23話【作戦会議テント】
クリコ村急設作戦会議テント、狼の魔物に荒らされ壊滅した村の西側3分の2、その荒れ果てた地に立てられた騎士団テント郡の中でも一際大きく見えるテント。
その中で第六騎士団で団の管理を行っている情報部の最高責任者エドカル・オシリス・ベルベルンは執務に駆られていた。
村の損壊自体は当初の予想よりかなり小規模だったものの、死者の身元確認が思いのほか難航している現状だ、思うように手が回らないことをエドカル自身もどかしく感じている。
特にこの村は山向こうで国境に接する唯一の村とゆうこともあり国規模で重要な拠点である。
この重要の中には管理下のダンジョンがあることも含まれている。
村の3分の2、実に300メートルの範囲が更地になった、この位置は特に畑が密集していた場所であるため今年の食料が全く賄えない事が予想され、その補填も急務となるだろう。
その支給を依頼することもエドカルの仕事である。
その他倒壊した柵の修理にも人員がいるし廃材撤去も人手は必要、もちろんシェルターに隠れていて無事だった人たちの新しい家も急造する必要もある。
それらを街に申請するのは本来村長の仕事なのだが、スタンピードが起こった場所に一般人を送り出す訳にも行かず村長達村から来た人々は街に残っているのだ。
村への理解が深い村長とゆう存在は存外に大きい、それがないのだから彼のの心的疲労が増すのも当然の流れであろう。
そんな折、またもエドカルの頭を悩ませる事象が降って湧く。
「報告します! 北西側、近くに大きな畑のある場所にシルバーウルフと思われる魔物の死体が確認されたのですが、妙な死に方をしていて判断を仰ぎたい所存です!」
「報告します!村から森まで続く1箇所で超高速で何かが飛来したような不自然な地面の損傷を確認! 物体は確認されませんでしたが、代わりに1度熔けて固まったらしい残骸が複数木に付着していました! 例の魔物、バールの仕業であることも考え調査を続けます!」
「報告します! 猛る剣の4人が森の空白地点にて4歳ほどの子供を保護したことは先日報告しましたが続報が入りました! 確認を取ったところ神速の元勇者様のご子息であったらしく、現在騎士団長のテントで寝ています! なお、空白地帯は超高温で焼き払われたらしいとの事!おそらく例のバールが扱うとゆう炎の魔法が使われたものと思われます!」
「報告します!先日から連絡の取れていない冒険者パーティー、フレイムバードのエドソンとトーマス、並びに冒険者パーティー、自遊人のジオとレオ、イリスですが先刻死亡が確認されました! なお損傷箇所は鋭利な刃物で切られたように削られていたそうです! バールとは別の最上位種に襲われた可能性ももちろん考えられますが、最悪の場合テレステア帝国のスパイが何らかの方法で彼らに危害を加えたと考えるべきかと愚考します!」
「報告します!Bランク冒険者のクウゼイ・レディンを引きずって歩く兎獣人のような影を目撃したとの報告が上がっています! これが最上位種なのか獣人なのかは分かっていませんがクウゼイ氏の実力を考えると獣人が襲ってきた可能性が高いように思います!」
「報告します! ダンジョン攻略に出ていた騎士団が先刻帰還しました! 報告によると実数30の騎士が死亡したとのこと。 これより死者生存者の確認を行いますので後ほど遺族への対応について相談させていただければ幸いです!」
昼に入ってから既に何度目かも分からない報告に本格的に頭痛を訴える脳みそを無理やりに活性化させ指示を出していくエドカル。
この数時間で既に白髪が目立ち始めている、相当にストレスがかかっているらしい、もう少し頑張ってもらうとしよう。
「、、、はぁ、」
今日に入って既に何度目かも分からないため息がテントの中を木霊する。
ボーッと上を見て惚けるエドカルは年相応の貫禄を感じさせるものの、その疲れきった顔にはいつもの覇気がなかなか感じ辛い。
「少し、外の風を吸って落ち着こう、、」
エドカルは目頭を押えつぶやき、のそりとテントを出ると騎士テント郡を抜けた。
騎士テント郡を抜ければ西を見ると廃墟、東を見れば住宅の増設で騒がしい、そんな村が顔をのぞかせるのだ。
幸いにも村人はほとんどシェルターに避難していたため、死者数自体はそこまで多くは無い。
多くは無いと言っても散歩していた老夫婦や避難が送れたらしい青年など被害に遭った住民はゼロではない。
生き延びた住人たちは現在、東側に急造した仮設テントを利用している。
今のところ重傷者らしい人といてば神速の元勇者と森で発見された子供くらい。
これで相当数の死者が出ていたならエドカルの仕事は今の3倍には膨れ上がったことだろう。
今も居ないことは無いが、本格的に遺族への対応だけで数時間とかかる状況に転がり込むのだ。
自然復興の手も遅れることとなったであろう。
「どれが例の不自然な死体かな?」
「 第六騎士団情報部隊長どの!報告した不自然な死体の確認にいらっしゃったので?」
「、、そうだね、見てみようかな」
「はっ! ご案内します!」
ーーーーー
「なるほど、これは確かに、」
「はい、どこをどう見ても異常としか言いようがありません。 内側から破裂したらしい個体に頭のみを破裂された個体、中でもこの個体がひときわ異様です。」
「ああ、言われずとも分かっている。 この魔物、魔力と気を脳天の穴から抜かれているんだな?」
「はい、頭の穴に魔力と気が流れ出た痕跡を確認しています」
「バールの仕業だと思うか?」
「恐れながら、これはおそらく、、」
「言わずとも分かっているさ。 全く、本当に実在したとはな、、」
エドカルは目の前の脳天にあなの空いた狼の魔物を見つめ、悲痛に顔を歪めた。
同情でわない、この現象を表す神話があるのだ。
それが、あまりにも不都合すぎて逆に笑ってしまうのだ。
神話ではこう語られる。
『魔の王君臨せし時、降臨した天使は天災とも思われた魔物の軍勢から魔気を抜き絶命させる。 その魔気から生み出された第一使徒メフィウスは天使と同じ力を使い無数の魔物を無力化しました。長い長い魔の王との戦い、その歴史魔を勇者一行が打ち滅ぼした折、使徒は信託を下します。再び魔の王が生まれた折、同じ現象が起こるでしょう。心に刻みなさい、魔の王の恐怖を』
こんな神話だ。
いまいち容量負えないが、要するにこの魔の王発生の予兆とも言える現象が、このオオカミ魔物に起こったと云う事なのだろう。
天使がこの場に降臨したのか、使徒がこの場に現れたのか、それは分からない。
しかし分かることがある、これは紛れもない信託なのだ。
「バールないしこの森の魔物の中に、魔の王がいる、!!」
エドカルのその声は、同行していた騎士と一致していたのだろう。
騎士は深く頷く。
「至急この事を街に報告する。行けるか?」
「お任せを!!!」
「、、頼んだ」
騎士の返事を噛み締め、エドカルはそう呟いてその場を後にした。
既にAランク冒険者の被害も出ているのだ、既にじっとしていていい期間は終わった。
エドカルはそれを察すると、静かにテントへと戻るのだった。




