14話【太古の魔物】
俗に【勇者候補】と呼ばれる魔紋は、魔紋の中でもかなり珍しい『枝分かれする魔紋』であった。
この話をする前にひとつの例え話をしておこう。
冒険者の中で戦士系の魔紋として代表的であり、世界的に知られる【剛力】とゆう魔紋がある。
これは筋力に強力なバフを与えるもので、大体元となる生来の筋力を3倍するような力があるらしい。
もちろん個人差はあるのだが、この魔紋は【力自慢】とゆう魔紋から派生して生まれるものであり、この派生先に個人差とかは無いい。
【力自慢】だとだいたい1.5倍と言ったところだろうか?
それでも強力だが、やはり見劣りしてしまう。
【力自慢】から【剛力】、そこから【万力の徒】を経て【神通力】へと至ることは既に研究されており、この流れ以外で枝分かれしたとゆう前例がないことからこれは一方通行の進化先を持つ『王道の魔紋』の1つに数えられることとなった。
これは1000年近く前に決定されたことだが、その後今までに別の魔紋に派生したとゆう前例は無い。
また、神通力まで育てれば神をも捻り潰す最強の筋力を得るとされ、神話上ではこの魔紋を得た青年が見事に魔神を打ち倒し、1国を救った伝説が残されている。
前述の通り、魔紋の派生において、基本は一方通行とされている。
【力自慢】からの派生先は【剛力】で、【剛力】の派生先は【万力の徒】、この法則を定義しているのが神々である以上変わりようもないのだ。
のだが、例外があった、その中の一つが【勇者候補】と呼ばれる魔紋である。
この魔紋は最初【勇気の徒】とゆう魔紋として発現する。
ここから善行を積むことで【勇者候補】に派生するのだが、これの他に【悪意の徒】とゆうのがあり、これは悪行を重ねることで派生するものとなっている。
これが派生先が枝分かれする魔紋である。
で、ここからが本番。
【勇者候補】の枝分かれ先は無数にあるとゆうのはよく言われることだが、例えば剣術に打ち込み、剣術を極めた勇者であれば【剣の勇者】とゆう魔紋に進化するし、魔術に打ち込んだならば【魔導の勇者】とゆうふうに進化していくのだ。
この性質が実はかなり細かくて、剣術の中でも特殊なもの、例えば刺突剣を極めたものなら【刺突の勇者】となるし、錬金魔術を極めたものだったなら【錬成の勇者】とゆうふうになっていくのだ。
そしてこの枝分かれ先、現在でも時々未発見のものが発見されることで知られており、この事から【勇者候補】には無数の枝分かれ先があり、個性をもっとも磨ける魔紋であるといわれていた。
さて、そんな【勇者候補】だが、発展する前の段階でしか発動しない特殊な効果があった。
『神降ろし』と呼ばれるこの現象、発展すれば乗っ取られることなく力だけを引き出せるとゆう性質を得るのだが、その前段階である【勇者候補】では神の意志と呼ばれる概念に意識を譲り渡すとゆう、ある種の縛りを設けることで初めて膨大な力を得ることが出来るとゆう代物だった。
『神降ろし』の最大の特徴は聖力と呼ばれるエネルギーを感知生成し、操作することが可能である事だろう。
聖力に関しての詳細は省くが、魔力よりも同じ質量での出力が大きいエネルギー、とゆう認識でだいたいあっている。
これを操ることで、本来なら魔力と気1:1で生成される魔気では気の保有量のせいで至ってしまう引き出せるエネルギーの限界を、聖力と気を1:1で混ぜ合わせることで、同じ質量でありながら圧倒的に出力上昇させられ、これにより圧倒的なスペックアップが見込めるとゆう効果があった。
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衝突したエネルギー、その出力は互いに世界基準で言っても破格のものであった。
しかしその力が拮抗することはついぞ無い。
魔物が放った灼熱の拳は、刺突剣に纏わりつく金色のエネルギーを受け、そして抵抗の一切を許さず消し飛ばしてしまったのだ。
閃光が飛び散り残ったのは刃を失った柄だけの剣、そして『神降ろし』時、特有の十字を瞳に刻みつけた年齢の割に若く見える【勇者候補】、その満身創痍の姿だけであった。
薄く遠のく瞳に映る魔物の目は冷めきっている。
「この程度、か」
魔物の口から小さくそんな声が響く。
心底期待した分、その落胆が大きかったようだ。
『貴様、まさか、バール、なのか、?』
「、、ふうん?知ってるの?」
ふと男の口から漏れた神の声に、魔物は少しだけ反応する。
その名に聞き覚えがあったのだろうか?
魔物は少しその言葉を噛み締め、そして笑う。
「ふはっ! うん、そうだね! 気が変わった!君を殺すのはやめたよ!」
『ふん、やはりな化け物、、安心しろ。お前の情報はすぐに広まる、楽しんで死ね』
「うん、そうだな。待っていよう。ほら、さっさと行け、俺は今からデザートなんだ」
『あのガキか、そんなに気に入ったのか?』
「あー、まあそうかもなぁ。それよりも試してみたいとゆうのが強いけど」
『ふんっ、やはり化け物の考えることは分からん。 さらばだバール、落とし子よ』
「ん、さっさといけ」
『ふんっ、言われずとも。 テレポート』
突如、男の姿が虚空に消える。
まるで空間に飲み込まれたかのように消えた男を、バールとよばれた魔物は既に見てすらいない。
旧知の神と会った、それは確かにバールにとっても悪くはなかった。
が、バールは既に別のものに心惹かれている。
「ズゴオオオオオッ!!!!」
突如、バールを火柱が飲み込む。
勿論こんなもので負傷などしないが、バールは興味そそられていた。
真似されたのだ、自らが先刻使った魔法を、この短時間で真似られ、応用されたのだ。
それを察すると共に、バールは上がった口角を意識した。
「今のは、お前? 真似したの?」
返事は無い、それでいいとバールはさらに口角をつりあげた。
バールが視線を送る方向には、小さな少年がいた。
すごく早い、風圧で地面がえぐれる程の速度だ、想像もつかないだろう。
少年の左腕が燃えていた。
しかしこれは火柱で燃えたとかでは無い、そうバールは直感で察していた。
これは魔法だ、おそらく炎を発生させ、それを放つことが出来る初級ほのおまほうのあ『ファイア』ではなく炎を纏い、身体能力へのバフと熱によるダメージ軽減の効果がある同じく初級魔法の『フレイム』だろう。
そう認識したバールは、ただ叫ぶのだ。
自らの最も得意とする魔法を。
「グルァグルール!!!」
発生した各5本ずつの炎の爪、両手に生えたそれは1本1.5メートルはあるだろうか?
リーチが長く、それだけで脅威となるのは明らかだった。
その火力もまたえげつない、地面がガラスのようになってしまった。
バールは笑う、楽しそうに、すごく楽しそうに笑うのだ。




