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【音魔法使い】の魔紋  作者: フリューげリュ
エノワール昏睡中
27/30

22【ホーンラビット】

「そら!もっとガツンと来んか腑抜けどもめ!!!」


森のただ中、オオカミたちの魔の手からたまたま生き延びたらしいグランドボアと呼ばれる岩のような外殻を持つ特異なイノシシが駆け回っていた。

よく見ればその足元をホーンラビットとよばれる頭に角を持った兎が一緒になって走っているらしい。

ホーンラビットはその角に敏感な角で小さな振動も逃がさない特殊な感覚器官を持つことで知られるが、おそらく今回はその感覚を借りる形で、またホーンラビットたちを守るとゆう名目でグランドボア達は協力していたのだろう。

実際、グランドボアの体格はかなり大きく大人の背くらいの高さは余裕であるのだ、そんなものが森の中を動いて狩人から逃げる手段としてはホーンラビットのような探知能力に優れる協力者が絶対に必要であるし、この辺はかつて無理やりに知能を植え付けられた魔物達らしい考えだと言えるのではないだろうか。

ただ不運だったのは、その逃げた先に小さな脅威が待ち伏せていたことだろう。

彼は姑息に息を隠し、木陰に隠れて獲物を探っていたのである。

そうされれば流石のホーンラビットでも必ず見つけられる、とは言えない。


「でりゃあっ!!!」


男の声が響くと同時、突き出された正拳突きがグランドボアのコンクリートのように頑強な外殻を粉々に砕き直接脳を打ち抜いた。


「ぶるぅっ、!」

「ふん、鳴くか。 根性があるではないか? ほれ!次だ!!!」


死の狭間、既にものを考える脳もないグランドボアの口から漏れたその声に、男は少し嬉しそうに言うと頭を上げた。

そして吠える、その声に怯むものはいない。

一斉に襲いかかる10匹以上のグランドボア、危険度で言えばCランク冒険者のパーティーでも厳しいのではないだろうか?

しかし男には関係ない、その拳はグランドボアを外殻ごとはじき飛ばし、その蹴りはグランドボアを内側から襲いその内蔵をグチャグチャに壊してしまうのだ。

一挙一動が必殺の一撃、20分もすればグランドボアは殲滅されてしまう。

まるでそれが当然であるとでも言うように、男はホーンラビットには目もくれず、既に息絶えたグランドボアの腹部に慎重にナイフを突き刺すのだ。

剥ぎ取りをしようと言うのだろう、こんな状況だ、悠長に皮を剥ぐ余裕は無いが、しかしせっかく討伐したからには魔石くらいとる権利があるだろうとゆうのももっともな主張であろう。


「ふむ、良い肉付きだ、持ち帰れないことが悔やまれる、」


心底やるせない、とゆう声色でそう呟く男。

彼の名はクウゼイ・レディンと言った。

ソロのBランク冒険者ではあるものの、既にAランク昇格の話が上がり始めている近年注目の成長株である。

歳は28、ボサボサの金髪は白み始めているし服は薄汚い、不思議といい匂いがするので避けられているとゆうこともないのだが、とはいえ好かれるタイプでもない。

収めるのは徒手格闘の名門『無手波撃』を継承するラグン王国が出来るよりも前から続いてきた歴史長い武術、『波紋流の無手』である。

波紋流には無手の他に槍技、剣技、暗殺技、などがあり、それぞれ厳密には別々の門が教えている。

波紋流はいわば総本山みたいな役回りだ。

そんな波紋流の無手とは、原則として波紋を通し内側から爆砕するとゆうもの。

他にも波紋を流し無理やりに脳を揺らして気絶させたりなどとゆう技もあるが、基本的には無手による殺法がメインだろうか。


「、、安心しろよ。 俺に小さな命を無為に刈り取る趣味は無い」


不意に男の口から声が響く。

何に対して発したかいまいち掴めないその声に、反応する存在があった。


「そうなの、? けど、ごめん、ね? 信用、出来ない、んだ〜 だから、仕方ないよね、?」

「そうか、」


その声の発生源には1人の美女、姿は銀色の角が生えた人間と言っていいのだが、純白の垂れ下がるほど長い髪とウサギ耳のように編み込まれているのだろうか?と思うような特徴的な髪型の女性がいる。

その顔は整っているのだが、どこかゾッとするような迫力があり、その理由のひとつは間違いなくその真っ赤な瞳だろう。


「ホーンラビットの最上位種、か。 目的とは少し違うが、俺の相手としては妥当か。」


男がこのような言い回しをしたのには理由があった、それがランクの本来の目的。

いわゆるCランクとBランクの壁、とゆうやつなのだ。

ホーンラビットやスライムの最上位種を狩れる最低ランク、これがBランクであり、Bランク昇格には個人戦力で下級魔物と呼ばれる弱い魔物達の最上位種を圧倒できると認められるか、あるいはパーティー単位での中位魔物とよばれるグランドボアやビッグボア、グレーウルフなどの上位種複数体の群れを駆逐可能であると認められる事となっている。

まあ要するに言いたいのは、彼には間違いなく下級の魔物とは言え最上位種を狩るだけの戦力があるとゆうことだ。


「最初から全力で行くぞホーンラビット!」


男、クウゼイの声が森の中を響く。

クウゼイは胸ポケットから6枚の紙を取り出し構えている。

ホーンラビットは律儀なのか舐めているのか、はたまたら観察でもしているのだろうか?

動く気配は特にない。


「ふんっ、動かんか。 では遠慮なく! 速度強化!筋力強化!反射強化!第六感強化!炎拳纏い!持続強化!!」


クウゼイの声が響く度1つまた1つと輝き、連鎖する7枚の紙。

その光が収まるにつれ、反応するようにクウゼイの体は輝くのだ。

魔術、その中でも無属性魔術とよばれるものを使ったのだろう。

無属性魔術とは強化、弱化、状態異常などの生命活動に関わる状態に干渉するものを言う。

例えば今回なら、速度強化は名前の通り移動速度や攻撃スピードの強化。

筋力強化なら筋力を上げるもの、反射強化は反射神経にバフを与え、飛躍的に認識能力をあげ、第六感強化は直感力の強化、持続強化は魔術の持続力にバフを与えるもので、これを使えば同じ魔力で発動したにもかかわらず優秀な魔術師が描けば1.5倍ほど効果時間が上がる事もあることから、これを常用しているとゆう人は多い。

炎拳纏いだけは毛色が違い火属性の魔術になる。

これは拳に炎を纏わせることで物理抵抗の高いゴースト系の魔物などに効果が高く、また炎を纏うとゆう性質上ゴースト系でなくても火傷したり燃え移ったりとゆう結果が望めることから、かなり有用な魔術として武闘家の冒険者が愛用する魔術の一つに数えられていた。

さて、ホーンラビットはそれを不思議そうに見つめると、何を思ったのか笑い出す。


「あっ!あはっ!! なる、ほど、! ええ、そう、ですね。 じゃあ私も、、」

「ほお?強化魔法を見せてくれるのか?」


ホーンラビットの言葉にクウゼイが問う。

実際のところ、クウゼイには余裕があった。

その理由は簡単、ホーンラビットなどの弱い魔物が使う魔法は限られてきて、あまり上位の魔法は使わないし使っても3種類程度と相場が決まっているのだ。

ホーンラビットなら脚力強化に筋力強化、それと聴力強化。

そんなものだ、もちろん最上位種が使えば相当な驚異ではあるが、しかし焦るほどの聞きになるような魔法では無い。

それがクウゼイを必要以上に落ち着かせていた。

そのせいでクウゼイは気付けない、いや、そうでなくても分からなかったかもしれないが。


「グルゥアブァ、グルルルァルル、!」


詠唱されたのは、予想に反してウルフ系の魔法であった。

発生するは炎、炎がマントのようにホーンラビットに巻き付き、そのマントが体に巻きついて鎧となる。

こらは炎系防御、強化魔法の『フレイムメイル』だろう、最上位種である事で魔法の出力が底上げされその強化倍率も纏う熱気も桁外れだ。

炎の鎧の上をもう1つの魔法がほとばしる。

赤い何かはホーンラビットの腕に絡みつき、そして固定される。

青い炎だ、それが拳を包み込み、そして圧縮される。

『フレイムナックル』と呼ばれる魔法だろう、威力こそ桁外れなもののその性質は告示していた。


「なに!? それはウルフ種の詠唱だろ、! なんでホーンラビットが、!!」

「いく、よ、!!」


混乱が顔に出てしまっているクウゼイ、ホーンラビットは容赦しない。

強烈な踏み締めが地面を掴んだ瞬間、ただでさえ凶暴的な所を底上げされた筋力の後押しでさらに強力になった推進力に任せホーンラビットがクウゼイに殺到した。

クウゼイは辛うじて反応できている、その加速を認識した瞬間全身を魔気でおおいつくし、突貫したホーンラビットの一撃に備えた。

さすがはBランクの冒険者である、防御に入るまでの決断がかなり早いし思い切りもかなりある。

ホーンラビットはと言えば距離を一瞬で詰めると前足でブレーキ、勢いに任せる上半身と抗う下半身を作り出し、しっかり威力の乗った掌底をクウゼイの腹に叩き込んだ。


「メリメリッ、、」


嫌な音が鳴る、がクウゼイの弱音は聞こえない。

この程度で諦めるほど簡単な男でもないのだろう。


「むうんっ!!!」


クウゼイは腹にくらいながらも拳を握り、そしてホーンラビット目掛け突き出す。

勢いわ悪くない、が、腹に食らったままでは体制が悪く大した速度は出ていない。

腹にくらいながら突き出されたクウゼイの拳、辛くも空を切るが辛うじてホーンラビットとの距離を開けることには成功する。

バックステップで距離を取り、構えを取るホーンラビット。

その姿勢は一見すると三戦の構えにも見え、また相撲取りが腰を折り構えているようにも見える。

お尻を前に持ってくれば即座に前へ飛び出せる体制、それを見て、クウゼイが口を開く。


「その重心、心得があるな?武術は誰に習った?」

「、?武術、わからない」


クウゼイが疑ったのは魔物に武術を仕込んだ村人がいる可能性だ。

実際に3年ほど前には家で飼育していたスライムがキングスライムに進化、嬉しくなって武術を教えこんだ所急速に強くなり騎士団が出動するまでに露店が壊滅的な被害を受けたとゆう事件もある。

今回のこともペットとして飼われていたホーンラビットの脱走から始まっているとすれば武術を収めていることにも一応の説明は着くのだ。


「誰に、とゆうのに答えるとしたら、バール様、だよ、?」

「っ!? バールっ! シルバーウルフのか! またバール、何者だその魔物は、!」


武術を知るだけでなく武術を他の魔物に教える発送をもむ魔物、あまりにも人間くさい考え方だをする、得体の知れない冷や汗がクウゼイの背を流れた。

こんなことは、少なくともラグン王国内では聞いたことがない。

クウゼイが連想するのは何らかの意思を持ち複数の最上位種が武術を使う組織を作ろうしとしてる存在がいる、そんな事だった。

もちろん想像だ、証拠も何も無い。

しかし、その世界が如何におぞましいか、それはこの世界で魔物とゆう生物と関わってきたならば誰もが理解出来る。

それだけは間違いなかった。

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