ。

 凄まじい憎悪をたぎらせて、私の全てを殺しつくすつもりだ。

 そんなことは、決して許さん。

 武に生きるものとして、私自ら相手になってやる。

 逃げも隠れもしない。


 男爵は戦装束に身を包み、たった一人、玄関に繋がるホールで扉をにらみつけて夜を過ごした。

 しかし、彼はいつの間にか寝入ってしまっていたらしい。朝、差し込む日差しで目を覚ました。あまりのふがいなさに、こぶしで腿を打ちつけた瞬間、彼の瞳に何かが写った。

 絨毯の上に転がった犬の生首が彼を見つめていた。

 

「・・・・」


 その犬は、彼の幼い頃飼っていた犬の子孫にあたり、娘が生まれたとき、守ってくれよとその首を抱きしめれば力強く吠え、戦場から戻ったときには、一目散に走りよって来て、彼の顔を舐めまわして迎えてくれた。彼の良き理解者であり、あるいは親友だった。

 彼は立ち上がり、血に汚れるのもそのままに、ただ一人の親友の首を抱いて泣いた。

 そして、狂を発した。


****


 それからは拍子抜けするほどに簡単だった。

 黒騎士の俺からすれば、隠れ家など容易く見つかる。

 けれど距離があったから、着いた頃には夜中、時間はぎりぎりだった。とりあえず、急報で帰ってきた次男の首を風呂場で刺し貫いた。何が起こったかわからずに息を止め、無様な姿を晒す次男に服を着せて、血を拭ってやって身を清めた。噂によれば、彼は父と違って心優しい男らしいから、そのくらいのことはしてもいいと思ったのだ。

 隠れ家の中での殺害に混乱するかに見えたが、家督を継ぐ長男は気概ある男らしく、警護を上手く統率した。しかし、その警護達は俺の実力が彼らを容易く凌駕することに気付いていたようで、暗殺者と対峙することにおよび腰だった。

 だから、いつも通り、ルールに従って毎日一人ずつ殺していった。

 とはいっても殺すべき相手はそう何人もいるものではなかったから、すぐに方がついた。都合五人。五日間のことだった。

 最後に残った長男を殺すとすぐに帝都にとんぼ帰りした。夜を待つ間にリールの墓参りをして、好きだった菓子店のクッキーを備えて手を合わせた。宿の者も参っているのだろう、リールの好きだったもの、好きだった花が供えられていた。小さくても綺麗な花で墓はとても美しかった。どんな墓よりも、美しかった。

 その夜、もう誰もいなくなってしまった男爵の屋敷に忍び込んだ。ベッドに横たわる男爵は、俺を見ても何の反応も示さなかった。

 まあ、そんなものだろう。

 言葉を交さずに、胸に刀を突き刺した。血を噴出した男爵が安堵の笑みを浮かべるのを見て、なんともやりきれない気持ちになった。

 けれど、しょうがない。

 これも仕事なのだ。


 ****


 それからしばらく身を隠し、官憲が何も掴んでいないことを確認してから宿に帰った。

 狼人の娘が俺を見るなり走り寄ってきた。心配そうに、俺の目を覗き込んでくる。


「あの、貴族の方がお待ちです」


 エプロンの前で手を固く握り締めている。


「俺は、へまなどしていないが、となると・・・。あいつはどうしている?」


 先走って、なんの準備もなしに男爵の三男を殺してしまった若い騎士のことを聞いた。


「お申しつけどおり、あれから外には出ていません」


「そうか。俺の気付いていない証拠でも挙がったのか・・・。どんな方だ?」


「若い女性です。とても感じの良い方。私たちのような者が淹れたお茶も飲んで下さって、体を労わってくださいました」


 なるほど。


「構わないでいいから、部屋には誰もいれないように」


 にっこりと微笑んで、心配は要らないと肩を叩いた。


 部屋の中には思ったとおり、なつかしい彼女がいた。

 来る途中に買い求めたのであろう飛蜥蜴のもも肉を揚げたものを片手に、足を組んで机に頬杖を付いていた。


「お帰り」


「謝らないぞ」


「まだ何も言っていないわ。これ、美味しいのね」


 袋に入ったもも肉を寄越したから、手を突っ込んで、一番大きいのを取り出してかぶりついた。彼女は何も言わずに袋からもう一本取り出して、私に微笑み、同じようにかぶりついて見せた。そのまま二人、小さな机に向かい合い、言葉を交さず全て平らげた。

 こうして見る彼女は以前見たときとあまり変わる所がないように見える。長い髪を動きやすいようにまとめて、化粧っけがなく、形のいい弓なりの眉の下の大きな目で俺をじっと見つめてくる。体の線は細いが、姿勢がいいから背が高い印象を与える。タイトなスカートから覗く足をぶらぶらと揺らしながら、俺の言葉をまっている。


「・・・いつも、良い物を食っているだろうに」


 彼女は一瞬浮かんだ残念そうな表情を上手く隠した。なんでもないかのように、かすかに微笑を浮かべる。


「たまに、こういう営養もなにも考えていない、ジャンクなものが食べたくなるのよ」


 知ってるでしょ、と首を傾けた。綺麗だと褒めた耳の形が良く見えるように、髪を掻き揚げる。


「そうだったか?」


 とぼけて見せた。

 かつて屋敷から彼女を連れ出して、屋台でいろいろな物を買ってやった。直接口をつけた俺を見て、目を丸くし、恐る恐る小さく口をつけた彼女の横顔が懐かしい。


「貴方の好きな味ではないけれど、気に入った?」


 頬杖を付いて見つめてきた。青みがかった灰色の瞳がかすかに濡れて光る。

 彼女の頬が桃色に染まり、唇を薄く開けた。


「くっ!」


 俺は噴出してしまった。


「・・・何よ、馬鹿にして」


 まだ立ち上がることが出来ない頃から知っている彼女が精一杯女を演じるのが可笑しかった。


「いや、すまない。すっかり大人になったな。もう、いっぱしのレディじゃないか」


 唇を尖らせる彼女の恨めしそうな視線を避けて立ち上がる。棚から蒸留酒とコップを二つ取り出し、彼女に注いだ。


「で、何しに来たんだ?ケルサスとヤーヘンの戦争で忙しいじゃないのか?」


「私が何もしなくても、みんなが何とかするわよ」


 むっとした表情を浮かべる彼女が一気にあおる。


「暇ってことはないだろうに」


「それは、後。・・・ところで」


 足を組み替える。


「男爵たちを殺したでしょ」


「ああ、腹がたったからな」


 彼女は呆れたようにコップを下ろした。


「軍内部の有力者だったのに、面倒なことして」


「それについては礼を言う。ありがとう」


「何?」


「邪魔が入らないようにしてくれたんだろう?」


「ふふん」


 得意げに酒をあおった。


「要らなかったがな」


 むせて、机をばんばん叩く。

 ハンカチを差し出すと、睨み付けて、平常心を取り戻そうと眉に懸命に力を入れる。


「宗教裁判にかけてやってもいいのよ。この腐れ外道」


 それは困る。


「せっかく、いろいろ助けてあげているのに。今度の事だってもみ消してあげて、それが何?少しは感謝しなさい!!」


「はっ!マジェスティ。ウラニア皇帝陛下!!」


 皇帝陛下はたまらず眼を見開いて、怯えたように体を抱く。


「き、気持ち悪いわ、やめて!」


「はは、やはりお前は面白いな、ウラニア」


 目を細めたウラニアが椅子から立ち上がり、俺を見つめながら床に跪いた。

 ほどいた藍色の髪が、扇のように広がる。


「おお、一角の雄山羊よ。罪の化身よ。汝、何ゆえ血を求むるか。何ゆえマーテルの法に背きたるか」


 顎を挙げて、胸の前で手を組み朗々と歌い上げる。乙女の涙を流して、手を差し出してきた。


「・・・俺が悪かった」


 ウラニアが笑い、つられて俺も笑った。


 *****


「で、どうして来た?男爵のことで面倒なことでも持ち上がりそうか?」


「私が動いたのよ?そんなのあるはずがないじゃない。それに、帝国には貴方と敵対する意志も、余裕もありません。

 様子を見に来た、と言いたいところだけど、残念」


「ベスティアの慧聖か?」


「それでもないわ。さっき、ああは言ったけど、ケルサスとヤーヘンの戦争のこと。何かあれば動ける準備はしてあるけど、ちょっと変なの」


 酒を注いで先を促した。


「ヤーヘンの急な侵攻に対して、ケルサスは訓練中だった軍を投入したことは知ってる?」


「ああ、いまだ内乱の復興に既存の軍を裂いていたから、すぐに動ける若い軍に任せることになったんだろう?それなりの経験を積んではいたが、殲滅戦を覚悟した死に物狂いの相手には分が悪いな。しかもヤーヘンの背後にいるのは商会だ。舵取りを間違えれば、ケルサスは死に体になる」


よく知ってるわね、と彼女は感心して頷く。

まさか売春宿に来た貴族たちが、聞きもしないのに口を滑らせたとは言えない。こういった場所では、緊張から話題を求めて口が軽くなるものなのだ。男とはそういった生き物なのだ。彼女はいまだ、そういったことには疎いらしい。


「魔石部隊、素晴らしいものだったけど、商会の技術も予想を超えていた。圧勝するつもりだったけど、ここまで戦争が延びてしまって、多くの情報が漏れちゃった。さらに、商会にはまだ奥の手があるみたい」


「それは?」


 ウラニアは立ち上がって、廊下にひょいと顔を出すと、何かつまみになるものください!と階下に叫んだ。


 *****


「冗談だろう?本当にそんなことを?」


 ウラニアは嫌悪感を隠そうともせずに、魚の卵を塩に漬けたものを大きな口でぱくついている。


「それを調査しろと?」


「ううん。そうじゃないの。商会はこちらで対処できる。

 ・・・問題はケルサスよ。援軍の様子がおかしいの。これまでの経験に照らし合わせても、例がない。まるで理解できない」


 そう言って術式を起動させる。空中に帝国が得たケルサス国内の機密情報が示された。


「なるほどな」


「ええ。彼らは何かを隠している。ケルサスにも何かあるのよ。とんでもない奥の手が」


「それを?」


「そう。見てきて?いかに帝国の隠密部隊でもカルブルヌスの眼を盗んで侵入することは難しいし、解析部隊に捕捉されれば全滅するかもしれない。でも貴方なら問題ないでしょう?」


 ****


 ウラニアはマントで身を包むと外に出た。

 どぶの匂いと、嗅いだことのない膿んだような匂いが混ざりあい、秋夜の冷気の中に煤煙のようにこもっていた。

 吐き出す白い息が、たちまち汚れてしまうような感覚に囚われて、頭を振る。

 民家の窓から漏れだす光の下では、貧しい誰かが今も働いているのか、かすれた声が聞こえてきた。灯りの見えない民家から、闇にまみれるかのようにしてウラニアをうかがう視線を感じる。ウラニアのマントの下にある肢体を想像するぶしつけな欲望を感じて剣に手をかけかけたが、視線の主はウラニアが騎士であることに気付いたのか、慌てて窓から離れたようだ。

 魔術式の街灯は、触媒が盗難にあったために作動していない。その代わりとして、行政が場当たりでこしらえた旧式の街灯が不十分にあたりを照らす。

 道端には酔いどれの老人が座り込み、客の掴まらない娼婦たちがおしゃべりに余念が無い。何かを求めてたむろしている若者たちは、麻薬を吸うのを隠そうともせず、淀んだ目でその何かを探していた。

 吐しゃ物が道を汚し、年端のいかない少女が客を取るために下着姿で路地に立つ。老人は道にうち棄てられ、行き倒れを貧しい僧侶が荷車に積んで墓場に運ぶ。

 貧困に喘ぎ、麻薬が蔓延り、子ども達は幼くして盗みを覚える。けれど、道を挟めば、そこは風精の美に彩られた聖域が広がる。貴族たちが贅を尽くした宮殿で美食に舌鼓を打ち、その口で貧困を嘆いて政治を論じる。子ども達は飢えを知らずに結界の光彩の中で家族の愛に包まれて、平民を平民としてみる価値観を学ぶ。誰もおかしいと思ってはいない。いや、果たしてそうだろうか。

 ウラニアは吐き気を催したが、これが彼女の治める国の有様であった。だから彼女はきつく唇を結んで、顔を上げた。この国の全ての責任が彼女にあり、それに対して言い訳をする権利など有していないことを知っていたから。それを教えてくれた男が守る家から、今出てきたのだから。

 彼女が歩き出すと、おしゃべりをしていた娼婦の一人が、持っていた果実を話相手の女に分け与え、あさっての方向を見ながら駆けてきた。肩がぶつかると、彼女が咥えていた凍り菓子がウラニアのマントに染みをつけた。

 青くなった女が必死に頭を下げ、ウラニアは手を胸の前に出して微笑んだ。謝る彼女の肩を叩いて言う。


「先生が承知してくれたわ。代わりに宿を守るために騎士を出すから、近衛から見繕って」


 ほっとしたような顔で、女が頭を上げる。


「OKです」


「それと、あの男たちのうち、左から三人目、貴女の部下?」


「いえ、最近押し付けられた奴。どうです?」


「スパイよ。情報を引き出したら、殺しなさい」


「了解」


 舌なめずりして、頭を下げ下げ女は去ろうとした。


「あっ・・・」

 

 ウラニアの漏らした言葉に、女はぱたぱた手を振り、困惑した様子で立ち止まった。しかし、目は緊張をはらみ、神経は研ぎ澄まされ、すぐにでも魔力を解放できる姿勢をとる。


「陛下?」


「・・・いえ、宿を守るものは私が選ぶわ。候補だけ選定して。いいわね」


「はっ!」


 女が立ち去ると、ウラニアは宿を振り返った。

 窓から亜人の少女がウラニアを見ていた。

 手を挙げて微笑むと、少女もまた手を挙げた。けれど、急に背後を振り返ると、暗い顔で窓から離れてしまった。


「貧しいから、人心が歪む。言い訳にしてはいけないけれど、事実は事実だから。小難しい哲学やとどきもしない理想で心を満たすより、湯気を上げるスープこそがヒトの生を豊にする。だから待っていて、私が国を豊にして、貴女たちをそんな所から引き上げてあげる」


 誰も居なくなった窓に向かって、ウラニアは訴えかけるように言葉をかけた。そして、振りかえって、はるかに見える贅を凝らした己の城を見つめる。


「そのために、貴女がどうしても必要なの。私の下に来てくれるかしら?私と貴女はとっても似ているから、話をすることが出来たなら、きっと断ることなんてできないでしょうね。

 レオーネ・エネルゲイア・グラナトゥム、早く貴女に会いたいな」


 ウラニアはそのまま護衛もつけずに、居城へ向かってスラムの中に歩を進めた。

 その体から魔力の蜃気楼が立ち上る。城の結界に干渉し、巨大な天眼が上空に現れた。

 帝都のすべてを見下ろし、風精が悶えて鳴声を上げる。

 

 ヘリオス帝国女帝、剣聖ウラニア・ホドース・ヘーリオス。

 いわく、天眼絶界の叫鳴姫。

 当代最強の騎士。

 いや、史上最強の人間。

 帝王オークキング・アルファス、エルフの女王聖巫女アーティファ以来の神話の民。


 彼女が誕生したことで、彼女の成人を待つことなく前帝は玉座から退き、帝国は速やかに体制を一新した。彼女の生誕こそが帝国の存在した意義だと理解し、無茶ともいえる富国強兵策で彼女の歩む道に耐えうる国を作りあげた。

 それは彼女の望みではなかった。皇家が、帝国を構成する五つの分家が、そして帝国民が望んだことであった。強力すぎるその力に恐れ慄きながら、待ち望んでいた者は来たのだと歓喜に身を震わせて、帝国民であることの誇りに酔いしれた。

 大帝国が辿った道を求め、神話に至ることを夢想する愚かな帝国の民の信を受けて、彼女は歩み始める。

 邪教の徒すらはべらせて、偽りの美に包まれた風精の城を、幸福に裏打ちされた真なる美に包むために。

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