24話【ボス戦】
「ソレックさん! 足技を封じることは出来るか!?」
「おうとも!!!」
ソレックと呼ばれた既に60にさしかかろうとゆう老人がデカい声で返事を返す。
その背に担がれた巨大な剣を構え、決して早いとは言えない速度で駆けだすソレック。
遅い訳ではなく、120メートルも無い間合いはソレックに十分な力のタメを与えてしまう。
「ガルガンチュアぁあああーーー!!!」
ソレックの絶叫、それと共に紫色に輝く特殊な魔気が巨大な前足を襲う様は、何故か巨大な刃が小さな足を切り飛ばさんと迫っているように見えた。
ガルガンチュア、冒険者ギルドで週に一度行われている武術指導教室にて教えている技のひとつで膨大な魔気を剣に纏わせ、魔気の重量と破壊力を全力でぶち当てるとゆう脳筋甚だしい技である。
斬撃の威力は絶大だ、大木のように太かった前足がぱっくりと切り裂かれ、巨大生物の右前脚が見事に宙をまうのである。
「グレイさん! この隙に後ろ足を頼む! 」
「うむ! 任されよ!」
第六騎士団副団長エリアスの声が広い大広間に響き渡る。
少数精鋭での突撃から1時間、彼らの姿は最下層、ボス部屋にたどり着いていた。
疾風迅雷に怪力ジジイ、騎士団副団長と団長、他にも有力な冒険者と騎士のごっちゃ混ぜ、総勢12名。
ボスは10m級のシルバーウルフであった。
上位種と呼ばれる個体、しかしそのスペックは普通の上位個体とは訳が違う。、火力も違えば筋肉の針も違い出力も段違いだろう。
先頭が始まり既に20分。
「飛影流『五月雨』!!!」
疾風迅雷の斬撃がシルバーウルフの後ろ足を幾度となく切り刻む。
その斬撃ひとつひとつが岩山を切り裂く威力を持つ。
そんな威力の連撃を受け、例えシルバーウルフの足と言っても無事で済むはずがない。
切断とは行かないまでも深々と傷付けられた足は筋肉に大きな損傷を受け、既に走り回ることは難しいとゆう程度のダメージを残している。
「うぉおおお! ラグン騎士団式剣術『軸輪回転斬り』ぃいい!!!!」
上空より落下する声。
その元を探せば直ぐに見つかった。
シルバーウルフの頭上から、どうゆうわけか騎士団長が猛スピードで落ちてきていたのだ。
回転しながら落下するその姿に、副団長が一瞬呆然としてしまったのは、ある種仕方の無いことなのではなかろうか。
力にものを言わせてジャンプしたか壁を破壊しながらのぼったか、壁に着いている不自然な人の手のような形の破壊痕を見る限り前者っぽいのだが。
「でりゃっ!!!」
「ガギイイイイイイイッ!!!!」
「グルゥッ!!!」
高速回転しながら振るわれた斬撃がシルバーウルフの首を狙いすまし、衝突する。
そのあまりの威力に火花を散らしているのは、流石はシルバーウルフの上位種だと言える。
「グルァァァァーーー!!!!!」
急に発生した首の激痛にシルバーウルフは全身で吠える。
落下した騎士団長が見事ボスの首を切り落としたのは、その競り合いから6分ほど後のこと、少し早めに終わったようである。
とりあえずの問題、その中で一番大きいはずのダンジョンの驚異が去る。
それを祝し、酒の代わりにお茶を出し、ダンジョン大広間の真ん中で飲み交わす彼らの姿は、開放的に見え、どこかひと段落ついた安堵が滲み出ているように見えた。
しかしその光景に反して十分な警戒を逃さないとゆう意思がひしひしと伝わるのもまた確固たる事実だ。
その道のプロであることは、すでに疑いようもない事実なのだから。
ーーーーー
「コッコッコッ、、」
足音が静かに響く。
その姿がくらい闇の中から現れると、皆一様にひとつの名前を思い浮かべてしまった。
「こいつが、バール、!!」
「なるほどこれは、ヤバい、!!!」
最下層の巨大な空間の中、ボスであった10m超のシルバーウルフ、その死体の前でふたつの気配が犬歯を剥き出しに吠える。
階段を下りていたら存在、バールは呟くのだ、小さく。
「強いのが、いっぱいだ、!」
「っ!? いつの間にっ、!!!」
声は超至近距離で響く。
その姿は副団長、エリアス・ニューゲラーが眼前にあった。
覗き込むように立つ170少しの男。
エリアスは、察した。
死ぬのだ、と。
「ぐぼぉっっ!!!」
「いっぴき」
「っ!!!エリアスゥ!!!」
放たれた拳がエリアスの腹をえぐり、遠く離れた壁まで吹き飛ばしてしまう。
その威力が距離が少々離れている程度で殺し切られるはずもない、衝突したエリアスの姿は壁の中、埋まってピクリとも動かない。
腹は炭化していた、ボロボロと何かが砕けるような音が、何も無い広大な空間を小さく木霊する。
それはどうやらエリアスの腹が砕けて落ちた音らしかった。
「でりゃあっ!!!」
こえ、同時にバールの紙一重、鼻先を斬撃が通過する。
騎士団長が振るうにふさわしい絶対破壊、超速の一撃。
避けた体制でバールの姿勢が崩れたのは当然の結果であったのかもしれない。
「うぉらぁああっしゃあ!!!!!」
怪力じじい、ソレックの声が鳴り響いた。
「どごおぉっっっんッ!!!!」
斬撃は当たらなかったが、その威力は存分に足場を砕きその風圧をバールにしかと食らわせている。
その背後、いつ近づいたかも分からない最速の男がそこにいた。
「斬ッ!!!」
気合一閃、振り切られた斬撃が足場を砕かれ完全に体制を崩したバールを襲う。
背後からの斬撃にこの足場だ、その斬撃はしかとバールの腹をうち鳴らす。
「ギイイイインッ!!!」
甲高い音が鳴り響く。
バールの目は既に、疾風迅雷の姿を捉えている。
しかし気にしない。
グレイは静かにその動きを見定め、刃をわざとバールの肌の上で走らせ引き戻し、怪力じじいの様子を確認するのだ。
怪力じじいは構えた剣を大上段に掲げ、バールを狙いすましている。
とくればグレイの刃は真横一閃の薙ぎ払いである。
納刀、低姿勢、筋肉が目に見えて盛り上がる。
バールの脇腹は切れていないまでも、その足は未だ不安定だ。
勝機はある、その確信がグレイに生まれている。
「飛影流『抜刀雷速』ッ!!!」
「ど根性おぉおおおおお!!!!!」
ふたつの咆哮が響き渡る。
最強の一角に数えられるAランク最上の2人、そのコンビネーションで攻めてきているのだ。
通常の魔物、どころか古龍だろうが幻想種だろうがこの斬撃を受けて無事で住むいわれは無い。
が、バールは違った。
「むんっ!!」
バールの右足が、跳ね上がった。
跳ね上がった右足が、一瞬その残像を残し消える。
最速の斬撃より数段早い蹴り、ただそれだけの力押し。
その蹴りが、見事にグレイの腹を撃ち抜く。
「ぐはっ、、」
グレイの口からそんな間の抜けた声が聞こえる。
と同時、ソレックは理解した。
グレイは、今の一撃で既に、戦えるからだでは無いと。
理解したソレックの反応は早い。
「グレイをつれて逃げろぉ!!!!!!!」
絶叫、その瞬間ソレックはバールに襲いかかる。
横薙ぎの一閃、兜割りのような力任せの斬撃を繰り出したかと思えば振り抜いた体制のまま前に倒れるようにして加速し剣で突くのだ。
器用な事をするものである。
「こっちを見ろぉ!!バール!!!」
「、、よかろう!!!」
バールが挑発に乗ると同時、バールの右拳が固く握られる。
「撤退ぃぃぃぃイイ!!!!!!」
「生き残れのぉ、!!!」
強く握られた拳がソレックの眼前に構えられた剣の腹をぶん殴る。
相当な威力なのだろう
受けたソレックの左腕が変な方向を向いている。
拳を覆う高熱が剣を溶かす。
「うおぉおおお!!!」
ソレックは剣放り捨てバールに接近する。
その右手が握られている。
タイマンで殴り会おう、そう言うことだろうか。
、、、
「くっ、ぐぼっ、、」
バールとソレックの戦闘は約10分。
残ったのはソレックとゆう名のスプラッタ。
バールの首を掴み殴って倒そうとしたところを返り討ちにされたのだ。
速度もパワーも段違いの拳を100発以上、ソレックの顔は原型を留めないどころの騒ぎでは無い。
トドメは胸を貫通する右腕なのだろう。
その腕が引き抜かれると、ソレックは力なく地面に倒れ伏した。
最強の魔物バール、彼がダンジョンを後にしたのはそれから2分程あとの事であった。




