第3話 涙。そして、始まり。
読んでいただきありがとうございます。
次は、青太サイドです。
感想、評価して頂けるとモチベ上がります。
翌朝。
私は休日であるが、青太の為に少し早く起きることにした。
ふと、青太の寝顔を見ようと思い、屈む。
青太の瞼からは、一筋の水滴が流れていた。
そうか。
私もまだ気持ちが落ち着いた訳では無いのであるが、彼の為に少し頑張ろうと、再度気合いを引き締める事にした。
恐らく、沈んでいるよりも、何かをしている方が、私に合っているのであろう。
基本的に私はポジティブに考える事が出来る。
其処は私の美点であるとは思っているが、汚点でもあると思っている。
一人では深く考えることをしない。
気にすることさえもせず、基本的に誰かの意見を聞くことをし、一人では溜め込んでしまうばかりである。
私は青太からの意見で楽になれた部分が大きい。
勿論、何かをしてあげたいという思いもあるのであるが、やはり、まだ自分の気持ちを誤魔化して、逃げている部分もあるのかもしれない。
私は昨日言っていた塩漬けと味醂干し、後は米とあとは味噌汁もインスタントではあるが、作ってみた。
勿論、私も青太が料理が上手いのも分かっている。
しかし、この状況で文句を言う者も居ないだろう。
色々やってるだけでも感謝してもらおう。
ちょうど並べ終わった頃、物音で起きたのか、青太が寝室から顔を出す。
「あ、作ってくれたんですか。ありがとうございます。嬉しいです。」
何故か、少し彼の顔がこわばった気がした。
「どういたしまして。」
少し疑問に思ったが、追求するのは良く無いと思い、止めることにした。
「では、頂きます。」
「はい、どうぞ。」
何だろう。
この感覚、何処か良いなと思う自分がいる。
部長とはこういったことはなかったからだと、思い至る。
今思うと、部長との関係は夜の食事と、夜の事だけであった。
我ながら、今になって思い返すと、目を背けていた部分も多かったのだと思う。
「・・!!・・・っ!!・・」
食事を口に運んだ青太は、驚いた表情をする。
そして、微妙な笑みを浮かべたかと思えば、頬に大粒の涙が伝う。
「っ、なんだ、・・この安い味っ・・くそっ・・うっ、・・。」
「なんなんだよ、・・美味しい・・うっ・・あぁ、・・っ!」
安い味と言うのに一瞬、巫山戯るなと文句を付けそうになるが、両目に大粒の涙を食べながら美味しいといって食べる姿に毒気を抜かれた。
「おかわりっ!」
微妙な笑みから満面の笑みに変化して、おかわりを要求してくる。
「ふふっ。朝から食うね。」
何だろうこれは、凄く良い。
まぁ大半は貰い物なのであるが、ここまで素直に美味しい、美味しい、と素直に食事を楽しむ青太に、大人になってからと言うもの、食事をこんな楽しい雰囲気で食べた事がなかったきがすると思った。
結局、青太は朝から一合ちかくの米を平らげた。
食べ過ぎでしょう。
「よく食べるね。」
「はぁ、美味しかったです。こんな安っぽい食事久しぶりです。」
毒づきながらも、表情は微笑である。
「安くて悪かったな。」
「いや、でも安っぽい味も良いですね。何か少し、元気出てきましたよ。」
「それは良かった。」
青太が切り出す。
「やっぱ、話そうと思うんです、このまま好意に甘えるのは違うと思うから。いや、そうじゃ無い、佐奈さんに話したいと思ったからですね。」
そうか、話してくれるのか。
私の何処かが少し動いた気がした。
「うん、分かった。私の時みたいに、次は私がちゃんと聞いたげる。」
「ありがとう、えっとねーーーーーーー」
青太は帰った後の事、これ迄の事の顛末を話してくれた。
途中、辛そうな顔をしたり、泣きそうになったりしながら話す青太を見ていると、また、私の何処かが動く感覚が。
今度は前回よりも鮮明に、強くだ。
「ーーーーーーーという訳なんだ。」
全てを聞き終わった後、私の中に色々葛藤が生まれる。
理不尽への怒りであったり、単に悲しい気持ちであったり。
しかし、私の中に一つ、スッと自然に出てくるものがあった。
「うん。そうだね。辛いよね。私も辛いよ。こういった事って同情されても嬉しく無いと思う。」
「だから、私が思う、”私達”が救われる方法を提示するよ。私は青太の辛い部分を一緒に持つよ。」
「だから、青太は私の辛い部分を一緒に持ってくれないか。」
自然に出てきた答えはこれである。
この時の私は、気づいていない。
この言葉は告白まがいの言葉である事に。
当の青太といえば、大粒の涙をボロボロに流しながらも、軽い笑顔で、私の手を握る。
「うんっ・・ありがとう。ありがとう。ありがとうっ・・!」
「うんっ・・!」
二人で、感無量とばかりにボロボロ涙を流す。
「酷い顔だよ、青太。」
「佐奈さんこそ、酷い顔してますって。」
「ははっ。」
「ふふっ。」
此処から、始まった。
これが、二人が結ばれる最初の一歩。
マンションの一部屋、そのダイニングの机で向かい合う二人。
朝食は夜明け前だった様で、カーテンの隙間より光が漏れる。
「カーテン、開けようか。」
「うん。」
二人はカーテンを開け、更には窓も開けてベランダへ。
「なんか、良いね。」
青太が誰でも、青太の気分がわかるぐらいの満面の笑みでそう言った。
「そうですね。」
ーー佐奈の表情も、青太に引けを取らない、無邪気な笑みを浮かべていた。




