16話【激闘、そして呆気ない幕引き】
「ギイィイインッ!!!」
炎の爪にいなされ吹き飛んだ姿勢のまま着地すると、僕は全力で走るのさ。
この魔物と戦い始めて五分ほどか?
いくつか分かってきたことがある。
まず、こいつの爪には物理判定があるらしいこと。
何となく炎の魔法なら左目を通して大体の効果が分かるようになった、多分これもあの神に乗っ取られたせいなんだろうな。
あの爪の物理判定、あれは中級以上の炎魔法は例外を除きほとんど搭載されてる概念としての質量付与、とゆうやつらしい。
よく分からないけど、要するにあれには重さがあるってことだよな?
僕はそんな事を思いつつ、接近して急速に縮んだ距離を一足飛びに無くす!
「らっ!!」
「狙いは、いい! けどぬるい!!」
勢い任せの周し蹴り、左足で放ったこれが当たるような相手なら楽なんだけどな。
僕は次を放つのさ、回し蹴りの回転に任せて回った体はそのままに、右足のかかとを叩き込み、そのまま左足を叩きつけて、そして左の腕でぶん殴るのさ。
最後だけでも当たってくれれば御の字、と思ってたら思いの外3発とも当たってくれる。
僕は左手で殴った反動を利用し、後ろに吹き飛ぶ。
刹那、僕がさっきまで中空をさまよっていた辺りに10本の閃光、5本ずつが十字を切るように振り切られる!
爪の攻撃か、ひたすらに早いな。
あれを避けるのは正直厳しい、いや、避けるだけならまだしもあの高熱は多少熱ダメージが軽減された程度でどうこうなる代物じゃないか。
僕は自嘲してため息を吐く、そして振り切った腕を既に引き戻している魔物を見つめる。
「早いな、小さいの。 結構重かったぞ?」
「だろ? あんたのその爪は当たんないな?強すぎてセンサー鈍ってんのか?」
「煽るじゃん、いいねぇ! いくよ、ちっちゃいの!」
魔物の声、次の瞬間だ。
辛うじて右足が地面を吹き飛ばしたのを観測し、同時に後ろへ飛ぶ!
既にそこは危険地帯だ、やつの爪は振り切られている。
危なかった、当たらなかったものの高温であやうく肌が焼け焦げるところだった、捉えた僕の左目を信じるなら僕の本の数センチ眼前を爪が通ったんだ、超高熱の爪、かするだけで致命傷の一撃が。
何だ、なんだろうな、僕は今、少しアドレナリンが出すぎているかもしない!
僕は叫ぶんだ!
楽しくてしょうがない!
「エトワールだ犬っころ!!」
「そうかそうか!俺はバールだ!よろしくなぁ!!!」
バールとゆうのか!お前!
僕は名前を聞いた瞬間沸き立つ血を感じた。
と同時、僕は横に飛ぶ!
「また避けた!上手いな!!!」
僕がとんだ先を見つめるバール、その声に冷や汗だ流れた。
1m以上ある爪だ、考えてみれば当たり前だよな、軽くバックステップして作った程度の距離だったんだ、左頬がちりちり痛む、かすっては無いな、セーフだ。
僕はバールを見据える。
「おせぇだけだろ!バール!」
「もっと上げるぞエノワール!」
その声と共に、バールの速度が上がる!
僕も負けじと加速するんだ、右に飛んだまま崩れそうだった体勢を立て直し、やつの真正面にふみこむ!
巨大な爪が振られるけど、この距離はむしろ僕の間合いだ!
僕は左拳を握ると飛び上がり、バールの腹に拳をぶち込むのさ!
「うらっ!」
「いいね!エノワール!」
嘘だろこいつ、腹にくらいながら顔覗いてきやがった、!!
「顔がちけぇ!!」
僕はその顔面に勢いをつけた右肘を叩きつけ、そのままの勢いで着地する!
そのまま距離をとるが、今のはあまり入ってないな、腹の方も大してダメージになってないのが、何となくわかる。
「んー、うん! 次だ!エノワール!」
「んなっ!?」
消えたと思った瞬間、やつの蹴りが僕を狙い済ましている!
一瞬で移動して蹴りのモーションに入って蹴った?
嘘だろ早すぎるって、!!
僕はそれを食らってしまう、!
痛いが、踏ん張りが効いてるからかギリギリ吹き飛ばされはしなかった。
これ幸いと蹴り足を両手デ一撃ずつぶん殴り右膝を入れてやった!
バールもさすがに痛かったと見える、激痛と共に距離を取り僕を見つめている。
「血は出てない、よし」
僕は口の中を確認し、内側が切れてないのを確認するとバールを見つめるのさ。
本当に強い、左眼が辛うじて奴の動きで発生するエネルギーを捉えるから反応できるだけ、これが無ければあの蹴りに備えて頬と両足に魔気を集めるなんてバカはやらなかった!
血は出てないもののクソいてぇ、!
足を殴った手足がボロボロだ、魔力の熱だけでこれ、本当に化け物だな、。
僕はそれを再認識し、そして距離を詰め、、
「ん? どこに、」
バールを素通りし後ろの木の密集したところに駆け込んだ!
逃げるか?
逃げないさ、僕は気に触れると、、
「グルルァヴァ」
呟き輝く足で素早く木に円を描くと、さらに焼け果て丸く消し飛んだ部分の周りを回るように走る!
「グルルァヴァ」
少ししなった気に触れ、走ったまま呟いて円を描く。
「グルルァヴァ」
元気な木だな、そう思いつつ円を描き、また走る。
「グルルァヴァ」
何度目かの円を描くと、僕は木の中を出て焼け落ちた円地帯に出るのさ!
そこは地獄だった、横に放たれた火柱がバールを襲い、避けた先がまた火柱になる、そんな光景だ。
僕は火柱の影を走る、こんな時ばかりはこの小さな体に感謝だな、バールの視線からではそこそこ太い火柱があるだけでほとんど何も見えちゃいない。
僕は加速する、加速して加速して、その勢いのまま火柱を突っ切るのさ!!
「ぐっ!!!」
「入ったなぁ!?」
僕の膝がまともにバールのみぞおちを貫く!
しっかりダメージが入ったらしい、バールの口から唾が漏れ、蒸発するんだ。
手応えがある、初めてのまともな手応えだ!
意識する、僕が高揚しているのを!
「なるほど、たしかに自分で発動した魔法でダメージは受けないもんなぁ!! エノワール、お前はなかなか!狂ってる!!」
「褒め言葉かぁ!?それ!!」
言いながら顔面をぶん殴り距離を、、!
「それはさっき見たな」
ふと、そんな声が聞こえた。
いや正確には、聞こえた気がした、か。
僕は突如薄れる意識の中、腹の激痛に耐えながら木の中に放り込まれる。
なんだこれ、いてぇ。
薄目で見えた、あいつは蹴ったんだ。
それが腹にまともに入った、本当にただそれだけ、それがこのダメージか、。
僕は仰向けに倒れていることを認識する。
起き上がれないな、これは死ぬやつか?
まあ、満足は出来てないけど、楽しかったし良いかもなぁ。
「つかれた、」
そんな声を最後に、僕は意識を失った。
呆気ない、本当にあっけない幕引きだ。
バール、奴は満足しているだろうか?
いや、してないだろうなぁ、、
失った意識のまま呟くのさ。
「ごめん、」
何に対しての謝罪かもよく分からないそれを、僕は何故か覚えているんだ。




