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偽国戦記  作者: ブレヒトさん
魔晶戦争
128/131

アンチクライスト -反救世主-

ヤーヘンとケルサス王国が争う前、ケルサス王国には一人の王子がいた。

狂王と恐れられた祖父と王宮の中で暮らすルーメンの子、テネブリス。

語られることのなかった内乱の真実が、今、露わになる。

そして、闇の救世主が覚醒する。

 夢を見て、気づくんだ。

 この世界が掃き溜めだということに。

 とりとめのない夢であっても、悪夢であっても、こんな世界よりはましなんだと、思い知るんだ。


 澄ました顔でかしこまる男も、頬を染めてはにかむ乙女も、僕が視線を外せば、策略に思いを馳せる。

 裏切り者の顔を見せる。


『成果を見せびらかすことで示される忠誠は、追従でしかない。

 宝石で揺らぐ乙女心は、おもねりであって、ただの遊興だ』


 どこに、誠実な人はいるんだろう。

 どこに、忠誠が、愛があるんだろう。


 裏切り者の罪を見て見ぬふりをして、その悪徳を飲み込んで、駆け引きの道具にする。


 それが王者なのだと、祖父は言う。

 ならば、それは正しいのだろう。

 きっと、そういうものなんだろう。


 背後に刃を隠した忠臣の徒を褒めたたえて、初心な乙女の浮気心を涙ながらに引き留める。

 裏切り者の罪を正直者の献身で(あがな)って、僕の心は擦り切れていく。

 僕の純真は、地に落ちる。


『それが、『王宮』だ。

 貴い人々が集う、汚れたソドムの市なのだ』


 忠臣の箴言(しんげん)は逆臣の讒言(ざんげん)によって反逆の証とされて、無垢な乙女の可憐さは、大枚をはたいた商人の賂に穢される。

 残酷な結末は滑稽な笑い話となって、誰かの口の端に上るたびに改変されて、真実は厚い緞帳(どんちょう)の背後に隠される。


 伝説となった騎士の物語に、どれほどの真実があるのだろうか?

 悪逆の徒として首を刎ねられた者の言葉にこそ、耳を傾けなければならないのではないだろうか?


 そう言った僕の肩を、祖父が力強く握りしめる。


『それに、なんの意味があるというのだ』


 目を合わせたその瞳は、南海のように澄んでいるけれど、口元には深い絶望が刻まれていた。


 遠く離れた戦場にいる父よ。

 貴方は、どうして『王宮』から僕を守ってくれないのですか。

 

 誰も助けてくれはしない鳥籠の中で、僕は泣いた。

 突き放すような祖父の疲れ切った瞳は、それでも必死に僕を守ろうとして、『王宮』に抗っていた。


『マーテルを信じ奉るのが、ケルサスだ。

 こんな腐りきった国であっても、それだけが真実であるべきだったのだ』

 

 祖父は、冷たい王宮の中で狂いながら生きていた。恐れられながら、憎悪と怒りの対象として。

 けれど、僕は、祖父がいつも怯えていたのを知っていた。

 

 何が正しくて何が間違っているかなんて、何一つ分らなくなっていた祖父は、ただマーテルだけを信じて戦っていたんだ。

 

 そんな祖父が、狂王だと言うのか。悪魔だと、言うのか。

 容易く権力者におもねる聖職者の言うことを真に受けて、祖父を決めつけるのか!?

 民がそう言ったって?

 あいつら、王宮の中のことなんて何も知らないじゃないか!!


 だから、僕は、否定する。

 こんな鳥籠、壊してやる。


 善を、ヒトの倫理を、欲望の檻へと閉じ込めてしまう『王宮』なんて、消えてしまえばいい。


「あなたは良い人ね。良い人が、幸せなら良いね」


 そう言った君が、そのままでいられなかったこの王宮(ソドム)を、塵に変えてみせようじゃないか。


『きっとお前にもわかる時がくる。私は、ケルサスのために狂ったのだ』


 狂王と呼ばれた祖父が、(マーテル)を仰ぎながら言った意味を、そう言わせた王の民を許さない。


 やがて、王都は戦火に包まれた。

 祖父を倒すべく、父とその仲間たちが蜂起したらしい。

 

 燃え盛る炎を見て、祖父は言った。

 

『誤った王は、死ななけらばならない。

 それが、最後の務めであり、私の本当の望みだったのだ』


 疲れた目で、ほっとしたような顔だった。


 でも僕は、それが間違いだと思う。

 マーテルに背を向けたのは、誰だったのか。

 マーテルの意思を体現するこの世の王国を創ることこそが義務であることを認め、権利を王に預けたのは、民自身ではなかったのか。

 義務をおろそかにして、権利ばかりを主張した民の罪は、何によって贖われるのか。

 すべてを王の責任にして、また一から始めようだなんて、都合がよすぎるだろう。


 祖父が父を挑発するのを、僕はじっと見ていた。

 父は怒り狂いながら、正義とマーテルのために祖父を殺すと叫ぶ。

 万を超える兵や民兵が同調して、祖父を口汚くののしる。


 ・・・。

 マーテル?正義?

 うん、そうだよ。

 王に責任があるというのなら、神に責任がないのは可笑しいじゃないか。

 当たり前のことだ。

 どうして、祖父は、父は、そのことを言わないのだろう。

 

 なんで?

 

 世界は、マーテルの意思は、どうして僕たちを無視するの?

 

 爆発が起こって、城門が破られた。

 反乱兵が攻め入るまえに、王都の貴族や民が暴動を起こしたに違いない。

 祖父におべっかを使っていた貴族や、おこぼれに預かっていた商人は、『王宮(ここ)』にはもういない。いつの間にか、消えてしまった。

 

 いるのは、玉座に座る老人だけだった。

 誰も、味方なんていない。

 

 どこからか、声がする。

 囚われの僕を助けるのだと必死になって、でも略奪への欲望が透けている。

 

 腹が立った。

 僕は祖父の所に居たかったから、居たんだ。

 勝手に僕の心を決めつけるな。


 戦争なんて、どうでもいいと思っていたけれど、とてつもないくらいムカついた。

 うるさくて、邪魔で、自分勝手で、許せない。

 目についた花瓶を壊して、地団駄を踏んで、それまでは頭に浮かんでも言ったことなんてなかった悪態を、初めて叫んだ。

 でも、さっぱり胸の熱は引かない。

 目の奥がチカチカして、吐き気がする。

 

 どうすれば、いいんだよ!!

 

 せいいっぱい頭をかきむしったとき、腕輪が、魔力封じの結界がはじけ飛んだ。

 きっと祖父が反逆者と戦うために、魔力を集めたんだ。

 

 ・・・魔力だ。そうだ、そうだよ。

 僕にはそれがあった。

 マーテル、僕は、生まれて初めて貴女に感謝する。

 この力を与えてくれて、どうも、ありがとう。

 

 生まれて初めての魔術、紡ぐために、僕という存在に僕は潜る。落ちていく。


 ほのかに輝く、何かが見えた。

 

 これが、世界か。


 両手を広げる。

 大事に、そっと包み込む。

 

 なんて、暖かい。


 これが、満ちる命の灯火なんだ。

 

 瞼から、涙がこぼれる。

 

 ああ、なんて、すごい。


 頬が熱い。

 こんな幸福、生まれて初めてだ。

 

 泣きじゃくって、抱きしめた。

 すがりついて、頬を寄せる。

 あまりに素晴らしくて、圧倒的だったから。


 つぶした。

 噛みちぎった。

 力いっぱい、踏みつけた。

 

 許せなかったんだ。

 

「消えうせろ、なにもかも。

 こんな世界、大嫌いだ」


 闇が、降りてきた。

 

「これなんだ、僕が欲しかったのは」


 もう少し。

 もっと、ぐちゃぐちゃにすれば、もっと暗く、静かになる。

 

 息を切らしながら、ふと、自分の外の世界を、なんとはなしに見た。


 どうしたんだろう。

 祖父が、僕を見て泣いていた。


「なんで?」

 

 その時だった。

 白い手が、僕を掴んだ。

 振り払うけれど、いくつも、いくつも伸びてきて、僕を掴んだんだ。


 -エメト-


 フラーダリーの真理のゴーレム。

 王の力から民を守る光の盾。


 僕はいつしか、紅い月と向かい合っていた。

 まるで巨大な顔のようなそれが、覗き込むように僕を見つめている。


 あれから、どれだけの時間が経ったんだろう。

 いや、時なんて動いていないのかもしれない。

 過去も、未来も、現在も、この紅い月の前では、意味がない。


 -あなたは、そうやって、いつも、見ているだけで-

 

 祖父の嘆きを聞いた僕は手を伸ばす。

 

 そうだ、これは、神だ。


 掴まれて、目の前には、メイド服を着た栗色の髪の少女がいた。


 祖父はあんなにも貴女を求め苦しんで、愛した者を裏切ってまで貴女にすがったのに。

 

「こんな、僕なんかに、応えちゃ駄目じゃないかマーテル!!」

 

 彼女が視線を逸らし、追った先で、祖父は、父は戦っていた。

 祖父は、マーテルへの信仰を再び国に呼び覚ますために、父に討たれようとしている。

 僕が知っているよりも年を取っている父は、邪教徒に墜ちてまで、マーテルによる救いをヒトの世にもたらそうとしている。


 二人の王の物語。

 惜しみなく愛を振りまいて、それゆえに狂わざるをえなかった王。

 ヒトなんて好きではなくて、けれど見捨てることが出来ずに足掻いた王。


 それを見つめる貴女の視線、その冷徹さ。

 しかし、涙がこぼれている。

 理知的に高みから俯瞰しながら、口元からは嗚咽をこぼす。


 たまらず、掴まれた手を振りほどく。


「ふざけるな」


 こんなものを僕に見せて、何をしろというのか。

 ここは、時間を超越する空間。

 ならば、貴女はあらゆる時間に干渉することが出来るということだ。

 その力があるということだ。

 

 救う力がありながら、それを望んでいながら、そのきっかけをヒトに求める。

 過去も未来も、どうだって好きに出来るくせに!!


 こんな掃き溜めを、創り上げた!!


 寂し気な目をして倒れこんだ貴女を見下ろす。


異端(グノーシス)の理でもって、宣告する。

 月の女神よ、貴女は最悪の神だ。

 貴女が創ったこの世界は、とても汚くて、醜い。

 でも、狂っているのはヒトじゃない。

 貴女だ、マーテル」


 最悪世界論。


 -永遠なる御身に逆らう、絶対なる力を。今、反抗の時を-


 絶望するヒトたちが、僕を崇める。

 それに応えて、僕は貴女に問わねばならない。

 

「光は、あなただけか」


 父の声がする。


『鳴れよ、角笛。

 来たれ、黙示録を告げる四騎士よ。

 世界を塗り替え、新たなる秩序を。その先にマーテル、どうか応えたまえ』


 父は、すべてを知っても貴女にすがろうとしている。

 だけど僕は、貴女を僕の中から排除する。


 僕の名は、テネブリス・モーリス・ケルサス。


 闇と死を告げる、黒太子。


 光の名を持つ、父ルーメン・ケルサスの光明を浴びてもなお、闇を創る。


 闇と光は一体であるがゆえに、どこまでも黒く染まることが出来るんだ。


「来たれ、マグ・メル(楽園)」


 狂王の呪いによって強制的に眠りにつかされていたとされるケルサス王子、テネブリス。

 しかし、事実は違う。

 彼こそが、狂王に反旗を翻した三王に呪いをかけたのだ。その魔力があまりに暗黒だったがゆえに、狂王は全魔力を使って眠りにつかせたのだった。

 

 長き時を経て、少年は目覚める。

 幼さゆえに指向性が定まらなかった魔力が、純粋に邪悪に染まる。


 この世に絶望し、マーテルの理を拒絶した結果、ヒトは邪教徒になる。

 しかし、彼は違うのだ。

 生まれながらにして、理を、マーテルを認めない。

 

 現世の排他存在(アンチクライスト)暗黒騎士(スターレスナイト)、テネブリス。


 先代の暗黒騎士であった太古の奴隷姫にして死霊使(ネクロマンシー)い、ルドラ・ネクロノミコン・トゥーラントッドもまた、聖巫女アーティファの力によって再誕した。


 二人は、この世の理を破壊しつくす。

 マーテルを、この世界から排除するために。

 

 今、虐げられ続けてきた者たちの救世主(アンチクライスト)は、覚醒した。 


 ****


 戦場からはるか西、帝国首都に(そび)える風精城、その玉座の間。

 皇帝は悲痛なまなざしで通信水晶に映し出されたケルサス王国首都マグ・メルを見つめていた。


「警告したのに」


 ひじ掛けに爪を立てる。

 薄緑のドレスから伸びた白い足は、こわばっている。


「私は認めないって、これ以上の混乱は、ケルサスの野望は許さないと。

 共にヤーヘンを討つという逃げ道まで用意してあげたのに・・・。

 その結果がこれですか。

 私の言葉など、何の意味もなかったのね!!」


 彼女の前には、帝国を構成する主だった貴族たちが頭を垂れる。

 城下には数十万の兵が集い、皇帝の下知を待っていた。


「ゼーリャ」


 呼ばれた少女は、ぴょんと立ちあがり、満面の笑みを浮かべて帝国旗を掲げる。


「マルクス」


 身長二メートルを軽く超える大男が立ち上がる。

 皇帝の前であるにも関わらず、腕を組んで鼻を鳴らす。


「ヒルダ」


 呼ばれた凛々しい女騎士は、完璧な作法で剣を掲げ、皇帝に名を呼ばれたことに歓喜の涙を流す。

 しかし、彼女の両の足は失われていて、武骨な車椅子にその身を預けていた。


「総司令にはマルクスを。ヒルダは副官としてマルクスを助けなさい。

 帝国直轄軍のうち、デュオニュソス、アポローン、アルテミスを預けます。

 ゼーリャは、引き続き私と共に」


「了ー解!!」


 おちゃらけた敬礼を返すゼーリャをヒルダが睨みつける。

 マルクスはわずかに口角を上げただけだった。


「ヒルデク、ライプニッツ、スタインベック、ホワイトヘッド」


 呼ばれた者たちが次々に立ち上がる。


「あなた方の領民の賦役を免除します。己が軍を率い、先陣を務めなさい。

 急な進軍です。必要とあればケルサスの街を略奪することも、皇帝、ウラニア・ホドース・へーリオスの名において許しましょう」


 貴族たちの目が暗く光り、殺意と暴力の快感に鼓動を高鳴らせた。


 皇帝が玉座から立ち上がり、風精城の上空に巨大な鏡が出現する。

 映し出されたのは、皇帝その人。


「愛する、帝国臣民よ」


 呼びかけに市民だけではなく、市民権を持たないスラムの貧民すら歓喜の声を上げる。


「ケルサス王国は、邪道に墜ちた。

 我が声を聞かず、調和を乱そうと穢れた剣を抜き放った。

 ならば、我らもまた、武器を取らねばならない。

 全ては調和のために。

 怨敵ケルサス、討ち果たさねば、我らは君臨を許されない。

 ゆえに、帝国民よ、これは義務である。

 ゆえに、皇帝たる我は命じなけれなならない。

 出陣せよ、帝国、調和の先兵よ。

 ウラニア・ホドース・へーリオスの名において、ケルサスの大地に帝国の嵐を吹き荒らせ!!」


 鏡が収縮し、弾ける。

 風が吹いて、風精城が七色に包まれた。

 神話のように、英雄の足元にひれ伏した帝国臣民たちにオーロラのカーテンが降り注ぐ。


「「Καί σάν πρώτα ανδρειωμένη(今こそ、また蘇えらん、あの日の勇猛さとともに)」!!」


 歓喜の中で、皇帝、そしてゼーリャの姿が玉座の間から消えた。

 それまで玉座に君臨していたのは、彼女の膨大な魔力によって作られた写し身だったのだ。

 風精城に割り当てられていた魔力は、本当の彼女に還る。

 はるか、東の地、カルブルヌスと帝国の国境で、最強の魔力が突風となって吹き荒れた。


「来たか」


 カルブルヌス騎士団国国王エルネスト・ノスタルヒア・デュルイは立ち上がると、渓谷を挟んで向かい側に陣取った帝国軍を見る。

 

 藍色の髪が、月光の下で輝いた。

 風が巻き上げて、魔力がほとばしる。

 薄緑のドレスを着た、剣の聖が降臨した。


「・・・正式な宣戦布告を受け取りました。

 しかし、ルーメン陛下の命では、無理に相対せずに遅滞行動に出よとのことでしたが、旦那様、どうして私たちは今、この場にこうして陣を張っているのですか?」


「殺れるからだよ」


 索敵魔術なんて使うまでもなく感じられる膨大な魔力に、副官パメラがあきれたように笑った。


「そうはおっしゃいますが、あれは無理ではないですか?」


 エルネストは、方眉を上げた。


「なあに、ただの小娘だ。

 有り余る力と機会がありながら、俺の首を見逃すような奴だぞ?

 わけわからん奴だが、馬鹿には違いない。

 殺れるときには殺るのが、俺たち人殺しの鉄則だろう?

 俺が軍を引くわけがないのに、悠長に茶なんて飲みに来やがって、舐めるのもいい加減にしろってな」


 軽く言う王の目は、狂気に満ちている。

 パメラは、背後の騎士団に戦闘態勢を指示した。

 

「化け物だというのなら、俺たちもそうなればよいだけだ」


「皇帝陛下がお越しになるというのであれば、もう少し準備のしようがありましたのに。残念ですね」


「俺は楽しいぞ」

 

 (死んだと思っていたご子息が生きていて帝国についていることが明らかになったというのに、いざ敵を目にすれば、気にも留めない)


 もう、止まらない。止められない。

 

 (この人は、決して英雄を許さない)


 パメラが頷くと、騎士王が剣を掲げた。

 輝く太陽の魔力。

 見上げられ、照らす者でありながら、その胸の裡に秘めるのは、殺戮への暗い衝動。

 ヒトをその輝かしさで惑わすように、神をも惑わすのがカルブルヌスの奥義。

 しかし、世界をあきらめながら希望に満ちたエルネストは、惑わすだけでは終わらない。


「神がなんだ。

 英雄がなんだ。

 貴様らがぐずぐずしているから、俺たちが立ち上がったんだ。戦うしかなかったんだよ。

 今更、遅れを取り戻そうってか?

 冗談じゃない!!

 どれだけ死んだと思っているんだ!!」


 王の叫びに、カルブルヌス騎士団、大陸最強の騎士団が邪悪に墜ちる。


「歴史上最強の人間だと?神話に至る選ばれし者だと?

 はっ、馬鹿にしやがって!!

 また繰り返す気か?マーテル!!」


 黄金の仮面を被る。

 

「神に立ち向かわざるをえなかったアルファス。

 神を見限ったその絶望を、剣聖ウラニア、貴様に叩き込んでやる!!」


 パメラが、手を掲げて叫ぶ。


「精霊装甲ガネーシャ、起動!!

 遡れ、歴史を。思い出せ、神との闘争を!!」


 戦神アルファスがマーテルに挑んだときの記憶が流れ込む。

 

 -許さない。ようやく俺たちが勝ち取った楽園を-


 夢破れて屈服させられた戦神(オーク・キング)の無念に、己の夢と希望と絶望を乗せる。


「行くぞ。

 無駄な説法はなしだ。

 ただ、殺せ」

 

 被差別種族であるオークを信仰するヒトの子らは、静かに進軍を開始した。


 神に反逆し、それでも神の栄光を求めて、血塗られた己の足跡を英雄に見せつける。

 それこそが社会病質者(ソシオパス)、カルブルヌスの愛と信仰。

 彼らは、殺した者たちの怨嗟の声をまといながら、ののしる。 

 

 神の意思たる英雄よ、調和をもたらす帝国よ、貴様らは遅すぎたのだと。


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