第4話 OB。そして、愚痴。〈青太side〉
十月二十日、土曜日。
最近、朝は少し肌寒くなってきて、肌をさする。
そんな朝、家賃10万の、3LDKマンションで、優雅に朝食をとっていた。
バケットとスクランブルエッグとウインナー。
それに、昨日から煮込んでしっかり味の染みたポトフ。
一緒に同棲して居る彼女が入れてくれたコーヒー。
俺は、今、とても幸せだ。
大好きな彼女と一緒に暮らせて居る事。
その彼女は、一緒に暮らし始めて、素が出て来ることも少しはあったけれど、元々家事も出来て、料理なんて、そこら辺の料理店より美味しい事。
これに関しては、身内補正かかってるのかもしれないけど。
それにしても、こんな素晴らしくて、可愛い、そして何でも出来る彼女は、僕には勿体無いくらいだ。
何て思いながら彼女の事を見ていると、視線に気づいたのか、俺の方に振り返って首を傾げながら、ニコッと笑顔を向けてきた。
なにこの子まじ可愛いんですけど。
と言うわけで、俺は今幸せを感じている。
本当、これで幸せを感じない奴はどうかしてると思う。
兎も角、彼女も席に座ったので、手を合わせよう。
「頂きます。いつもありがとう、那月。」
「どう致しまして。それより、早く食べて見て。今日のポトフはちょっと自信あるの。青太には負けるかもだけど、良い感じのはず!」
「おお、それは楽しみ。」
フォークで、ウインナーと、ジャガイモ、その他野菜共を一緒に口に入れて、スープをズズッと啜る。
むむ!これは!どの具材も味が染みてて、スープも絶妙!
幸せそうな顔をしているであろう俺の顔を見て、彼女ーー那月は又々、俺をみて微笑を浮かべる。
俺の顔はさらに幸せそうになっている事であろう。
「うん。美味しいよ。本当、本当美味しい。」
「そう?良かったー。ふふ。嬉しいなー。青太は美味しそうに食べてくれるから嬉しいの。子供っぽいけどね。」
「子供っぽくてすみませんねーだ。」
「ほら、そーゆー所が子供なの。」
二人で微笑を浮かべる。
ああ、こんな幸せ、いつまでも続けばいいのに。
身に余る幸せだとは分かっていても、そう願わずにはいられない。
何度でも思う、いつまでも続けばいいのに、と。
ふと、連絡事項を思い出す。
危ない危ない、忘れるとこだった。
「あ、そうだ、那月。俺、今日サークルでOBの先輩が顔出すらしくて、夜の0時ちょっと過ぎちゃうかも知んない。まぁ、那月は休みだし、偶には一人でゆっくりしててよ。」
「へ?そうなの?0時ね。0時。わかった。今日はゆっくりしてるね。青太も楽しんできてね。お酒の勢いで他の娘に手だすとか絶対ダメだからね。青太は私のなんだから。」
「しないしない。俺は那月の物だから。那月しか見えてないよ。」
「ふふ。安心。」
ああ、こういう所もいいな。
少し独占欲が強いけど、信頼して、任せてくれる。
偶に、青太は私のって言ってくれる所とかすごく可愛いって感じる。
ああ、幸せ。
言ってる間に、準備も終わる。
朝は、大学で講義。
夕方まで講義があって、その後は、サークルに集まって、OBの先輩たちと、夜に飲み会。
忙しいし、疲れるけど、家に帰れば那月が待っててくれる。
そう思うと頑張れるな、と思った。
「じゃ、行ってきます!あ、俺の事は気にせず先寝てて良いよ。晩ご飯も飲み会で食べてくるから。今日はゆっくりしてね。」
「はい、行ってらっしゃい青太。」
「うん、行ってる来る、那月。」
自然と目が交差し、軽く唇を交わす。
いってらっしゃいのチューって奴だ。
恥ずかしくて、でも嬉しくて、思わず笑顔になる。
「じゃ。」
「うん。じゃあね。」
名残惜しそうに、もう一度言葉を交わして大学に向かった。
今朝も、俺の気分は最高だ。
毎朝これなら、俺は一生毎日幸せで過ごせそうだな。
◇◆◇◆◇◆◇
午後六時。
大学の講義も終わり、お昼には、彼女の作ってくれた弁当を食べた。
そして今。
サークルで集まっていて、其処にOBが顔を出す。
俺は現在、大学四回生で、四年間このサークルに入っていたのでOBにも知己は多い。
金髪の大人なイケメンって感じの三十代の人が嶋田 海斗さん。
この人には色々よくしてもらった。
主に、女の口説き方だ。
だがしかし、俺は那月で充分だ。
なんてリア充みたいな事を心の中でぬかしてみる。
「おう、青太、久しぶりだな。最近どうよ。」
「ああ、元気ですよ。大学の講義もちゃんといってます。前みたいに、体調は崩さなくなりましたよ。」
「違げーよ。そっちじゃなくて、那月ちゃんとうまくいってんの?」
「ああ、そっちですか。もう、最高です。」
リア充全開発言をして、毒づかれるかと思ったが。
「ははっ、おう、そうか、そりゃあよかったな、はははっ。」
「は、はい。それはどうも。」
意外だ。
この人ならからかってきそうなものなのにな。
まぁ、そういう事もあるだろう。
閑話休題。
そして、この人。
肩にかかるくらいの綺麗な黒髪に、少しキツめなバリバリのウーマン。
三枝 佐奈さん。
那月が、可愛い系だとすれば、この人は美人って感じ。
でも既に三十路でoverであるそうな。
とてもそうは見えないけど、歳を聞けば、あ、無理だ。
となるだろう。
あ、因みに、俺は今24歳。
二年間海外に居て、大学に入るのに二年遅れたのだ。
「やあ、青太。調子はどうだ?」
「久しぶりです、佐奈さん。会社で課長になったって聞きました!凄いですね。」
「ああ、知っていたのか。そうなんだよ、でもやっぱり位が上がると余計に忙しくなってね。買い物は楽しくなるけど、その分忙しくてね。癒しが欲しいよ。」
本当に疲れてる、大変だ。
そんな雰囲気を佐奈さんから感じた。
しかし、それだけではないような、もっと大変なことでも起こったのではと思わせられる雰囲気だった気がした。
「あー。やっぱり大変なんですね。お疲れ様です。俺にも何かできる事があればなんでも行ってください!」
「頼もしいな。じゃあ何かあれば連絡する事にするよ。」
大人って感じだなぁ。
なんか佐奈さんは、子供を見るような目で此方を見てくる。
佐奈さんからは、他の人とは何処か違う感覚を覚える。
なんだろうか。
母性かな?
俺には、生まれつき母親が居なかった。
だから母性なんて、分からないけれど、そんな気がした。
◇◆◇◆◇◆◇
OBの先輩達お勧めの、雰囲気が小洒落ていて穴場だと言う居酒屋の広間。
先輩達は常連で、伝手があるとかで貸し切りにしてもらっていた。
午後十時。
出来上がってきてる人もちらほら。
其処ら中で、話が盛り上がり、騒がしくなっていた。
防音性も有るらしくて、余程騒がない限りは迷惑にならないらしく、皆、楽しくお酒を飲んでいた。
さしもの俺はと言うと、お酒はあまり飲める方では無く、端の方でちびちびとやっていた。
海斗さんは、急用だとかですぐに帰ってしまった。
「如何した青太。ちびちびしてないで、もっとのめのめー!はっはっは。」
佐奈さんだ。
お酒が入ってテンションが可笑しい。
あーもー。
面倒臭いな、この人。
内心毒づきながらも、先輩なため、ちゃんと応対する。
「俺、余り飲めないんですよ。勘弁してください。」
「あー。そうだなー。青太飲めなかったなぁー。」
そして、思い出したかのようにいう。
「そうだ、聞いてよ。こないだねー、付き合ってた部長振ってやったの。彼奴、まさかの家族持ちでさ。うっかり結婚指輪外し忘れたとかで。まじでふざけんなってのー。青太ーどー思うー?ひどいよねー。うー。」
うわー。
もーこの人やばいんじゃないの。
三十路で振られるとか。
もう誰かもらってあげなよ。
じゃ無いと一生独身貫いちゃうよこの人。
「ああ、大変でしたねそれは。不倫なんて絶対許せませんよね。俺なら絶対許せませんよ。」
そう、不倫なんて絶対許さない。
俺は、そう言うのは大嫌いだ。
海斗さんみたいな人も、正直いって文句言いたい。
間男なんかは流石にしてないと思うからいいのだとは思うけど、やっぱり一人の人を愛するのが筋だと思うんだ。
でも先輩だから言えるはずも無く。
俺が変なだけなのかな。
いやそんなことはないはず。
「もー大変だよー。本当だよー。うあー。」
涙目になっちゃってるよー。
本当誰かもらってあげて。
そうして少しの間愚痴を聞きながら、ときに共感し、ときに意見したりと、相槌を打っていた。
「青太こそ、なんかあったら連絡してきな。愚痴付き合ってくれてありがとね。今度はなんかあったら、きいたげるから。」
「そうさせてもらいます。」
素直に愚痴聞くのも疲れたので、本当に次は聞いてもらうつもりでそう言った。
読んで頂き、有難うございます。




