魔晶戦争 あらすじ 2
嘆きのレークス
クリトンは、王族を戦場に派遣したグラナトゥム公国のレークス次期 王婿殿下と通信による会合を持つ。カイのたぐい稀な戦果に穏やかに進む会談。しかし、クリトンが命に代えてレオーネらを守ると口にすると状況は一変、レークスは激怒する。民のためならば、王族すらも戦争の駒にしろと、クリトンの戦争にかける思いの甘さを厳しく攻め立てる。剣気の奔流の中で、クリトンはレークスが誰の血を引くのか、恐怖をもって思い出した。
レークス・ウンブラ・ケルサス。残虐王が己の娘を犯して出来た汚れた王子。暗殺者として育て上げられ、前グラナトゥム公王によって救われた、現ケルサス王国最強騎士は血に染まったその過去ゆえ、誰よりも平和を願うのだった。
Kill,Me,Tender 1
ハイデンベルグ城を奪還し、ヤーヘンを国土から追い落とすために進軍を続けるケルサス軍。先方を預かるイーサン少将にヤーヘンが奇襲を掛ける。破られるはずの無い結界が破られ、精強を誇る第一〇一師団先遣隊は大きな打撃を受ける。それは、ヤーヘン軍ではなく、大陸でも指折りの傭兵団であるカーモス傭兵団が主導するものであった。
戦線を乱され、混乱するケルサス軍。追い討ちを掛けるように、イーサン少将がヤーヘンの筆頭騎士であるルーナイアに使い魔と共に討たれてしまう。混乱する戦場を立て直すべく、カルブルヌス騎士団国軍司令官のルシアーノは指示を飛ばす。そして、ルーナイアを仕留めるため、弟のオーギュントを戦場に送る。騎士として、いや、カルブルヌスとして強者を求めるオーギュントは楽しみながら、戦場に向かう。
Kill,Me,Tender 2
オーギュントと会したルーナイア伯爵は、戦場における全ての戦闘行為を止め、オーギュントに一騎打を申し入れる。
騎士としての格は同等であったが、才能、剣技に勝るオーギュントに打ち勝つために、ルーナイアはあらゆる手段を講じる。イーサンの遺体を足蹴にし、投降した兵を殺し、怒りからその剣筋をゆがめようとした。しかし、強者との闘争だけを求めるオーギュントは動じない。カルブルヌスの秘奥を操るオーギュントに、決死の攻撃を仕掛けるルーナイア。
わが子が見つめる中、ヤーヘン筆頭騎士ルーナイアは剣鬼に敗れ去る。
聖血
コールとベリル
戦場から遠く離れたグラナトゥムで、滅び去った神聖グローリアの近衛、マルティス騎士団副団長コール・イラ・パラノーマルは、最古の血を受け継ぐグラナトゥム公国王妃ベリル・アルケー・グラナトゥムにひざまずく。彼女こそ豊饒神マイアに祝福を受けた初代グラナトゥム公王の娘にして、数千年にわたり眠りについていた大陸でもっとも高貴な存在であった。
コールは、ライラの真の庇護者であった彼女にグローリアの聖体解放、エルフ最誕の許しを請う。ライラを戦火に巻き込むこむことを恐れるベリルであったが、その意志を知り許可を与える。
サラ
サラの下に、ハイデンベルグ攻城戦で彼女に救われた重装魔術歩兵大隊隊長アマゾフ少佐が訪れる。しかし、彼が語ったのは感謝ではなくフラーダリー、グラナトゥムへの非難であった。民ではなく王族こそを第一と考えるグラナトゥムを罵り、その象徴としてあったフラーダリーを否定した。そして、フラーダリーが滅びたのはケルサスに連なる民の望みであったことを告げる。サラはその言葉に立ち尽くす。
全てを聞いていたブリギッタは、怒りのあまりケルサスを、人のあり方を断罪する。それは彼女がグラナトゥムの騎士であることに誇りを持っていたから。彼女が剣神の愛姫であるから。
亡国の騎士達
カーモス騎士団に苦しめられるケルサス王国連合軍。その軍議の場に初めて見る男がいた。
神聖グローリア、マルティス騎士団副団長コール・イラ・パラノーマル。大陸の中で最も格式の高いマルティス騎士団にあって聖騎士と称され、大陸中の子供たちの憧れであった彼が、今、正式に参戦を宣言する。その後ろ盾は、最貴のベリル・アルケー・グラナトゥム。誰もが頭を垂れる最高の気高さを誇る彼女の名。
己の旅団だけでカーモス騎士団を仕留めるとグローリアの名で持って誓うコールに、もはや誰も疑問を投げかけない。それほどまでにベリルの存在とマルティス騎士団の名は大きいのであった。
護国の英雄
パンデミックの直撃を受けたオヘブ少佐とアニイ中尉は傷病兵を収容したテントで暇をもてあましていた。その場に本営から遣われた中佐が来る。
国の危機にオヘブは隠していたもう一つの名で戦場に立つ。先の内乱における最大の戦果を得た、まさに英雄。国内に知らないものなど一人もいない、魔術を持たない両親から生まれた民の誇り。助けるのは狂犬アンナ王直属憲兵大佐。王の剣と称される国王直属対魔術戦隊センチュリオン指揮官ダミアン・キュア・ザングレア中将は、歓声の中、兵士を狂気に染めるべく歩みだす。
ダミアンとレオーネ
ダミアンはレオーネに会いに兵站部の天幕を訪れる。そこには、難民や傷病兵への炊き出しに追われ、額に汗を流すレオーネたち、そしてハイデンベルグ領の民がいた。忙し差の中で、貴族と民衆が手を取り合って働く姿に平民であった頃を思い出すダミアン。かつて己がそうであったように、主従関係ではなく、同士として戦うことこそ理想と思うダミアンは、彼らの元に飛び込み鍋に向かう。
レオーネの人となりを知ったダミアンは、彼女が戦場でこそ輝くことを危惧する。そしてレオーネに戦場から立ち去るよう勧める。戦場という地獄に絶望し、聖女ナスターシャのように邪道に落ちることを恐れたのだった。
しかしレオーネは立ち去ろうとしない。ダミアンは二人を見つめる平民やハイデンベルグの騎士達の瞳が、昔の己を見つめるものであることに気付き、レオーネに前線に出ないようきつく言い含め天幕を出る。レオーネを思い、陰鬱な気持ちになりながらダミアンは戦場に向かった。
望郷のワルツ
ダミアン中将はヤーヘンに占領されたハイデンベルグ領第三の都市を包囲した。
そのダミアンに向かい、魔槍が発射される。しかし、ケルサスの解析技術に一度さらされたたそれはもはや通じない。逆に魔槍にヒントを得た新型爆弾が、都市の城壁と結界を粉砕する。城門にケルサス兵が押し寄せ、城壁からはカルブルヌスの騎士達が侵入する。
敗色が濃厚になる中、ヤーヘンは最後の切り札、パンデミックの発動を試みる。パンデミックの生贄にされ、意志を失った魔術師達に頭上から歌声が響く。カルブルヌスの魔術士が紡ぐ望郷の調べが彼らに失われたはずの感情を思いださせ、兵らに己の為した罪と為そうとしている非道を知らしめる。戦意を失ったヤーヘンはダミアンに降伏する。
魔槍とパンデミックを破られたヤーヘンは、占領した諸都市を放棄することになった。
デューイ・パノステ・ラガルディッハ
ミミの副官デューイの過去。
ケルサス本国の富裕な貴族の妾腹の子として生まれたデューイ。本妻の子が男子であることが知れると、デューイの母は僅かな手切れ金を与えられ寒村へと追いやられた。デューイはそこで狂王に仕える貴族の子として排斥されながら貧困に喘ぐのであったが、ある夜盗みに地元の貴族屋敷に忍び入ったことで、人生が大きく変わる。
その貴族、元近衛騎士カシウスはデューイの才能に気付き、母と共に彼を受け入れた。カシウスの下で働いていたアンナ(ダミアンの副官)に魔術を教わり、カシウスに剣と貴族としての全てを学ぶ。やがてカシウスとダミアンの母は恋仲になり、ダミアンは父というものを知る。母が死ぬまで、死んでも彼の幸福は続いた。
デューイが18になった頃、カシウスは首都に行き、士官学校に入るように告げる。
デューイ・カノイ・ヨカナーン
首都に来たデューイは、そこでアンナに再会しダミアンを紹介される。ダミアンの屋敷に滞在しながら、彼らと親交を深め、貴族社会のしきたりを学ぶ。
やがて士官学校入学の日を向かえ、ミミに出会った。
アンダルシア家の姫として現れた少女は誰よりも輝く。神聖グローリアの血を引く赤毛の少女は、つまらない貴族の子弟たちの中でデューイを認めて、デューイもまた彼女を見初める。
そんな彼女に惚れてしまったのだと、デューイは話を聞いていたコールに告げる。二重スパイとして子爵家に入り込むデューイをコールは挑発し、その本当の力を引き出す。切り結ぶ直前、二人の前にミミがライラ、そして新たに旅団に加わった小太りの少佐を引き連れて怒鳴り込んでくる。
怒るミミにコールはデューイの養父カシウスとグローリアのつながりを述べ、デューイをミミと同じく神聖グローリアの聖騎士に任命するようグラナトゥム公国のベリルに頼むことを約束する。喜ぶミミであったが、デューイは喜ばない。デューイは、深い憎しみを抱いた自分がミミにふさわしくないと、奪われても良いとすら思っていたのだった。
そんなデューイをミミの光り輝く魔力が包み込む。その優しさに抱かれて、己の求めていた理想がミミと共にあることだと、カシウスと母のように永遠を誓い合えるような関係を結ぶことであると、デューイは気付く。愛し愛される幸福に包まれるデューイに、小太りの少佐、マルスが旅団の編成に伴って、その名を問う。デューイは答える。デューイ・カノイ・ヨカナーン。偽名ではなく、本当の父の名でも勿論なく、心の底から父といえるカシウスの名を。




