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アラサーと大学生  作者: めいぷれん
5/5

第5話 衝撃。そして、ゾンビへ。


午後十時半。


次は二次会!


「来る人ー?」


と、現サークルの長の新太さんが声を掛ける。

が、しかし。

バイトであったり、その他諸々の用事があるとかで帰る人もちらほら居たので、俺もその流れに乗じて帰る事にした。

結局、OBの人も帰る事になったので、二次会組も、解散でいいかとなったようで、早めの解散となった。


那月に早く帰る趣旨の連絡入れとこうと思ったが止めた。

早く帰って脅かしてやろうと思ったからだ。

もう、と言いながらも嬉しそうにおかえりって言ってくれる那月が浮かぶ。


内心ルンルン気分で帰路につく。

自分でも歩く速さが自然と早くなるのがわかる。

歩いていると、マンション近くの駐車場が見えた。

ふと思う。


「ここって人通り少なくて、危ないよなぁ。」


駐車場を見ていると、犯罪性も糞もない真っ赤で派手なスポーツカーが止まっていた。


「!!!!?」


よくあんな派手なのに乗れるなと毒づいていた。


だがしかし!


駄菓子菓子。


其処から那月がでてきたのだ。


「え?那月って車の免許持ってたっけ。

と言うか車持ってたっけ。」


あ、ああ。

外車だから左が運転席か。

誰と乗ってたんだろ。


そう思って見ていると、運転席の方から海斗さんが出てきた。

え?あれ?海斗さん用事って言ってなかった?


んん?ああ、もしかして、今日のあの意外な反応って、那月になにか俺について頼まれてて、協力でもしてくれてたからなのかな。

協力の内容がきになる。

でもこう言うのってサプライズだと思うから、見て見ぬ振りをするのがいい男ってものだ。

でも気になるな。

あ、じゃあバレないようにしなきゃ。

そうおもって遠くから見ることにして、物陰に隠れる。


那月と海斗さんが見つめ合いながら何かを話している。

あれ?なんかいい雰囲気じゃない?

いやいや、海斗さんだろうと其れはないない。

それは海斗さんに失礼だ。

流石にそういうことはしないだろうと思えるくらいには、カイトさんを信用していた。


瞬間、海斗さんと、那月の顔が近くなる。


俺の心臓がドクンッと一際大きな音が鳴った気がして心臓の音が聞こえる。

現実に背を向けている脳に対して、やめてくれ。

そう心臓が叫んだ気がした。


那月と海斗さんの唇が重なる。


「っ!」


時間が止まった気がした。

信じられないものを見たかのように、俺の身体も、視線も硬直する。


唇が重なり、次第に、舌までも。


俺の息は荒くなり、酷く喉が渇いているのがわかる。

過呼吸になり、嫌な汗が流れる。


なんでっっ!


やめてくれ。


やめてくれ。


やめてくれやめてくれやめてくれやめてくれ。


那月ぃ。


那月ぃ。


なんでっ。


ついに奴は那月の身体を弄り始める。


対する俺の頭は沸騰する。

やめろ。

その汚い手で那月に触るな。

やめろやめろやめろ。


那月は嫌がる風な雰囲気は微塵もなく、頬を赤らめ、蕩けた目で奴を見ている。


俺は全て理解した。

だって、あんな那月の表情は見た事がない。

いつも見ている微笑とは違った女の顔。


何時ものあの微笑は作りものだ。

あの表情をみて気づかされた。



俺との日々は全て嘘だったのだ。


俺が本物だと、幸せだと、何時までも続けばいいと思っていたあの那月との日々。

続く筈もない。

何故なら、あの、那月の笑顔も、那月の思っている事でさえ、何一つ理解が及んでいなかった。


あれらは全て嘘だったのだ。


そう、俺にとっての全てだったもの。


その全てがーーー




遂には、那月と海斗さんは、車内に入り、行為を始める。


もう十一時。

辺りはすっかり暗くなった。

カーテンもせず、行為に耽る奴と那月。

"悔しい"

そんな気持ちさえも浮かばず、ただ呆然とその行為から目が離せない俺。


俺の全てが嘘だったのだ。

今の俺には何もない。

ちっぽけな最後の矜持で、

バッグから、お気に入りの一眼レフを取り出し、証拠動画を撮影しようと、赤外線モードで撮影する。

吐き気がする。

声が微かにでも聞こえる事が耐えられなくて、耳栓をする。


数十分たって、行為が終わり、幸せそうに、でも本当に名残惜しそうに別れ、小走りでにやけ顔になりながら走り去っていく那月を見た。


誰がどうみたって、あの那月こそ、恋する少女に見えるだろう。


ああーーもうーー終わったな。


忌々しい奴の車も去った後、俺は如何しようか。

何も無い。

呆然と立ち尽くしていたが、ふと頭によぎる。


小一時間前の事。

佐奈さんの顔が浮かんだ。

「今度はなんかあったらきいたげるからね。」

そうだ。

そう言ってた。

愚痴でも聞かせてやろう。

たっぷりきかせてやる。

いつも聞いてあげてるんだから。


そういう青太は、乾いた笑い声を出しながら、おぼつかない足取りで歩いていた。


その形相は、ゾンビにも引けを取らないであろうものだった。


午前零時。


青太は、大学のOBであり三枝 佐奈の住むマンションへと着いた。



読んで頂き、有難うございます。

続きのアイデアが浮かぶまで取り敢えずここ迄を一章とさせていただきます。

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